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[Mission-045]

前回までのMission!


 クラスメイトでお祭りを見回っていたのだが、一人また一人と離れて行き、結局昴流はアルカの御守という立場に甘んじる事になる。そんなアルカが興味を示したのは、昔のゲームセンターを意識したようなブースであった。

[Mission-45]



 何が悲しくて普段本物を操縦している俺がおもちゃを操縦しなきゃならんのか。

 しかもまずい事に今の俺は制服姿だった。見物人もKR専科の生徒がゲームをプレイするという事で、観戦用モニターに視線が集まる。これは遊びだからと手を抜けばKR専科の評価を落としかねない。まったく面倒な事態になったものだ。

 幸い実機のシミュレーターを模したゲームらしく、コクピットのレイアウトはかなり本物に近かった。恐らく操縦系統も遜色ないだろう。機体の挙動や反応にゲームらしい不足はあるが、相手がゲーマーならば遅れをとる事も無いはずだ。

 ゲームを起動すると、薄暗い格納庫内からのスタートとなった。そこから機体を戦場に突入させる演出らしい。

「ほう、しっかり反映されてるじゃないか」

 格納庫内の光景は、実際にKRが格納される輸送機にそっくりであった。流石に乗り込む機体はKRとは似つかない、妙に刺々しい外装を纏ったカッコいいデザインのロボットではあるが。

 ペダルを踏み込んでブースターを起動させる、それに合わせて座席が微妙に振動するのが伝わって来る。

「妙に凝ってるじゃないか」

 とは言えその感覚は実機のシミュレーターにも言える事だが、本物の感覚とはやはり掛け離れたものだった。正直に言えば物足りない。

 そのまま加速レーンに沿って、格納庫の出口へと飛び込む。視界が開けるとそこは光線飛び交う戦場だった。

 場所は朽ち果てた建築物が乱立する砂原といった場所だ。視界は砂塵に塗れてよく見渡せないが、備え付けられたレーダーが敵機の位置を教えてくれる。

 乗り込んだロボットはブラスターと呼ばれる光線銃を基本装備としていた。空中を飛行する事も出来るようだが、その状態ではエネルギーを消耗するらしい。

 戦場はオンラインで繋がっており、他のプレイヤーとサバイバルバトルを勝ち抜いていく様だ。地上では新たに参戦した俺の機体に向けて、早くも銃口を向ける機体が何機か確認できる。なるほど新規参加者の降下中の無防備な状態を狙い撃つとはいい作戦だ。しかし、システムの照準補正を狙って適正距離まで引き付けると言うのはいただけない。得物が射程距離まで大人しくしてやる義理はないのだ。

 とりあえず眼下の機体に向けてブラスターを掃射する。射程距離外で自動的に照準が合わないが、かまわずに目視で合わせて2機を撃墜した。

 敵機を撃墜すると同時に、ブラスターの残弾と機体のエネルギー残量が補充された。おまけにパイロットの階級も若干上昇する。どうやら敵機を倒せば残弾や燃料などが補給され、それらが尽きたり機体が大破すればゲームオーバーという流れの様だ。

 モニター画面には制限時間が表示されていて、そのカウントがゼロになった時に戦場に残っていた一番戦果の高いプレイヤーの勝利という事らしい。

「折角なら一番を目指さんとね!」

 死角からの他プレイヤーの襲撃を、機体のブースター制動で避けつつ、背後へと回り込む。その勢いのままブラスターを周囲にばら撒いた。

 さらに二機を撃破して機体の残弾とエネルギー上限が上昇する。まったく戦えば戦うほど機体の性能が上がるとか、これだからゲームは楽でいいね。

 流石に目立ち過ぎたらしく、周囲のプレイヤーが俺を落とそうと集結して来るのがレーダーで窺えた。ゆっくりと距離を詰めてきているようだが、徒党を組んだ程度の烏合の衆では俺を包囲する事は出来ない。先ずは特出し過ぎた一機に狙いを定めて急接近、すれ違いざまに後方射撃で撃破し、包囲の外側から混乱に乗じて襲撃していく。とりあえず相手に損傷を与えて逃げ回り、動きの悪くなった相手から一機ずつ確実に潰していく。ゲームなので残弾を気にする必要が無いからこそ、こんな無茶な戦術も実行できるのだ。

 階級もうなぎ上りで上がっていく。ついでに観客からの歓声も盛大になっていった。

 そして、ついにこのフィールドでトップの階級になった時、空から新たなプレイヤーが参入してきた。

 それは周囲の空気を張り詰めるに雄々しく、そして優雅に虚空より舞い降りた漆黒の機体だった。鋭利な形状の装甲に身を包み、大型のブースターが何処となく鴉を思わせる。そして佇まいは他の機体とは明らかに違っていた。所謂古参プレイヤーってやつか。

 その機体は他のプレイヤーに構う事無く、一直線に俺の方へと進路をとる。

「なるほど一騎打ちがお望みか!」

 俺もそれに呼応するように、ブースターを全力で吹かす。

 ブースターの光が二つ並行するように空を進み、そして突如として縺れ合うように複雑な軌道を描く。二つの機体は互いに後方をとらせまいと、虚空に螺旋を描いていく。それと同時にブラスターの銃撃が虚空を明るく染め上げる。機体の最高速度では射撃の自動補正もほとんど意味を成さない。銃撃よりも機体の挙動の方が速いのだ。

 全速力で撃ち合い続けるので、残弾とエネルギー残量が見る見るうちに減っていった。そろそろ決着を付けないといけないなと思った刹那、敵機の動きが遅くなっていく。どうやら先に戦場で敵機を倒していた分、エネルギー残量でこっちが勝った様だ。機体を敵機の背後に回り込ませて銃口を向ける。ブラスターの射撃で終わらせてやるとトリガーを引いた所で、黒い機体の姿が掻き消えた。

 何がおこったのか一瞬わからなかった。しかし次の瞬間敵機のブラスターが頭上から降り注いだ。恐らく敵機の動きが遅くなったのはブラフだ。機体の推進を切り、こちらの油断を誘った所で一機に再点火、機体を翻させて上を取ったのだ。

 しかし何より驚いたのは、そのアクロバティックな動きに見覚えがあったからだ。

 シミュレーターに侵入しこちらを一方的に翻弄する黒い乱入者の機体の動かし方に、癖が似ている。

 ゲームオーバー画面と戦績が表示されるよりも先に、俺はゲーム筐体から飛び出していた。観客が賛辞を投げてくれるが、俺の耳には届かない。俺は観客の隙間に目線を送り周囲を探る。ここのブースには同じ筐体が何機か並んでいるが、その内で俺の筐体以外に稼働しているのは一機だけだった。

 もしかしたら……この中に?

 幸いゲームのタイムリミットは残りわずかだったので、間もなくこのプレイヤーもゲームが終了して出て来るはずだ。

 間もなくしてゲーム筐体の扉が開き、中からプレイヤーが姿を現した。

「どうかしたの、兄さん?」

 プレイヤーは少年だった。俺よりも頭二つ分くらいは小さい、浅黒い肌からして近隣の島の子供だろうか。短めの黒髪で、複雑な民族模様のシャツと短パンに身を包んだ、活発で生意気そうな少年だった。

「あ、いや……」

 俺の視線に少年は、不思議そうに頭を傾げる。

「あ、このゲームプレイしてたんだ、ねぇどうだった? 勝てた?」

 その表情はとても楽し気で、何と言うかとても子供っぽかった。流石にこの少年は違うだろうなと首を振る。このゲームはオンラインで繋がっているのであのパイロットがここに居るとは限らないのだ。

「俺は……負けたよ、上には上が居るもんだ」

 少年の問いかけに、落ち込んだ様子で答える。

 そうだな、所詮ゲームとはいえ気を抜いていた俺が悪いのだ。ここは素直に負けを認めて次に生かすべきだろう。

「へーでも、お兄さんも強かったよ!」

「そうかい」

 どうやらこの少年も同じ戦場にいたらしい。倒した機体の一人でなければいいんだが。とりあえず俺は少年から意識を逸らして、いつの間にか姿の見えないアルカを探して店内に視線を巡らせる。

「そうだよだって」

 少年は楽しげな表情で言う。

「異星人を倒せたんだからさ」

「何だって?」

 慌てて少年に顔を向ける。

 少年は楽しげな表情のまま、言葉をつづけた。

「あれ、このゲーム戦績優秀者はタイムアップ後にボス戦に挑めるんだけど、行かなかったの? それが異星人って設定なんだよね」

 何だゲームの話か。

 その時、ブースの外から声が響いた。

「カルア、そろそろ行きますよ」

「ハーイ」

 少年はその声に軽く返事をして、ブースの外で待っているスーツ姿の男の元へと駆けていった。

「それじゃあお兄さん、また戦おうね♪」

 また戦おうね……って事はやっぱり同じ戦場にいたのか。

 俺はその言葉が気になって去りゆく背中を追った。少年の言葉は他愛無い子供の約束事にしか過ぎないのだろう。しかし妙な胸騒ぎがするのだ。それが何なのかはわからないが、もう少しあの少年と話せばわかるかもしれなかった。

 しかし少年の姿は既にスーツ姿の男と共に人混みに消えて見えなくなっていた。集まっている人の中には家族連れも多く、子供の姿もあちこちに見える。この混雑の中から先ほどの少年を見つけ出すのは骨が折れそうだった。

 姿の見えないアルカも放っておくわけにはいかず、これは諦めるしかないと首を振った。 




[アルカの手記-045]


「しかしこのゲームセンターとやらは中々に楽しいぞ」

「ま、僕から言わせて貰えば、わざわざ祭りでゲーセンってどうっスかねって感じっスけど」

「何だこれは本来の祭りでは無いのか?」

「いや無くはないっスけどー、祭りのゲームったらやっぱ、射的とか輪投げとか型抜きとかっスかね」

「ふむ、響きからはちょっと地味そうではあるな」

「判って無いっスねー、祭りっていう雰囲気がどんなものでも楽しくさせるんっスよ、浴衣にお面着けて綿飴か林檎飴片手に金魚掬いするのはもはや様式美っスね」

「ほほう、聞いていたら私も何だか楽しそうに思えて来たぞ!」

「でしょう! ここは何かイベントフェスみたいな感じ何で、今度機会があったらマジもんの祭り行きましょうっスよ、姫様なら浴衣も絵になるっスよ」

「悪くないな、で、それらのゲームはどうレバー操作してどのボタンで何が起こるのだ?」

「いや……そんなゲームソフトもあったっスけどね……」



[続く]

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