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[Mission-056]

前回までのMission!


 無事身事と合流を果たした昴流であったが、依然としてサバイバルな状況には変わりなかった。

 頼れるのは己の腕と知識のみ! 波乱のサバイバルの二日目が始まる!

[Mission-056]



 ジャングルの朝は寒かった。

 パラシュートを組み替えて作ったテントは外気をしっかりと遮断してくれた、しかし熱源が無いので朝には体が冷えてしまい、身震いしながら体を起こす事になる。

 すっかり乾いた制服に着替え、テントをバックサイズに畳んでいると、観言や芦屋も目を覚ましてきた。

「さてと、どうするかな」

 俺は全員がテントを収納し、動けるようになったのを見計らって呟いた。

「……私お腹空いたかも」

 疲れた表情で観言が答える。恐らく俺も似たような表情をしているんだろう。

 俺達が使うテントは、あくまでも緊急用でレジャー用のテントの様に大きくは作られていない。コンパクトに畳める代わりに床にクッションも無いので非常に寝苦しかった。今後もこれで寝るとなると考えモノだ。

「それより僕は喉が渇いたかなぁー」

 芦屋は鞄から空になったペットボトルを取り出して見せる。俺はまだ残っているが、早めに水は確保しておいた方が良いだろう。

「じゃぁとりあえず水源を探すか、そこに食べ物もあるかもしれないし」

 サバイバルでは水と火の確保が優先される。水さえあれば人間は一か月は生きられると言うし、生き残る上で水の確保は最重要だ。

「昨日は結構激しいスコールが降ったからねぇ、結構あちこちに水場が出来てると思うよぉ」

「そう言えば救助要請とかって出てるのかしら、そろそろ救助が来てもいいと思うんだけど」

「あーそりゃ無理だ、この辺通信の範囲外っぽいし、何より松田教官が仕組んだ事だぜ」

 あの教官が俺達の為に救助を要請するとは到底思えない。谷底に突き落とした上に銃撃を浴びせるような愛情表現の男だ。むしろ通信が効かないのも何処かで教官が妨害電波を発しているからじゃないかと疑っている。

「あり得そうよね」

「ハッハァー、むしろ衛星通信で自力で救助呼ぶしかないねー」

 軌道エレベーターが建造されて移行、低軌道の衛星はすべて撤去されたが(軌道エレベーターにぶつかる危険がある為)、静止軌道に置かれた通信衛星などはまだ残されている。[ネビュラ]ネットワークの管轄では無いのでSEではあまり使われていないが、旧文明的な生活をしてる人達には需要があるらしい。軌道エレベーターにも取り扱っている部署があるらしい。

「芦屋、衛星通信出来るか?」

「ハハァ、こういうのはシルビアの担当なんだよねぇ。彼女達なら通信衛星へのアクセス手段を端末に入れてるはず」

 なら救助を呼ぶのは合流を待つしか無いな。

「水ねぇ、どのへんにあるかしら?」

「ま、昨日の雨で川も増水してるだろうし、適当に歩いてれば音が聞こえて来るかもな」

 歩き出してしばらくすると、俺の言葉通りドドドとものすごい勢いで水の流れる音がしてきた。音を辿るように進むと、やがて木々が急に開ける。

 俺達はかなり大きな川へと辿り着いた。川幅は5mくらいといった所だ。増水しているらしく流れはかなり激しい。時々流木などが流れてくるので中には入らない方がよさそうだ。

 川は土砂が混ざりかなり濁っているが、携帯端末のオプションには水質のチェックや濾過機能があるのでそこまで問題では無いだろう。

「ハァー……顔とか洗いたかったのになぁ……」

 観言が落ち込んだ様子で川縁へと向かう。その肩に手を置いて、俺を彼女を押し止めた。

「何?」

「……いや」

 ふと嫌な予感がしたのだ。

 俺は足元に落ちていた木の枝を適当に川に放ってみる。その瞬間、水面に激しく飛沫が上がり何かが川の中から大量に姿を現して枝に噛み付いた。

 その何かは、漫画や何かでよく見かけるものだった。

「……ピラニアだ」

「うぁ……」

 それは熱帯の川では、割とポピュラーな存在の鋭い歯を持つ魚だ。群れで生息し、この様に水中に入った獲物に襲い掛かる。特に興奮状態は危険で、牛などが川で溺れた際にあっという間に骨だけにしてしまうとか。

「ちょっと図鑑とかで観たのよりもおっきいんだけど……」

「ハッハァ、最近各所で自然環境が変化して動植物が大型化してるって話だよぉ」

 人類が地球上での生息域を削減した事で、地球の環境破壊はみるみる回復しており、今では得体の知れない生物とかが増えてきているとか。

「これじゃ水汲めないじゃない……」

 観言が不満気に水面を見つめた刹那、水中から勢いよく巨大化したピラニアが飛び出した。どうやら大型化したピラニアはかなり狂暴らしく、水中だけでなく水面に近づいた動物にも襲い掛かるようだ。

「キャッ!?」

「観言危なっ!」

そのまま観言に向かって跳ねたピラニアは、空中で突如飛来した銛に貫枯れ地面に突き刺さった。

「え……?」

 観言と俺は唖然と、地面につき立った銛と貫かれてなおピチピチと跳ねるピラニアを見つめ、続いて銛が飛来して来た方に顔を向ける。

 そこに大量のピラニアの入った手製の魚籠をひっさげて、専科指定水着姿のメイが優雅に立っていた。

「む、お前達か久しぶりだな」

 そう言って突き刺さった銛を引き抜くと、貫いたピラニアを無造作に魚籠に放り込んだ。日焼けした体に水着姿と魚籠に銛。物凄く特殊な恰好をしているのに妙に様になっているのだから不思議だ。

「メ、メイ! 無事だったのね!?」

 とりあえず観言がクラスメイトの再開に喜びの声を上げる。

「ああ、お前達も無事の様だな」

 メイの方は、まぁこの様子から察するにしっかりと環境に順応して過ごしているんだろう、特に寂しさとか感じていない返事が帰ってきた。

「向こうでカレンが薪を見ているんだが、お前達も来るか?」

 別に来なくてもいいぞと言うような口調だった。

「結構獲れたからな、全員分はあると思う」

「え……まさかそれ食べるの!?」

 メイの呟きに、観言が信じられないと言った表情で問いかける。

「調味料が無いから美味しいとは言えない、大きい分食べ応えはある。ここは湿気が多いから保存が効かないのが難点だな」

 という事は既に何匹か食ってる感じだな。俺はと言うとメイの持っている銛の方が気になって聞いてみた。

「それはどうしたんだ? 持ち込んだわけじゃないよな?」

「その辺の素材で作った、持参したかったが旅客機の検査に引っかかるからな」

 まぁ確かに、機内に銛を持ち込もうとしたら普通は止められる。

「こっちだ」

 川沿いを進んでいくメイの背中を、俺達は仕方なく追った。恐らく魚籠に大量に詰め込まれた巨大化したピラニアを食わされる事を思うと憂鬱ではあるが、その抵抗感よりも空腹が今は勝っていた。




[アルカの手記-056]


「旅行の準備とはどのような事をすればよいのだ?」

「そう言えば姫様は、あまり旅行をした事が無かったっスね」

「うむ、ちょっとした移動も全て周りの者が面倒を見てくれたからな、故に自分で準備をした事が無い」

「兄様達はその辺過保護っスよね」

「それで何を準備したら良いか?」

「そうっスね、身分証明書関連は適宜必要に応じて偽造するから必要ないっスね、航空券等はファルアタートでいけばOK。お金とかは姫様に持たせるのは怖いので却下、鞄はどうせどっかに置き忘れてくるので持たせない、着替え……は、専用のマテリアルスーツがあるから不用っスよね。タオルや歯ブラシとかも同様、通信機能は姫様に付随、そうっスねハンカチとティッシュと使い慣れた枕を持って行けば問題無いっス」

「む、何か色々な項目があったように思えたが、案外必要な物は少ないのだな?」

「って言うか、どうせファルアタートが同行するんで、ぶっちゃけ家ごと移動する様なもんじゃないっスか」

「無論だ、我が居なければファルアタートが機能しなくなってしまう」

「もう準備も何も無いと思うんスけど……近所のコンビニに行く感覚でOKっス……」

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