[Mission-057]
前回までのMission!
ジャングルで観言に続いて、メイとも合流を果たした昴流であったが、依然としてサバイバル(ry
さぁ今後の展開や如何に!
[Mission-057]
彼女の後を追って辿り着いた場所は、川の一部を石でせき止めして、適度な大きさの池が作ってあった。なるほどこれなら水を汲んだ時にピラニアに襲われない。
その傍らでは焚火が熾され、やや焦燥した表情のカレンが虚ろな瞳で火を見つめていた。
「帰ったぞ」
「お帰りなさいませお姉さま……」
カレンはメイのチームのナビゲーターで、やや平均的女子の身長、モデルのようなスタイルで、何時もファッションや美しさに拘りを持つ女子生徒だ。金髪の髪を縦ロールに巻いてお嬢様口調なのが特徴だったのだが、今は髪の巻も緩く口調も何処か淀んでいる。
「あの、お姉さまの獲って来る食料に文句をつける訳ではないのですけれど、私鰐の肉とかピラニアとか、蜥蜴とか蛇とか、得体の知れない肉は実はあまり好きでは無いんですの、出来れば別の食べ物がそろそろ恋しくなってきておりまして……」
普段から専科の女子寮の裏手で野菜を勝手に栽培したり、海で釣りをしているメイと一緒ならば安心かと思っていたが、こっちはこっちで食料に困らない変わりに別な所で色々と心を病むようだ。
贅沢な悩みと言えばそれまでだが、昨日まで喫茶店のテラスでロイヤルミルクティーを片手に携帯端末を弄っていた女子からすれば、相当堪える環境であったらしい。
「……ちょっとカレン大丈夫?」
観言が心配そうに駆け寄る。まだ一日しか経っていないのに彼女の様子は一週間くらい遭難した感じに見えた。
「ああ……私夢を見ているのかしら、観言さんの声が川向こうから聞こえてきますわ」
「ちょっとカレン! 私目の前にいるから! 夢じゃないから! メイ、一体カレンに何があったの!?」
「いや最初こんな正体不明の肉は嫌だと言うから適当にもいだ果物をやったんだが、実は毒があったらしくてな。今朝方まで腹痛と微熱と嘔吐に苦しんでいたようだから栄養を付けようと色々と食べ物を与えていた所だ」
むぅ、野生の植物には有毒のものが多い、だからサバイバルでは基本的に狩猟が推奨されている。得体の知れない肉と果物ならばせめてと選んだのであろうが、見事アタリを選んだ様である。いや腹痛で済む程度の毒だったからむしろハズレなのか?
「私とした事が、パッチテストでは大丈夫だと思ったんだがな」
この場合のパッチテストとは、食べようと思った植物の実等を一回皮膚にあてるなどして反応を見る事を指す。それで大丈夫ならばもうちょっと皮膚の敏感な場所に当て、次に舌に当ててなどの段階を得て行く。これで駄目な植物の場合は皮膚がヒリヒリと晴れてきたりするのでそう言った場合は有毒だと判断できるわけである。しかしこの方法も万能と言う訳では無く、あくまで目安でしかないので過信は禁物である。
そこに森の木々を揺らしながら、横に恰幅の広い男子生徒が姿を現す。
「はぁっはぁぁっ、言われた通り枝を拾って来たよ……」
両手に持てるだけ枝を抱えて姿を現せたのは、ジェスティだった。
彼はフレックスのチームのエンジニアだ。短髪のぽっちゃり系。ほどよく気温が上昇し始めたこの熱帯雨林に順応出来ず、大量の汗を流している。
「ハッハァジェスティ、無事だったんだねぇ」
「こんなジャングルじゃ真っ先に食われる側だと思ったのに、よく生きてたな」
芦屋に続いて俺も疲れた様子のジェスティに駆け寄る。
「……ハァ、ハァ……それって褒めてるの?」
Cクラスでも火器管制ではトップクラスの天才も、ジャングルでは薪運びが精いっぱいと言うのは何たる皮肉だろうか。
「それにしても女の子二人と野宿とは羨ましいじゃんか」
俺の茶化しにジェスティは遠くを見つめるような表情で答えた。
「……そういうのはワニを素手で捻り殺す娘と、その様子を間近にみてむしろ惚れ直す娘と一晩共に過ごしてから言って欲しいかな、もう何時食材として始末されるか気が気でないんだから」
一晩のうちに彼に一体何があったのだろうか。
少なくとも俺の方みたいなギャルゲー的展開は無かったように思われる。
「ここに居るのはメイとカレンとジェスティだけなの?」
観言が改めて面子の顔を見渡す。俺と観言と芦屋を合わせるとここに六人、クラスの半分が集まった計算になる。そこに思い出したかの様にメイが呟いた。
「そう言えば今朝方、ここの下流でもう二人ほど見かけたぞ」
「え、じゃ何でここに居ないの?」
観言の至極真っ当な問いかけに、メイは何とも歯切れの悪そうな声で答えた。
「いや……何か邪魔したら悪いかと思って」
どういう事だ。
見かけたんなら俺達の時の様に、声を掛けて連れて来れば良かったのに。それとも声を掛ける必要が無いと判断したのか? Cクラス内でメイ以外にジャングルの中でも過ごせそうな人物と言うと、棟梁こと六郎かもしくは委員長の空鷹くらいだが。
「とりあえず見掛けた場所に案内してくれ」
もしかしたらまだその近辺にいるかもしれない。何を思ってメイが合流を避けたかは分からないが、バラバラよりは一カ所にまとまった方が良いに決まっている。
とりあえずまだ本調子では無いカレンとその看護に観言、魚を焼く担当として芦屋をその場に残す事にする。
俺とジェスティはメイの案内で川下へと下っていった。
かなり歩いた所で、不意に木々の中へ踏み込むと同時に、メイは口元に指をあて慎重に足を進め始める。どうやら極力音を立て無いようにしているらしい。そして何かの気配を感じ取ったのかメイは茂みに身を隠すように体を伏せた。俺達もそれに倣って身を伏せる。
チラリと後ろに視線を向けると、すぐ後を付けているはずのジェスティの姿が無い。どうもはぐれたっぽいな。
その事をメイに言おうとしたら、するとメイが手招きする様なジェスチャーで俺を呼ぶ。近づいてみると茂みの向こうはちょっと平手か空間になっているのが分かった。そしてその広場に確かに二人の生徒が居たのである。
一人は逆立った金髪に人の言う事を聞かなそうな生意気な顔。男子制服の胸元を開けて、変な自己主張の強いシャツを露出する馬鹿っぽい感じはフレックスだ。
傍らにいるのは、彼より一回りほど小さいのに、制服は大きめと言う拘り、おかっぱ頭と妙に表情の詠みとりにくい顔は百川だ。
パイロットとナビゲーターと言う一緒に居ても別に問題はないが妙に珍しい組み合わせではある。フレックスは思に男子生徒と一緒に居る事が多いし、百川も女子とよくつるんでいるので、任務意外でこの二人が一緒にいる所は実は始めてみたかもしれない。
そのまま耳を澄ましていると、二人の会話が聞こえてきた。
「……もう駄目かもしンねぇ」
「…………諦めないで」
「俺達ぁここで死ぬンだ……誰も助からねぇ」
「……そんな事無い」
「だってよ、昨日一日探しても誰も見つからなかったンだぜ! もう皆死ンでンだよ……」
「……違う、きっと皆生きている」
「俺もそのうち……なぁ百川」
「……何? 弱音なら聞かない」
「違ぇよ……、今の内に言っておきたい事があンだよ……」
ううむ、これは確かに声掛け辛い。
っていうか放っておいたらどうなっていくのかが気になるじゃないか。
ちらりと横を見ると、メイがだろ? とでも言いたげに親指を立てていた。俺も頷いて親指を立てる。
これは邪魔出来ませんなぁ。
[アルカの手記-057]
「現地調達と言う言葉には憧れるモノがあるな」
「そうっスか? 準備不足はあまり褒められたものじゃないっスよ」
「常に準備万端で挑めるというモノでもあるまい? 我はむしろ、万全でないなりに割り切り、現地で手に入るのなら必要最低限の準備で問題無いと言う玄人感が出るのが良いのだ!」
「実際はそう上手くはいかないっスけどね」
「特にサバイバルはそうではないか! 如何に不足を補うか、そう言った部分にサバイバーの凄さが出るのではあるまいか!」
「まぁ分かるっスよ、僕も任務で色んな所に行くんで。場合によっては孤立無援で戦う事を強いられたりとか多いっスね。特に僕は潜入任務とか潜伏任務とか多いんで」
「ほう、ではどの様な物を現地調達したのか?」
「いや言っても僕機星っスからね? ぶっちゃけ動力から修復素材まで、状況が揃えば自己補完出来るんで、それほど不便だと感じた事は」
「何とこんな身近な所にサバイバーが!」
「サバイバルっスかね?」
「うむ、こうなれば我もサバイバルに挑まなければならんな! とは言っても流石に食料を現地調達と言うのには不安があるので食料持参で、あと夜は暗いと怖いのでライトも、そうだな支配者たるモノ身辺の警備を疎かにする訳にはいかぬからテント等も必要だな、暇だしゲームと電源も」
「それもただのキャンプっスよね?」
[続く]




