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[Mission-053]

前回までのMission!


 実機訓練で機体を大破させたCクラスの生徒達は、松田教官の提案によりアフリカへ課外学習に行く事となる。名目上は課外学習だが南国でバカンスを過ごそうぜみたいな事を言われたのだが……。

[Mission-053]



 軌道エレベーターは、全て繋がっている。

 いや別に人類は離れていても心は一つとか言いたい訳じゃない。

 軌道エレベーターは赤道に沿う様に作られ、それらはオ―ビタルリングという通路で物理的に行き来が可能となっているのだ。しかし貨物輸送以外は、基本的によほどの緊急時でない限り連絡艇を動かしては貰えない。

従って俺達は別の軌道エレベーターに行くのに、大昔同様の手段で海を渡り陸を駆けねばならないのだ。

 とは言っても旅行とはその工程を楽しむものだと言うし。存外長旅と言うのも悪い事ばかりではない。

 俺達はKR専科の軌道エレベーターの上に移動すると、大型輸送機に乗り込んでアフリカ大陸方面を目指した。

 途中で向こうの軌道エレベーター所有の大型の輸送ヘリ[ホーネット]に乗り換え、目的地の軌道エレベーターへと進路をとった。

 滅多に運用されない空中輸送用装甲ヘリ(ホーネット)に乗れたのも良い事の一つだ。

 窓を見やると、遠くにはやはり聳え立つ軌道エレベーターSTT03が窺えた。そして眼下には何処までも広がる熱帯雨林、俗にジャングルと呼ばれる地帯が広がっていた。その辺の景色はうちとあまり大差ないが、島と大陸という事で規模ではこちらが勝っていると言えよう。

 [ホーネット]は通常KRを二機搭載し輸送する事が出来る。今回はKRを搭載せず、代わりに俺達Cクラスを載せている。KRの整備も内部で可能と言う触れ込み通り、格納庫内は皆が床に座って寛げる程度には広い。

 一応課外授業という事もあって全員制服姿ではあるが、持ち込んだお菓子を床に広げて雑談に興じる女子や、トランプを広げて遊ぶ男子などの様子を見る限りでは、ほとんどただの旅行と言った感じである。

「何て事だ(Oh my god)! この私がこんな安い手に引っかかるとは!?」

 男子のトランプに交じって大声を上げているのは、何故かついて来たアリッサ教官である。コクピットの方に居ると操縦の邪魔だと言われて松田教官にこっちに追いやられたらしい。ちなみに尾乃教官は旅客機で一日ほど遅れてくるらしい。つまり今操縦席には松田教官一人という事に成る。

「アリッサちゃん弱過ぎ!」

「表情に出すぎなンだよな」

「おいちゃんと教官と呼べクソガキども!」

 生徒に交じって飴玉を賭ける様子はとても教官には見えない。まぁ同級生にも見えないが。

 俺はというと皆の輪から少し離れて、壁際で携帯端末を取り出してエンジニア達とゲームに興じていたりする。

「ハッハァ、敵は次のマップに行ったようだねぇ」

「駄目がこの武器相性が悪すぎるよ」

「いやいや、貴方の腕が悪いだけなのではないですかぁ?」

 今回は本当に課外授業は名目だけのようで、個人で持ち込む荷物に特に制限は掛けられなかった。普通は菓子やゲームなどは持ち込み厳禁とチェックされるんだが(それでも何とかして持ち込むのも醍醐味ではある)。従って、俺達は盛大に気を抜いて過ごしているわけだが。

〈おーい聞こえるか?〉

 操縦席の松田教官が船内放送を起動させたようだ。

〈お前等はしゃぐのもいいけどよ、一応課外学習って事は覚えとけよ〉

「「「はーい」」」

 一応の釘刺しに、俺達は元気よく返事を返す。

〈遊ぶのは別に構わねぇんだけどな、それっぽい事は規定で言わなきゃいけねぇんだよ、とりあえず委員長、全員にパラシュート配っとけよ〉

「分かりました」

 言われて、委員長が壁に備えられた備品棚よりパラシュートを降ろし始める。

「手伝います」

 副委員長も手伝って、全員に小型パラシュートが手渡された。

 これは旧文明時代にも使われた伝統ある降下装置で、体にベルトで固定し装着する物だ。生身で空中に放り出された際に、センサーが高度を検知し自動的に傘が開き、落下速度を低下させ無事に地表に降りるという仕組みである。類似品に推進機を用いたポータブルジェットという物もあるが、コストや重量の問題でパラシュートを採用している所の方が多い。

もっともこの辺は戦闘区域でもないし、最新鋭の輸送機である[ホーネット]が墜落する事はまず無いのだが。訓練通りこういった緊急装備を手早く装備出来るかみたいな抜き打ちチェックでもするつもりなのかね。

「どうなっている(What happens)? 私のだけ何か大きくて固定されないぞ!」

「……そこ付け方間違えてる」

「ほらアリッサちゃんじっとしてて! っていうか棚に幼児用の無いの?」

「誰が幼女か!」

 彼女の年齢はさておいて、生徒にパラシュート装着手伝って貰ってる時点で教官かは怪しい所だが。ともかくやや時間はかかったが全員パラシュートを無事に装着し終えた。

〈まぁこれも規定だからしゃーねぇな、委員長一応全員ちゃんと装着出来てるか確認してくれや〉

「了解、えっと……パイロットチェック」「ナビゲーターチェックしました」「エンジニアもOKだ」

 委員長、副委員長、棟梁が分担して全員の装備を確認する。

「全員の装着を確認しました」

〈念の為に聞くが、パラシュートに不備や破損箇所はねぇな? あと全員使い方は習ったよな?〉

 何度も確認を要求して来るとは、粗暴な松田教官にしては珍しい。普段はこう言った面倒な手続きは可能な限り省く性分のはずだが。

 とりあえず委員長が全員を見渡し、俺達は全員ハンズアップや頷きで答える。

「問題ありません」

〈そうか、なら……行ってこい〉

 次の瞬間。ガコンと何かが作動する音がして、急激に床が沈み込んだ。床と言うか、俺達が座っていたのは正確には輸送ヘリの底面部だが。これはKRを作戦区域まで輸送した後、空中で降下させる為に床部分が開閉式となっている。恐らく教官は操縦席でそれを開放する操作をしたのだろう。

 当然床に座り込んで談笑していた俺達は、何の抵抗も無く空中に放り出される事となる。

「マジかよ!?」

 無論そんな状況下に冷静でいられる訳が無い。とりあえず何かに縋ろうと手を伸ばすが、空中で掴まれる物は無く、体は引力に引かれるまま、生い茂るジャングルへと一直線に落下して行く。

当然他のクラスメイトもこの事態を想定できた者はおらず、皆虚空に放り出され成す術も無く落下していた。

「きゃぁぁぁぁっ!?」「ちょっお!!」「嘘でしょ!?」

 ほとんどの悲鳴はヘリの駆動音と風にかき消され、皆散り散りにジャングルへと落下していく。

 ほどなくしてセンサーが高度を感知しパラシュートを展開する。

 衝撃で体にベルトが食い込み、呻き声が漏れる。それと同時に。

〈じゃ目的地で先に待ってるぜ! こっから先は自由行動(サバイバル)の時間だ!〉

 ヘリは俺達の頭上を情け容赦なく過ぎ去りながら、悪魔の様な松田教官の声を響かせた。

 この時になってようやく俺達は、教官の思惑に気付く。

 あの鬼教官にしては珍しく優しいバカンスの誘い、そして普通では考えられないほど緩い管理体制。全てはこの伏線であったのだ。

 見渡す限りのジャングルは教官の片棒を担ぐかのように、俺達行く末を暗く閉ざす。



[アルカの手記-053]


「頼む後生だ、そいつに罪は無い! そいつを返してくれ!」

「だーめっスよ! 夕食前にお菓子類は厳禁って言われたでしょうに!」

「おのれ何と卑劣な! 無抵抗のモノを盾に、無理やり要求を通そうなどとはスフィア連星協定違反ではないか!」

「お菓子類にスフィア連星協定は適用され無いっスよ! ほら背中に隠してるやつも出すっスよ!」

「こ、これは鑑賞用だ! 棚に飾って眺めるのだ! 決して食事ようじゃないぞ! だから……」

「いや菓子類の博物館でも建てるんスか、そんな嘘に騙されないっスよ!」

「ぐぬぬ……何と横暴な、我の菓子を奪ってどうすると言うのか!」

「嫌だから夕食をっスね……」

「我の菓子を奪って楽しいか!?」

「いや別に楽しくはないっスけど」

「我の菓子に何の恨みが!?」

「いや、そんなに言うほど美味しいんスか? こんな安っぽそうな見た目なのに……」

「何だお前食べた事無いのか」

「そりゃ機星っスからね、そもそも食べ物を食べる事自体珍しいっスよ」

「ならば先ずは食して見よ、さすれば我が言っている事も理解できよう」

「だから夕食前は駄目っスよって!」

「ぬううう……」



[続く]

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