[Mission-050]
前回までのMission!
ついに昴流は実機に乗り込んでの訓練を行う事となった。
緊張が高まる中、昴流は隣のフレックスの様子がおかしい事に気づく。そして訓練開始と同時に販促すれすれの行動に出るフレックス機の行動を察知して、空中に逃げる昴流であった。波乱の訓練が幕を開ける。
[Mission-050]
そこに、エンジニアから通信が入って来た。
〈いいかぃ! 今回はシミュレーターじゃなくて実機なんだからね? 決して無茶な挙動をしないでくれよぉ!〉
芦屋が珍しく余裕の無さそうな声を上げる。
今回は実機訓練なので、エンジニアやナビゲーターは指揮車両隣のここまでKRを輸送した装甲車両にて待機中だ。
〈そうだよ! ただでさえこんな劣悪な環境なんだ! こんなの立っているだけで装甲が削れちゃうよ!〉
3番機エンジニアのジェスティはもう悲鳴に近い。
〈実機の機動データが取れるのは嬉しいんですけどね、でもこの後の汚れを落としたりメンテナンスを考えるとですね、次の訓練までに果たして寝る時間があるかどうかという話なんですよ!〉
2番機エンジニアのシルビアに至っては泣き落としだ。
そこにエンジニア陣営の棟梁、1番機エンジニアの六郎の叱咤が響く。
〈手前らパイロットにあんま無茶言うもんじゃねぇよ、俺達はパイロットが無事帰ってくるのを黙って見守ってやんのが仕事だろぉが。どんな状態だろうと無事帰ってきたんなら機体を元通りにするだけだ〉
〈いやぁ言うのは簡単だけどねぇ棟梁!〉
〈それにだよ! 今日の訓練に間に合わせる為に棟梁、皆の整備手伝って三日も寝てないじゃないか!〉
〈なぁに後五日は大丈夫さ……〉
〈そんな無茶すれば、棟梁死んでしまいますよ!?〉
〈棟梁!〉
〈棟梁!?〉
どうやらあっちはあっちで、裏側なりのドラマが色々とあるらしい。
ともあれパイロットは機体を操縦するのがお仕事だ。エンジニアの期待に答えられるよう、全力で動かすしかないだろうさ。
〈そろそろ訓練を開始するわよ〉
尾乃教官の通信に合わせて。
〈了解です、射撃訓練用システムを起動します〉
観言がモニターに命中補正用のスコープを表示させる。今回は実機起動という事で機体の操作はパイロットにほとんど委ねられるので、ナビゲーターは火器管制のアシスト等に専念する形になる。
〈ターゲットセンサーを起動しますわ〉
2番機ナビのカレンがレーダーを起動させる。
〈カウントダウン開始……〉
3番機ナビの百川が開始までのカウントダウンをモニターに表示する。
さてと、俺も操縦に集中する事にしよう。
座席に背中を預けて、操縦桿を握る。その瞬間俺の感覚は外界から閉ざされる。座席から伝わる機体の振動に俺の鼓動を合わせる。足元のペダルと操縦桿で神経を繋ぐ。流石は実機、シミュレーターとは情報量が段違いだ。モニターに頼らずとも外の様子が肌で伝わってくる様だ。
開始まであと5……4……3……。
不意に、先程感じた嫌な予感が背筋を駆け巡った。これはアレだ。根拠は無いが今はこの衝動に従うべきだと思う。俺は咄嗟に装備の秘匿モードを解除して、バックパックを起動させる。
〈うぉぉぉぉいぃぃぃ! それは今回使わないはずだろぉぉぉ!? こんな砂塵の中で使ったら故障確定じゃないかぁぁ!〉
芦屋の絶叫はとりあえず無視する。
起動と同時に4番機のバックパック外装が着脱され、中身の折り畳み式の飛行翼とブースターが威勢よく展開した。これはKRⅡ-G03F装備と呼ばれ、KRⅡにKRⅢの飛行ユニットを無理やり装備した物である。
カウントが0になると同時に、ブースターを全力で吹かして俺の機体は飛翔する。しかし飛行ユニットとはいえもともとKRⅡはフレーム自体が重く、さらに飛行管制にも対応していない為にブースターで無理やり機体を浮かせて、後は滑空するくらいしか出来ない。
だがそれが功を奏した。
開始と同時に沈黙を保っていた3番機が動き出したのだ。両手に装備したKR用マシンガンを左右に向けて乱射したのである。俺の機体はその時には既に空中に避難して回避出来たが、地上にいた1番機と2番機はもろに巻き込まれ、ペイント弾塗れになる。
〈ハッハァ―油断大敵だなぁ!〉
ペイント塗れの二機を嘲笑うように、フレックスが通信を入れる。
〈こら真面目にやらないか!〉
〈くそ子供じみた真似を!〉
委員長とメイがフレックスを非難するが。
〈ハッ、戦場で流れ弾はつきものだろぉーが! これでセンサーでも塞げりゃ俺にも勝ち目が見えてくるってもンよ!〉
フレックスはむしろこれも作戦の内とばかりに、戸惑う二機にさらに銃弾を浴びせつつ、空中にいる俺の機体に狙いを定める。
「そんな生温い照準に捕まるかよ!」
操縦桿を倒しながらブースターで挙動を操作し、銃弾を回避する。それと同時に早くも射程に入りつつあるターゲットに向けて銃弾を撃ち込んだ。
〈ほう、そりゃ結構面白そうだな〉
そこに、厄介事を引っ掻き回してさらに混乱させる事に定評のある松田教官から通信が入った。
〈よしそれ採用しようじゃねぇか、銃弾受けた奴ぁその分減点な〉
急遽として射撃訓練に対KR戦要素が組み込まれる事となった。
〈ほらよ教官にも好評だぜ!〉
〈調子に乗るなよ! その機体、元の色を分からなくしてやるからな!〉
すぐさまメイの反撃を受けて、3番機がペイント塗れにされる。俺は機体を上昇させて流れ弾からの避難を図った。
〈ああもう、これの何処が射撃訓練だっ!?〉
戦場と化すコース上で委員長の悲鳴が響く。しかし実はそれ処じゃない方々が裏方に居たり。
〈ああああ!? もうあんなに汚れて!?〉
〈そう言えばペイント弾の塗料って、確かKRの塗装に使う奴転用してなかったっけ!?〉
〈やめてぇぇぇ! こんな砂塵の激しい場所でペイントなんかしたら粉塵が付着して上塗り出来なくなりますよ! こんな事なら塗料を弾くコーティングにするべきでしたァ!〉
エンジニア勢がうるさいのでそちらのチャンネルは閉じて置く事にする。
[アルカの手記-050]
「裏方と言うのは何処も大変なのだな」
「へー、表舞台に立つ姫様が珍しく殊勝な事言うっスね」
「何を言う、今は我も地球侵略と言う大きな作戦の裏方ではないか」
「まぁ徹し切れてはいないっスけどね」
「だからこそ、無理難題を如何にこなしていくかと言う苦労が我には分かるのだ!」
「へーちなみに最近どんな無理難題言われたんスか?」
「そうだな、部屋を片付けと、指揮関連の指南書の読書を明日までに終えよとスミスに言われたな、おまけに所感をレポートにまとめろとかも言われたか」
「うん、別に無理難題じゃないっスよね」
「まったく我が戦士の助力が無ければ間に合わなかったぞ」
「ええっ、そこ他人に力借りちゃうんスか……」
「何を言う我が戦士は我の力であろう」
「なんか夏休みの宿題を親に手伝わせる子供な理論に見えるんスけど……これどっちかっていうと戦士の人の方が裏方なんじゃ……?」
[続く]




