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[Mission-049]

前回までのMission!


 敵対する機星を倒し、当面の安全を確保した昴流達は配給祭でしばしの休息を得るのであった。

 新たな登場人物と、そしてこれからの戦いに括目せよ!

 『第四話』始まります!

[Mission-049]



 この島に正式な名前は無い。

 そもそも軌道エレベーターSTT04が建っている時点で、島と言うよりは施設と言う扱いなのかもしれない。軌道エレベーターが建つ前は何か名前があったのかもしれないが、今となってはもう記録にも残っていないだろう。

 位置としては赤道近くの(そもそも軌道エレベーターは赤道下に基本的に建設される)南の島である。気温は高温多湿、周囲は海で囲まれていて、近隣に他の島は無い。元々は観光地として開発する予定であったらしい。

 しかし島の大半を熱帯雨林の如き樹海が占め、それ以外の箇所も岩盤が剥き出しとなった岩石砂漠等であり、それらを観光用に整備するくらいならば、もっと相応しい島に旅客用の定期船を出した方が速いという事に成った。

 結果としてこの島の大部分は航空機の滑走路や車両の駐車場、物資の保管施設や、付近の島へ補給物資を運送する流通関連施設が占め、余った場所はKR専科の訓練地という扱いである。

 軌道エレベーターから西側に広がる樹海を抜けた先に前述の岩石砂漠地帯が広がっているのだが、ここはKRの実機訓練地としてあえて舗装などの整備がされずに放置してある。

 岩盤剥き出しの荒れた大地が、KRの機動を確認する上で丁度いい障害になるらしい。隆起した岩山の間を、まるでオフロードコースの様にこれまでKRが走行したらしき道筋が刻まれていた。

 この訓練に挑むパイロットは自然が作り出した、曲がりくねった複雑な地形を高機動で駆け抜けるのが結構癖になるらしい。そしていくら機動兵器であるKRとて、この劣悪な自然環境を全力で走破すれば、あちこちで不慮の損傷や摩耗が起こる事でエンジニア勢からは死の岩道(デスロード)と呼んで恐れられているとか。

 海側から入り込んだ突風が砂塵を舞い上げ、荒涼とした風景を作りだす。そんな中、四機のKRⅡが一列に並んでいた。

 その内の一機、4番機に乗り込んでいる俺はと言うと、退屈そうにシートに座り欠伸を噛み殺していた。今までのシミュレーターと違い、実際に実機に乗り込んでの訓練ではある。しかし初めて乗り込むって訳じゃないし、さらに言えば今回は仮想敵も存在しない射撃訓練だ。こんな物は講義の合間の時間潰しにやる携帯端末のミニゲームみたいなモンで、そもそも緊張しろと言う方が無茶である。

〈よーしお前等準備はいいなぁ? 整備不良とかで完走出来なかった奴ぁこっから専科まで徒歩だからな!〉

 指揮車両より、実技担当の松田教官から通信が入る。相変わらず息を吸えば脅し文句が飛び出す危険人物である。

〈いい皆? 訓練内容を繰り返すけど、コースに沿って移動しつつ、設置された的を射撃して貰うわ。的は一定距離に近づいたらレーダーに反応するように設計されています。撃ち漏らす事の無いように〉

 続いて我らが清涼剤、尾乃教官から改めて訓練内容が告げられる。

〈ゴールに到着した順位、射撃精度で評価します。撃ち漏らしたらその分は減点と言う形で行うから〉

 四機の持つ射撃兵装には各機の識別色のペイント弾が装填されてある。これでコース上の的を射抜きながらの徒競走って事なんだが。

「何だかねぇ」

 俺は正直気乗りしないでいた。元々射撃がそこまで得意分野と言う訳でも無い事もあるが、何より射撃に関してはウチのチームの狙撃手に叶わない事がテンションの上がらない理由でもある。

モニター越しに並ぶ他の機体を見てみる。

 今回の訓練に合わせて、俺達はそれぞれKRⅡを与えられ、それを自分の使いやすいようにカスタマイズすることが許された。流石に大改造を施すほどの時間的猶予はなかったが、それでも各々で装備を変えてきており並べて見比べればそれぞれの機体に個性が見えてくる。

 KRⅡは外観を例えるならば、人型の戦車と言った感じだ。全体的に四角く、脚部には車輪が取り付けてあり高速移動する場合はこれで大地を駆ける。背筋や手足を縮めている様なフォルムをしているのは、全高を抑えて重心を低くする為だ。

 委員長の乗る1番機は、基本的に変更点はほとんど無い。標準的な地上高機動型のKRⅡ-G01(ウルフ)装備といった所だ。装備も標準的なKR用アサルトライフルを片手に装備している。反対の手には装甲板で作られたシールドを装備しており、指揮官として守りに重点を置いた構成である事が窺えた。関節部に保護用のカバーが取り付けられ、まさに安定性を高めた感じである。

 対照的に(メイ)の乗る2番機は、機体の軽量化が計られている。余分な装甲は殆ど着脱され、脚部の車輪はキャタピラに換装してある。これは部分的にKR-G04c(ライノ)の装備を使っている様だ。

 いや、むしろそうしないと機体背部に担いでいる狙撃用の120mm徹甲弾砲の重量の所為で、まともに移動出来なくなるので仕方が無い。頭部にはバイザー状の保護装甲が装備され、狙撃の精度を高めてある。

 フレックスの3番機は両手にKR用マシンガンを装備しており、恐らくは銃が二丁で命中率も二倍だぜとか馬鹿な事を考えていそうだ。関節周りを柔軟に動かせるよう装甲面積を減らしてはいるが、大体の構成は変わっていない。

 そして俺の乗る4番機はと言うと、まず基本最低限度の装甲すらもほとんど排除してある。椀部の二の腕部分と、脚部の正面、そしてコクピット周りに最低限の装甲は残してあるが、まぁほとんどフレームだ。間接部位には保護皮膜をコーティングして、一応の砂塵対策はしてある。そして背後には機体の半分ほどのサイズのバックパックを背負っている。明らかに機体の軽量化を帳消しにするお荷物だが、これはいわゆる切り札ってやつだ。中身はこうご期待。どうせすぐ使う羽目になる。

〈悪いが今回は私の一人勝ちだな〉

 早速メイが通信で勝利宣言をして来る。

 本人の自信を見ても分かる通り、恐らく今回の射撃訓練でトップに君臨するのは恐らくメイだ。あいつはレーダーに映らなくても容赦なく的を射抜く。そして動かない的ならばまず外す事は無い。次いで警戒するべきはフレックス、パイロット本人が馬鹿なのはもうどうしようもないが、ナビゲーターの百川のバックアップは驚異的の一言に尽きる。物凄く正確な命中補正で馬鹿の無駄玉を必殺の弾丸に変える魔法使いだ。

 委員長は射撃の腕は悪くないが、所謂優等生レベル。正直この面子の中ではパッとしない。委員長には悪いが、今回はフレックスとの二番目争いとなる事だろう。

「仕方ねぇな、どうだいフレックス? どっちが二番手かで何か賭けるか?」

 今一盛り上がらない気持ちを、多少でも底上げしようとフレックスに話しかけるが。

〈悪ぃが今集中してンだ、話しかけるンじゃねぇ〉

 おや素っ気無い。

 単純な射撃勝負じゃメイにゃ勝てっこないと思うんだが。馬鹿は馬鹿なりに考え事でもあるんだろうかね。

 しかしこいつがこうも大人しいと何か嫌な予感がしてならない。




[アルカの手記-049]


「我々はこのままでいいのだろうか!」

「おおう、いきなりなんスか姫様」

「地球人の訓練を見て思ったのだ、彼らはこのように日々努力している、それに比べて我等の気の抜けようと言ったらどうだ!?」

「気の抜けようったって、僕は捕虜っスし、今修理待ちっスからね」

「地球人に負けぬよう、我等も日々努力するべきではないだろうか!」

「確かにその通りっスけど、床に寝転がって菓子とドリンク摘みながらじゃ全然説得力が無いっスね」

「これはまぁあれだ、何事も形だけ入っても仕方あるまい、大事なのは中身だと言う意思表示でな」

「形からは入るのも大事っスけどね」

「と、言う訳でお前達にはこれから毎日早朝ランニングと筋トレ、そして母星の歌の斉唱を義務とする!」

「まぁやれって言われたらやるのは吝かでは……斉唱?」

「さらには、食事制限と食後のストレッチに、素振り一万回を申しつけるぞ!」

「はぁ、それでもちろん姫様も一緒に行うんスよね?」

「は、え、何故我が……」

「優れた指導者は民に目指すべき道を身を挺して示すべきだと、勅語には書いてありますし、姫様もこんなだらけきった姿は偽装で、影では想像も付かない努力をしてるっスよね? なら、一緒にやりましょうよ」

「ま、まぁ……いいだろう、こ、このくらい我ならば余裕だ……そうだとも」

「じゃあ早速行くっスかね?」

「いや……明日からにしよう」

「こうやって支配層は腐敗していくんスねー」



[続く]

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