[Mission-059]
前回までのMission!
引き続きジャングルで遭難中の昴流達であった。
メイに続いてフレックス達とも合流し、残りのメンバーは後四人となる。果たして無事なのだろうか?
[Mission-059]
俺達がジャングルに投下されて二日目となった。
携帯した水と食料が尽きる前に川に辿り着けたのは幸運だった。蒸し暑い熱帯の気候も、頭から水を被れば耐えられないほどでは無い。
現在確認出来たCクラスのメンバーは俺を含めて、八人。あと四人は一体何処で何をしているのか。
……全員無事だといいんだが。
メイが言うには川辺には水を求めて様々な動物が姿を現し、それを狙ってワニが出るとか。賢い肉食動物などは川辺から気配を辿って襲い掛かる場合もあり、あまり川辺で長居するのはよろしくない様だ。
そこで俺達は、ジャングルの中で落ち着けられそうな場所を探す事にした。
メイが言うには理想は木の上等の肉食獣に襲われ難い場所だが、そんなものが簡単に見つかれば苦労はしない。
「ついでだからちょっと寄り道をしていいか? 昨日向こうの方に罠を仕掛けたんだが」
そう言ってメイは、入り組んだ木々の向こうへと進み始める。地面は木の根っこが所々で絡み合い複雑な起伏を作りだし、落ち葉や苔などが柔らかな地盤を作るが、これがあるく上では妙に体力を持って行かれる。そんな歩きにくい地形だと言うのに、メイの足取りは軽く俺達は追いかけるのに必死になった。
「何か大きい得物でもかかれば数日は保つんだがな」
そう言って茂みを抜けた先に、メイの仕掛けた罠があった。
木のしなりと蔦のロープを組み合わせた捕獲用の罠だ。知らずに通り過ぎた動物を引っ掛けて宙吊りにすると言う古典的ながら道具を必要とせず、動きの素早い小動物でも捕まえる事が出来る。
罠には大きな獲物が掛かっていた。
「あのぅ、堪忍してください……」
身長は160~170くらいはあろうか、全体的には肉付きが良い方だが、出る所は出て引っ込む所は引っ込むと言う理想のナイスバディである。特に胸辺りのボリュームは他を圧倒するほどの高火力を叩き出している。ある筋の情報によればサイズはEとか、化け物だ。顔立ちも清楚系で黒髪のロングストレートと何処から見ても死角は無い。
大人の魅力と言う点では我等がアイドル尾乃教官には及ばないまでも、何処と無く年上の雰囲気を醸し出して止まないCクラスの副委員長、葵が、罠に足をとられ見事に宙に釣り下げられていた。
ううむ、確かに大物には違い無い。
彼女は逆さまになって項垂れ、必死に押さえてはいるがそれでも隠し切れない黒い下着、そして木々に実った果実の様に揺れる胸、辛そうに呻く表情と言い何処を取っても美味そうな獲物状態であった。
「た、助けてくださいぃ……」
この弱々しい表情とか、狼の前の子羊に等しい。いやはや今この場にメイとか観言とかが居なかったら果たして理性を抑え切れていたかは定かでは無い。
「折角掛かったのにこれは食べられないな」
メイが冗談で呟くも、男子一同は食べたくてしょうがなかっただろうことが全員無言で居る所から察せる。
「……これだから男共は」
察したらしい百川が吐き捨てるように呟く。
「……いやこれは女の私でもちょっと来るモノがあるかも、ね、ねぇ葵姉ぇ、写真とって良い?」
観言は今にも携帯端末を構えそうだ。
「やぁめぇてくぅだぁさぁいぃぃぃ……」
観言の発言にか細くも律義に返す葵であった。っていうか何時頃から掛かってるのかは不明だが、そろそろ頭に血が上って危ないかもしれない。
「待ってろ今縄を解く」
「手伝うぜ、ってかロープ切った方が速くねぇか」
「却下だ、葵を助けたらもう一回仕掛け直す」
メイとフレックスの手によって、何とか葵は救出された。
「ありがとうございます……一人では抜け出せなくて」
救出された葵は、乱れた服を直しながら二人に丁寧に頭を下げた。何でもこの罠には一時間くらい掛かっていたらしい。
いやそもそも罠を仕掛けたのメイだから、謝る必要は無いんじゃないかと思うんだが。
「葵姉ぇは今までどうしてたの?」
逆さ釣りの影響かまだふらつく葵をその場に座らせると、観言が覗き込むように問いかける。
この鬱蒼と生い茂るジャンブルで、メイの仕掛けた獣用の罠に掛かる様なおっとりとした葵が一人で生き抜けるのは無理だろう。恐らくは他の誰かの手助けがあっただろうことは想像に難くない。
「そうですねぇ、空鷹さん達と一緒に居ました」
「委員長なら安心だな」
委員長の空鷹は、C.W.O.Uの正規軍を目指しており、その為に勉学や肉体トレーニング、さらに時間を見つけては登山などでサバイバル訓練も行っていると言う猛者だ。恐らくこの状況下では最も頼りになる人物だろう。
「他に人は居た?」
「えっと、空鷹さんと六郎さん、あとシルビアさんが一緒ですね」
どうやら俺達以外の残り四人で上手く合流出来た様だ。これでCクラスの全員の無事が確認された。
「その場所へ案内してくれ」
メイの言葉に葵は頷いて来た道を指さす。
「判りました、こっちです」
葵の後に続いて、皆でジャングルの中を進んでいく。
全員が合流出来れば、後は救助要請をするだけだが。しかし木々のざわめきが、俺の心と妙にシンクロするのだ。このままで終わる訳が無いと不安を掻き立てる。
気の所為だといいんだが。
葵に案内されて辿り着いた場所には、驚くべき光景が広がっていた。
その一瞬、俺達は個々がジャングルであったことを忘れてしまいそうだった。
なんと案内された先には家が建っていたのである。
元々はジャングルの木々で組まれた丸太小屋の様な物だったと思われる。何故思われるとか婉曲な物言いかと言うと、目の前の家は丸太小屋であったらしき面影だけを残して劇的に改装されている最中だったからである。
「空鷹さん! 水を汲みに行ったら他の皆さんと合流出来ましたよ!」
葵の言葉に、家の屋根で作業を執り行っていた空鷹が返事をする。
「そうか、これで人手が足りるな!」
空鷹は恐らく屋根の修理をしていると思われるが、しかし単純に雨漏りしているから修繕するとか言うレベルを打ち抜いて、梁から作り直しているように見えるんだが。
そこに家の付近に居たシルビアがこちらに気づいて声を掛けてくる。
「おやぁ皆さんご無事で何よりです!」
「シルビアー! 心配したんだよー!」
「いやいや観言さんも無事で!」
「この面子の中で一番心配なのはお前だからなシルビア、むしろお前以外はたぶん無事だと思っていた」
「メイさんも、心配してくれてどうも、でもご覧の通り無事ですんで」
とりあえず女性陣がシルビアを囲んで、お互いに如何に過ごしていたかを報告し合う。
俺はとりあえず、改造中の家に目をやって見た。
元々は木を切り倒して、丸太をくみ上げただけの簡素なログハウスだったんだろう。
「……それにしても凄いな」
「でしょう!?」
俺の呟きにシルビアが強く反応する。
「最初はですね、ちっちゃなログハウスだったんですよ、とりあえず雨風凌げればなぁって思って、そしたら委員長がこれじゃ全員は入らないなとか言い出して、まぁ元からほとんど倒壊寸前でしたし、改修する事には異論はなかったんですけど、棟梁とかやたらとやる気だしちゃって」
もしかしたら軌道エレベーターの建設時に作業員とかが利用した物かもしれない。だとしたら軽く百年以上前の代物という事になる、そりゃ朽ち果てているのも当然だ。
シルビアが説明している間に、木々の奥から身の丈以上の丸太を抱えて話の棟梁が姿を現した。
「……追加の建材を持ってきたぞ」
棟梁こと六郎が、丸太を地面に降ろして空鷹を見上げた。
彼は寡黙ではあるが空鷹に次いで背が高くガタイも良い。エンジニア勢の中ではフレーム構造や装甲素材などの基礎部分の知識に秀でており、仲間からの信頼も厚い。
「助かる! それ一本か?」
「いや後六本ある、運ぶのを手伝ってくれ!」
「なら丁度いい、今他の面子と合流した所だ、元気の良い奴を二、三人連れてってくれ!」
委員長と棟梁が何やら勝手に俺達を動員しようとしている。
シルビアが言うには元々ちっちゃな丸太小屋だったとか。しかし今委員長達が手掛けている家はどう見ても一戸建てくらいには立派に見える。この短期間にどれだけ増築したんだか。
道具は一応携帯端末の拡張機能を使う事で何とかなるだろう。しかし、建材については現地調達するしかない。梁や支柱などは切り倒した木を、職人技の如きレベルでほぞ組みにして、釘などを使わずに組み上げている様だ。設計はシルビアが担当し、建材の調達と加工は六郎が、そして組み上げは空鷹が行っている様だ。
いやサバイバルに置いてもっと優先してやるべき事があると思うのは俺だけか?
それでは、現地調達のハイスピードビルダー六郎の匠の技をご紹介入れよう。
まずは、わざわざ床を高床式にして湿気対策をとっている、しかも石材を基礎として組み上げてあるのでしっかりと安定している。
朽ちかけていた外壁は、全て取り払われ新しく切り出した板がはめ込まれている。これなら後30年は持ちそうだ。
家の中は仕切りで二分出来るようにしてあり、寝る時に男女別に分かれられるようにしてあるようだ。しかも元々一部屋だけだったらしいが壁際に階段が設けられて、ロフトまで作られている。室内は邪魔な仕切りを取り払い、細々とした間取りを解消し、南から北に向かって風と光が通り抜ける。これで日中は室内で光源を用いる必要が無く、湿気の激しいジャングルでも快適な室内が約束される事だろう。
そして建物の裏側に目を向ければ、何という事でしょう。
柵が立てられ、その中には何処からか調達した食べられそうな植物が植えられているではありませんか。これで遠くまで食糧調達に向かう手間が少しは解消されるという物です。
っていうか、たった二日でどれだけ大改造を施しているんだこいつらは。
マ●ンクラフトか!
あと、ここにどんだけ居続けるつもりだ。
勉強も出来て、運動も得意で、KRの操縦でも標準以上の成績を残す優秀な委員長が、何故Cクラスなんかに居るのか不思議に思っていたが、やはり流石Cクラスに居るだけの変人であったのだと再認識したのであった。
[アルカの手記-059]
「家か、一戸建てと言うのも憧れるな!」
「姫様、僕等にはファルアタートと言う素晴らしいホームがあるじゃないっスか!」
「確かにファルアタートに住んで居るようなものだが、ここは家と言うよりは活動拠点だろう」
「つまり、武装や格納庫とか実用的な設備の無い、居住性に特化した空間が欲しいって事っスか?」
「そうだ、安心して過ごせる場所こそが、家と呼べるものだな」
「ファルアタートも結構安全安心っスけどね、敵に察知されないし、部屋も色々とカスタマイズ出来るんで居住性も高いっスよ」
「しかしここに居ては、常にスミスが付きまとって鬱陶しい事この上ない! これでは気が休まらん!」
「それは自業自得では……」
「だからこそ、我はスミスの目の届かない安心出来る場所が欲しいのだ!」
「その場合カレント・スフィアの技術を一切使わない、まさにジャングルの真っただ中のログハウスみたいな家を作る必要があるんスけど、電化製品も使えないんでテレビやゲームも持ち込めないっスけど、姫様そんな生活耐えられるンスか?」
「……むしろ、スミスを始末した方が早いか?」
「姫様落ち着いてくださいっス! スミスが居ないとファルアタートが動かないっスから!」
[続く]




