[Mission-044]
前回までのMission!
祭と聞いていてもたってもいられなかったらしく、配給祭にアルカが降臨する事に成った。
何とか生徒に紛れる事には成功したが、偶然にも居合わせた観言と鉢合わせしてしまう。
[Mission-044]
美人と可愛い女子生徒二人の言い合いは、次第に通行人の視線を集め始め、俺は非常に居心地の悪い思いをする事となる。そこに追い打ちを掛ける様にCクラスの面々がぞろぞろとやって来た。
「おやおやぁ? ハッハァ何処に行ったかと思えばこんな所で女性二人に板挟みとはぁキミもなかなかやるねぇ?」
「見るからに修羅場」
「オイ手前ェなンか羨ましいぞ! 爆ぜろクソが!」
野次馬共が好き勝手言って来る最中、常識人代表の委員長は冷静に。
「観光客の前で騒ぎを起こすんじゃない、それとも全員で外回りしたいのか!」
まさに委員長らしい一声で、場を収めたのだった。
「うえぇぇん葵姉ぇ! 憎い、美人と長身と巨乳が!」
何か打ち負かされた様子の観言が、傍から見ても美人で割と長身で巨乳の副委員長に泣きついた。
「あらあらえっと、観言さんも可愛らしいですよ?」
とりあえずフォローを入れる所は流石だが、そのことは今回の言い争いとは無関係なので別に突き放してやって問題無いと思う。
「てぇかよ、おい……何このめっちゃ美人、クソうらやましいなおい!」
「あの制服、指揮科……」
「お、お姉さまよりも輝きが上だなんて……!?」
Cクラスの注目がアルカに集まる。頼むぞアルカ、先程観言に対してやったように生徒に成りきるんだぞ。
とは言っても単身敵地に潜入するくらいだ、多少は地球人のふりをして暮らせるくらいの知識は持っているのだろう。ならば俺は、一般常識では無い生徒の内情とかの話題になった時にフォローすれば切り抜けられるはずだ。
アルカは俺のそんな視線は気にせずに嬉しそうに告げる。
「さぁ我が戦士よ、祭りとやらをさっさと案内しろ、我が星にも似た様な催しはあったがな、何故か皇機種と言うだけで参加させて貰えなかったのだ」
こいつに何か期待した俺が馬鹿だったようだ。
アルカの唐突な異星人発言に首をかしげるCクラス面々に、俺は慌ててフォローを入れる。
「いやさこいつ、何か親の都合で火星とか木星の衛星とかを転々としていたらしくてさ! そっちの方では結構な家柄らしいんだよ!」
俺の送る視線に気づいて、アルカも言葉を足す。
「うむ、そういった場所を転々としていたな。生活の大半は船の中であった……不自由はしなかったが、こうして同年代と言葉を交わすのは久しぶりかもしれん」
もはやアルカは、演技などかなぐり捨てて自身の境遇に思いを馳せていたのだが、クラスメイトはむしろその表情にリアリティを感じたらしい。
「ああなるほど」
「そう言われれば何処か気品がありますね」
「えーじゃあ地球外のお姫様って事!?」
世間知らずな面も高貴な身分という事でこのまま誤魔化せそうだ。もっともその部分は本当の事だが。とりあえず物怖じしない親しみやすい性格と、美人な外見も相まってアルカの存在はCクラスの面々に好意的に受け入れられた様だ。
早く出店を見に行こうと急かすアルカを、折角だから皆で見に行こうという事に成った。しかし何で俺が、異星人の潜入活動に気を揉まなきゃならんのだろうか。
配給祭と言うのは、年に一度行われる軌道エレベーターの必要物資補給を祝うお祭りである。その発祥は軌道エレベーターの完成式典であるらしい。
当時はもっと世界的規模な祝い事であったらしいが、今では軌道エレベーター周囲の人々が集まって騒ぐ程度となっている。
さらに言えば祭りと言っても旧文明にある様な、太鼓や祭囃子を散々かき鳴らして神様に披露する物では無い。意味合いとしてはイベントフェスに近いだろうか。
会場には火星の新しい物がカテゴリーごとにブースで区切られて展示され、それらに人々が目の色を輝かせて群がっている。過疎化した地球では、この機会にしか火星の最新技術に触れる事は出来ないのだ。その意味では新作発表会ともいえるかもしれない。
初めはクラスメイトの皆で回っていたのだが、各々で興味のあるブースに惹かれて一人また一人と離れて行き、結局気が付けば俺とアルカだけとなっていた。
「ん、皆が迷子となったか?」
「いや女子は化粧品とか新作デザートとか、男連中は武器や電子機器のブースに分かれてったから厳密には離散かな、まぁ後は勝手に各々で寮に帰るだろうさ」
生憎と俺にはファッションも武器も縁遠い。しかしこの祭りにまったく興味が無いと言う訳ではなかった。
「お、新曲発見!」
偶然目に入った音楽系のブースに、お気に入りのグループの新譜を見つけてふらふらと足が向かう。地球にもまだまだ音楽文化は残っているし、そっち方が俺の好みにはあっているのだが、しかし火星で流行っている曲も、それはそれでいい物なのだ。音楽に国も人種も、ましてや星々の壁も無い。別腹別腹。
そんな浮足立った俺の襟首をむんずと掴んで、アルカがとあるブースを指さして喚いた。
「おいあれはなんだ!?」
「いや俺ちょっとあっちに用が」
「何やら煌びやかで楽しそうだぞ!?」
「だったら見に行けばいいだろ一人で、俺はちょっと新曲をだな」
「よし我が戦士よ現地調査に行くぞ!」
「…………本当に調査なんだろうな?」
ずるずると引き摺られながら、ふと異星人は地球の何に惹かれて来たんだろうかなと疑問に思った。
彼女等は地球や恐らく火星をも遥かにしのぐ超化学を有している。さらに兵器等は地球にある、あらゆる物質と違う構造をしていた。エネルギーも独自の物で地球では恐らく発見もされていない物だ。普通侵略とは、自分達に無い物を求めて他所へと攻め入る事だ。
彼女達は独自エネルギー確保の為と言っていたが、それだって探せば他の星があるはずだ。わざわざ抵抗する様な星に攻めるのは手間ではないだろうか。
もしかしたら、今日みたいな賑やかさに惹かれて、ふらふらとうっかり近づいて来ただけなのかもしれないと思ったりした。
引きずられて来たブースは、やたらとうるさかった。激しい電飾に飾り付けられて、様々な光源やBGMが入り乱れる。どうやら火星で一世を風靡したアーケードゲームなどが遊べる場所らしい。ブース内には地球でも流行った機種の焼き増しの様な物から、どう扱えばいいのか全く分からないゲーム機まで、大小様々に並べられている。
それらを興味深く見て回っていると、アルカが一つのゲーム機に足を止めた。
「何故このような場所に戦闘兵機の操縦席があるのだ?」
アルカの興味を射止めたのは、所謂戦闘兵器の操縦席を模したゲーム筐体だ。ゲーム機本体に入り込む様に座る事で、まさに実際の起動兵器に乗って居るような感覚で遊べると言う代物である。
「ああ、まぁ模擬訓練機のゲーム版って所だな」
とりあえず本物の模擬訓練機に毎日座ってる俺としては、ちゃちな玩具にしか見えないのだが火星では結構流行っているらしい。確か大会とかも開かれていたはずだ。
同じ筐体が何個か並んでいる所を見ると、協力や対戦プレイが出来るらしい。
「ふむ、私も機星の操縦者の端くれだ、ちょっとやってみるか」
「おうお手並み拝見といこうか」
意気揚々とゲーム機に入り込むアルカを見送って、観戦用のモニターに目を向ける。そこでは乗り込んだプレイヤーの機体がやや離れた場所から臨場感たっぷりに映し出されていた。
さて異星人のお姫様の操縦の腕前はと言うと、まぁ動かせただけ上等といった所か。
機動兵器の操縦経験者とは思えないほどに動作が拙かった。少し動いては立ち止まり狙いを付けて撃つというゆったり動作が限界なので、結局5分と経たずに被弾してゲームオーバーだ。
「これは難しい、ユーザーフレンドリーではないな」
「いや明らかにアンタが下手過ぎるだけだと思うが」
「何を言う、移動し敵の攻撃を避けながら、さらに敵に照準を合わせて撃てなどと複雑な動作を同時に出来る訳があるまい!」
「だとしたらアンタは今までどうやって機動兵器を操縦していたのか疑問に思うんだけどな」
そうやって操縦するのが起動兵器の基本だと思うんですけどね。
「ならば貴様もやってみろ、そして実戦とゲームは違うという事を認識するといい!」
「普通逆だけどな」
結局俺は、強引にアルカにゲーム機に詰め込まれた。
[アルカの手記-044]
「もしかして……いや、そんなはずはないと思うんだが、しかしな……うーむ、致し方ない、念の為に聞いておきたいんだが」
「何スか歯切れ悪いっスね」
「いや気の所為ならいいのだが、もしや我は操縦が下手ではないだろうかと思ってな」
「ええ今さらっスか!?」
「今までは周りの者はその道の専門家だったり戦士だったからな、私が多少劣るのは仕方が無いと思っていた」
「そうっスね、って言うか本星で姫様より操縦下手な人っていないと思うっスけど」
「今回操縦席を模した遊具に触れて思ったのだ、戦っている連中は正規のパイロットでもないただ遊びに来ている一般人だと聞かされた、そんな連中に手も足も出なかったのだ、これはちょっと自信が揺らぐではないか」
「えー……いや、ちょっとっスか……で、ちなみに姫様は自分がどれくらいやれると思ってたんスか?」
「ふむ、我が戦士ほどではないが……そうだな[ミスト]に一太刀くらいは浴びせられると思っている」
「うわおこがましい!?」
「流石に姫に向かってその言い草はあるまい」
「いやだってっスよ! あの剣星と謳われた[ドゥル]様に腕前を見込まれたほどですよ! [ミスト]にはマジで戦って僕もまだ一本もとった事無いっスのに……」
「[ドゥル]には我もお上手ですねと言われた事があるぞ!」
「いやそりゃ……姫様にはそう言うしかないと思うっスけど」
[続く]




