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[Mission-047]

前回までのMission!


 はぐれたアルカとも無事合流できた昴流だったが、再び観言が乱入し騒動になり掛ける。

 しかしアルカが観言にC(キューブ)を手渡した事で二人は和解する事となったのだ。しかしその事が別の新たな波乱を呼ぶ事に成るのではないかと、昴流は危惧するのであった。

[Mission-047]



 配給祭は火星の新商品をお披露目する展示会の様な物だ。だがしかしお祭りのような側面も無い事も無い。その証拠に、ちゃんと飲食店のブースも設けられており、そこで出店っぽい食べ物も購入する事が出来る様になっている。

 火星由来のカラフルな洋菓子から、近隣の村から出張ってきたお好み焼きやたこ焼きと言った伝統の品まで寄り取り見取りである。

 それらには観光客の他にも、普段軌道エレベーターに所属する職員までもが群がっていた。何故かこういう雰囲気の場では、より一層美味しく見えるものなのかもしれない。

「おおお、なんだあの板で香しい匂いを立てている物体は!?」

 ここにも、その雰囲気にのまれた異星人が一人。

「え、焼きそばだけど……?」

 アルカに肩を揺さぶられた観言が、面食らった表情で答える。

「何と面妖な……む、あれは何だ! 赤い赤いぞ!」

「え、林檎飴……」

 火星の最新技術にはさして興味を示さなかった異星人も、流石に地球の伝統的お祭りの雰囲気には抗えなかったようである。次々と目に飛び込んでくるみた事も無い物に目を奪われて、観言を質問攻めにしている。いつの間にやら随分と仲良くなった様だ。

「何だったら食べてみればいい、買ってやるよ、一個だけな」

 こうも楽しそうにしていられるとこっちも持て成したくなるという物だ。

「何!? これらは食べ物なのか!」

 だとしたら異星人は普段一体何を食べているんだろうか。疑問は募るばかりである。

 配給祭の為に大幅に改造された駐車場は中央にステージが設けられており、そこから各種のまとまったカテゴリごとにブースが放射線状に配置されてある。今俺達が居るのは飲食品エリアという事だ。

そして中央のステージでは火星からのゲストアーティストや、企業が新商品のプレゼン、催し物の発表などが持ち回りで行われていた。

 そこに一際大きな歓声が上がる。それも旅行客などの一般人はあまり興味無さ気であり、むしろ軌道エレベーターの職員や、専科の教員や生徒達等が熱狂しているように見えた。

「何だ?」

「あー何でも次世代の起動兵器を発表するみたい」

 何処からか入手したらしい、配給祭のスケジュールを見ながら観言が答えた。

「次世代って事はKRⅣ? へぇついに造られるのか?」

 そりゃ専科関係者は盛り上がる事だろう。勿論俺達も無関係ではない。

 現在KRシリーズはⅢまでが実践に投入されており、次世代のKRⅣは宇宙での運用を想定されて開発されるであろうと言われている。しかし既存のKRはどれもが地上で運用することを想定して作られており、宇宙用のKRはほとんど一から設計を作り直す事になると言う。その為まだまだ開発の目途は立っていないらしいと聞いた事があるのだが。

「こりゃ一目拝まないといけないな」

 そう言って俺は観言と共に中央ステージを目指す。

「何だそんなに皆が歓喜するほどの美味な物がそちらにはあるのか!?」

 俺達の後ろを何も分かっていない様子のアルカが、綿菓子を頬張りながらついて来る。

 いやお前、潜入任務中なんだろ。敵の新兵器の情報くらい興味を持てや。


 ステージ周りには見事に専科の関係者しかいなかった。

 日は完全に落ちて、家族連れの旅行客は軌道エレベーター内の宿泊施設に戻っていった様だ。残った人も、めぼしいイベントを終えて色々なブースへと散っていったのもある。むしろそういった一般人の興味を引くイベントを一通り終えた後の余った時間を狙ったのかもしれない。

 会場では既に司会者とその補佐が、壇上に立つ新兵器の開発関係者と思しき研究者にマイクを向けて色々と聞き出して居る所だった。その背後にはカバーの掛かった巨大な物が鎮座しており、それが例の新兵器である事は明らかだった。

 マイクから流れる内容は、この機体が如何に既存の兵器を上回っているか、そしてこれまでのKRシリーズなど足元にも及ばない新設計の機体であるという事が語られていた。

〈それでは開発主任にお越しいただきましょう!〉

 司会の言葉と共に、ステージの奥にスポットライトが当たる。そこにスモーク立ち上がり、さながらアイドルの登場とも言いたげな過剰な演出と共に、呼ばれた人物が悠々と姿を現した。

それは司会者よりも二回りも小さい女の子であった。フリルの付いた可愛らしいワンピースの上から大きめの白衣を着こみ、ウェーブの掛かった金髪は腰に届くほどの長さで、きめ細やかな光を放っている。彼女を始めて見た観客からはその可愛らしい容姿に驚きの声が上がる。

 そして俺達Cクラスはその人物に見覚えがあった。KRⅡを格納庫へ移送する際に突如として姿を現したアリッサ教官をこの短時間で忘れられる訳が無い。

 彼女は大股で司会に歩み寄ると、徐にマイクを奪い取った。

〈まったく嘆かわしい(Totally deplorable)!〉

 スピーカーが壊れんばかりの音量で彼女の嘆きが響く。

〈何がか? それは世間の関心の無さがだ! 今この瞬間地球にシンギュラリティが起こり得ると言うのにまるで緊張感が無い! そんな事では技術に、世界に追いつけまい! この世に主役足り得るは、相応の活躍をした者のみだ! 何もせずただ座して待つだけでは端役は愚か背景にすら成り下がろう! 世界は進む! 時計の針よりもなおも速く! 我々は全速力でそれに追いすがらなければならない! 何故ならこの世は進化しなければ淘汰される生存競争の場であるからだ! 技術を進歩させる我々が鈍足では話にならない! いずれ追いかけてくる何かに捕食されてしまうだろう! さぁ諸君私の全速力に必死で付いてくるがいい!!〉

 そう言って彼女はマイクを、プロレスのパフォーマンスよろしく会場の床に叩きつけた。キーンと音が鳴り響く。その後まだ言い足りなかったらしく彼女は徐にマイクを拾い上げた。その仕草は何か可愛かった。

〈何故誰も理解しない!(Does none of why understand!) 確かにKRシリーズは優秀だ、それは認めよう。しかし最良ではあっても最善では無い! まして最高などでもない! システム[ネビュラ]のバックアップによりパイロットの体感データを疑似インターフェイスとして取り込むヒューマノイドコア理論は、これまで複雑であった機械操作を一気に簡易な物に落とし込んだ、しかしそれは同時に必ず人の操作を介さなければならないと言う欠点にも直結する!〉

 彼女は痛い所をついてやったとでも言いたげな表情でマイクを掲げて見せた。

〈これが何を意味するか(What does this mean)? 機械とはすなわち人間の作業の代替として開発されたはずだ、それなのに我々が操作しなければ作業にならないと言うのは本末転倒! これでは我々は何の為に機械を作っているのか分からなくなってしまう!〉

「でもG-HARD(ジハード)の制約をどうします?」

 彼女の言葉に、客席の方から質問が飛び込んだ。

 G-HARDとは、KRシリーズに搭載されている旧世代の兵器を無効化するシステムの事だ。このシステムのおかげでKRシリーズは従来兵器に対して圧倒的な優位性を持つと同時に、パイロットの搭乗を必要とする制約が課されるのだ。

〈いい質問だ(Good question)! しかしその問いに答える前に、まず何故KRシリーズにパイロットの搭乗が必要なのかについてご説明しよう!〉

 そう言って彼女が指さすと、背後にプロジェクターが映像を投影する。そこにはKRⅠが映し出される。

〈基本的に(Basically)、KRは人体の延長線状に位置する。すなわち発想としては宇宙服やパワードスーツに近い構造をしている。人体を模したフレーム、直感的な操作性、そして機能を外付けの装備に頼ると言う点に置いても人間とほぼ同じだ、要するにKRとは名前の通りパイロットが着込んだ時代遅れの鎧なのだ、しかしこれは人体、そして人間の思考、さらに言えば人間がこれまでに獲得してきた文明を余す事無く盛り込んだ実にコンパクト且つスタイリッシュな方法には違い無い〉

 次の瞬間、画面のKRⅠに大きく×印がつけられる。

〈だとしても(Even if it is so)、機械……この場合ロボット技術に置いてはまったく方向性の違う進化と言えよう、結局の所人類は歩兵の頃と全く変わらず手に銃を持って互いに打ち合う道を進んでいるのだから、これを愚かと言わずして何と言おうか! だからこそ私はこの兵器を開発したのだ! 人類が新たな進化の先を見つけられる様にと!〉

 長い前振りを終えて、ようやくステージ上に鎮座するシートが剥がされる。





[アルカの手記-047]


「我は思ったのだ」

「相変わらず急っスけど、どうしたんスか」

「地球のお祭りで出店を体験してな、その美味しさに舌鼓を打ったものだが、彼らにとってこれは日常的な物だと言う」

「まぁそうっスね、過ごした星と環境が違うんスから、そういうのを異文化交流っていうんじゃないっスかね」

「ならば、地球にて我等の星の文化を提供したらいいのではないかと!」

「ほう、悪くない考えっスね、でも文化っていっても何を持ってくるんスか? あまり技術的な分野はマズイと思うんスけど」

「それは我も考えた、そこで食べ物に限定してはどうだろうか!」

「えー食べ物っスか」

「なんだ不満か? 長期間宇宙を放浪しているからこそ、食料の保存や栄養面では優れているのだぞ」

「それってあのやたら硬くて水に浸して食い千切る様に食べる謎の固形物とか、特に味は無いけど妙にお腹にたまって食後に生きる意味を見失いかけるドロドロの謎のゼリーとか、舐めると妙に多幸感があって痛みも眠気も感情すらも感じなくなるヤバい成分入ってんじゃないかって噂で誰も口に入れたがらない謎の飴とかっスよね?」

「……まぁおおむねそうだ」

「侵略作戦の一環としては悪い考えじゃないと思うっスけど」

「あれ異文化交流は!?」

「あんなんバラ撒いたらテロ扱いされるっスよ」

「むしろ我等の食糧事情って一体……」

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