[Mission-051]
前回までのMission!
辛くもフレックスの奇襲を回避した昴流機であったが、地上用の機体での空中制動に四苦八苦する事となる。そんな中、フレックスの反則技が正式にルールに組み込まれる事となった。
波乱の実機訓練の結末や如何に!
[Mission-051]
何よりこっちはアシスト無しでの空中挙動の操作中だ、ちょっとした操縦桿の遅れで失速し墜落しかねない。さらに言えば銃弾飛び交う戦場の中でもある、一瞬の気の緩みが被弾に繋がる。
〈この野郎! フラフラ呑気に飛んでねぇで降りてきやがれ!〉
「そりゃ悪かったな、生憎と地上戦闘は考えてなくてね、悪いけどそっちから空中に来てくれよ」
気軽に会話しながら空中で姿勢を制御し、モニターに表示されたターゲットに射撃する。くそ、中心点から結構外れた。流石に地上用の機体で空中制御しながらの射撃は、命中が安定しない。
その間にも復帰した1番機と2番機が次々とターゲットを撃ち抜いて追いついてくる。やっぱりあちら二人は命中精度が高くて厄介だ。
〈こうなったらターゲットもお前達もまとめて撃ち抜いてやる!〉
メイの移動しながらほとんど狙いを付けずに放たれる狙撃に、早くもターゲットのポイントが追い抜かれる。ついでに射線上にいたフレックスの3番機もさらにペイント塗れにされる。俺の機体は空中にいたので、この脅威の狙撃に狙われる心配が無いのが幸いだ。
空中にいる俺の機体をわざわざ狙うのは、妙に対抗意識を燃やしたフレックスくらいな物である。あいつの豆鉄砲程度なら滑空しながらの挙動で何なく躱し、お返しにと2,3発撃ち込んでやるくらいは造作も無い。
現状では空中に飛んだ事で、位置取りで有利になった代わりに射撃の安定性を失ってしまっていた。トップでゴールしたとしてもこれでは射撃制度の減点で帳消しだ。やりたくはないのだが、俺もフレックス同様に追加ルールを利用して他の連中を蹴落とす必要があるかもしれない。
「恨みは無いが成績の為だ!」
機動性を犠牲にしている1番機と2番機に、空中から銃撃をお見舞いする。流石に二人とも上空は警戒を怠っていたらしく敢え無く機体天面をペイント塗れにされる。
〈貴様裏切ったな!?〉
「白々しい、地上に降りた瞬間をさりげなく狙ってんのは分かってんだよ!」
空中用機体ではないので、俺の4番機KRⅡ-G03Fは徐々に高度を落とし始めていた。再び浮き上がろうにブースターの出力が上がらない。早速何かトラブルを起こした様だ。しかしここで大人しく地上に落ちればハイエナ共の言い餌となり果てよう。
空に憧れる者が、飛び続ける為の方法を知っているか?
それは足掻き続ける事だ。
「このっ!」
迫る岩壁に向かって機体を動かし、機体の脚部で蹴り上げる。その瞬間に残りの燃料を最大出力で吹かし、墜落しかけた機体を無理やりに持ち上げる。
刹那。飛べないはずのKRⅡは重力の楔を断ち切って山間を抜け、大空へと羽ばたいた。岩山を蹴った際に接触して破損したのだろう、収納式のウィングの破片が鳥の羽根の様に虚空を舞う。コクピット内は見渡す限り空と地平線。際限なく広がるそれは、不思議と俺の心を穏やかにさせる。
さて、前景が見渡せる。
翼は破損、ブースターも不調で停止寸前だ。後は地に落ちるだけ。
しかしここからならば、全てが手に届きそうだ。
俺は冷静に範囲内のターゲットを可能な限り補足、適正距離外なのに今日は妙に遠くまで見渡せるのだ。墜落までのわずかな間にそれらにしっかりと銃弾を撃ち込んでいく。勿論当たったかどうかは分からない。
後は落下の挙動を制御し、ゴール地点を目指す。見ると2番機と3番機がトップをせめぎ合う最中であった。流石に翼も折れて操縦桿がまともに効いてくれないが、何とか一着争いへと軌道を載せる。
「おおおおおぉぉっ!」
後は気迫で操縦桿を倒し切る。
2番機と3番機がぶつかりかねない勢いで掛け抜ける真ん中に、丁度突っ込む形となった。俺の機体はゴール手前の地面にぶつかり、その勢いで転がるようにゴールへとなだれ込む。
そんな動きをすれば、勿論コクピットの中もただでは済まない。流石に実践に投入可能な実機だけあって完璧な耐衝撃機能が作動し、クラッシュに近い衝突事故の衝撃をちょっと大きい地震が起きた程度の揺れに抑え込んでくれた。それでも衝撃が収まり、グワングワン揺れる視界が収まるまではちょっとの時間を必要とした。
モニターを見ると、一着は3番機のフレックスだった。しかし彼は射撃点数52、命中精43と精細に欠き、一着ボーナスの100点が加算されても被弾による失点が93で三位と表示されていた。
対してデットヒートを繰り広げていた2番機メイは二着でボーナス50、射撃点数90、命中精86、被弾による失点68で一位であった。
俺は三着でボーナス25、射撃点数62、命中精56、被弾による失点は0に抑えた物の二位と言う結果に終わった。
可能な限り頑張った結果に、自分なりの満足感はある物の。しかし改まって機体の状態を確認してみると、ほとんど事故現場のような有様で地面に突っ込んでいた。よくもまぁ墜落時の衝撃や機体がバラバラにならなかったものである。
さて、先程からエンジニア勢より着信が収まらないのだが、今はそれを繋げる勇気はない。
[アルカの手記-051]
「前から思ったのだが、あやつは機体の扱い方が雑じゃないか?」
「そうっスね、だいたい機体の性能限界を超えるような動きばかりっスからねー、兵器として活動実績を伸ばしてくれるのはありがたいんスけど、毎回ドック入りとかは勘弁して欲しいっスね」
「やはり乱暴な扱いよりは繊細な方が良いのか?」
「その辺は好みにもよると思うんスけど、僕なんかは最初は優しくしてほしいんスけど、慣れてきたら多少は強引でも乱暴にして貰った方が興奮するんスよね。傷が付かないように丁寧に扱われると逆にムズムズするっていうかぁ、ほら僕やっぱり兵器っスからね、怪我するならするで一思いに大穴が開く方が潔いっていうか未練が無い感じで」
「んん? 操縦の話だよな?」
「そうっスけど?」
「ならいいんだが」
「でもやっぱり初めてのパイロットの場合は、ちょっと優しく接して欲しいっスかね。結局獣みたいに動くのが望みなんスけど、それでも精密な部分もあるんで、慣れるまではお姫様使いされたいってのが機星なら誰しも思うんじゃないっスかね? 出撃前に今日は調子がよさそうだなとか、動力の機嫌が良いとか新品みたいにピカピカだねとか言われちゃったりするとお世辞と分かってても戦意高揚しちゃったり、あ、でも格納庫に入れる時は気を付けて欲しいっスね。場所によっては僕等もよく見えなかったりするんで擦ったりされたらちょっと萎えるっスよ。特にバックで入れる時とか間違った所に入れられたらぷらぐとか違うんで痛かったりして最悪」
「操縦の話だよな? 猥談じゃないよな?」
「そうっスけど?」
[続く]




