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[Mission-030]

前回までのMission!


 なんだかんだでフレックスと模擬戦闘を行う事に成った昴流。

 フレックスと百川の中々に侮れない射撃に苦戦する昴流は、果たして打開策を見つける事が出来るのか。

[Mission-030]



 観言の指示する軌道に合わせて操縦桿を倒す。しかし敵はまるでこちらの動きが見えているかのように、追従を振り切る形で逃げて行く。おまけに嫌なタイミングで銃撃が飛んでくるのでこちらも回避を余儀なくされる。避けそこなった銃弾が脚部に被弾し、微細なダメージを受けた。

「さてどうするか」

 こちらの得意な距離にはどうやっても近づかないつもりの様だ。恐らくは向こうの主導権を百川が完全に握っている。やはりパンツを覗いた事を怒っているのだろうか。

 KRにおける単機戦のセオリーは、回避や防戦に回って敵の消耗か味方の援護を待つモノとされる。模擬戦と言う状況では、積載燃料や弾薬切れによる制限時間はあっても、味方の増援はまず期待出来ない。見渡す限り荒野な状況では身を隠す事も出来そうにない。

 敵がこちらの接近を避け、銃撃による牽制で消耗戦を強いて来ているのは明白だ。

 俺達が乗るKRⅢ-F02AT(ナイト・ラウンダー)は空中戦を主体とした高機動機だ。戦闘機にも負けない加速力と飛行能力を誇るが、燃費に問題がある。出力全開で行える戦闘可能時間は5分程度だ。下手に追いかけて鬼ごっこに持ち込まれたら、いざ肉薄して攻撃しようとした時には燃料切れで機能停止になりかねない。

 それじゃあまるで昨日の、宇宙人の兵器の時と同じだ。まったくあの時も、最初から制限時間があると分かっていれば戦闘中に燃料切れなんて凡ミスは犯さない。アレは説明しなかったアルカが全面的に悪いと思っている。俺なら勝てる戦いだった。

 そうだ、こんな所で見知った相手の戦法に嵌って立ち往生している場合じゃない。

 俺にはまだ行かなければならない先がある。

 その前に立ちふさがる壁は、無理やりにでも突き進んでいく他ないのだ。

「一つ提案なんだが、オートバランサーと各種アシストを切ってくれ」

〈はぁっ!? あんた何言ってんの? それじゃほとんどフルマニュアルじゃない! 勝負捨てるつもり?〉

 早くも観言から非難の声が響く。

「攻撃は俺に任せてくれ、二人は移動とブースターの制御を頼む」

〈ハッハァ、フルマニュアルだって? KRⅠ式の連携操縦をするつもりかい? そんなの授業でちょっと触った程度だよぉ〉

「お前等なら出来ると信じてるぜ!」

〈ちょっと待ちなさいよ!? そんな急に!〉

「敵は待ってくれないぜ」

〈ああもう!〉

 観言を何とか説き伏せて、一旦機体を地面に降ろす。

 オートバランサーや各種アシストなどのシステムサポートは決して悪いものでは無い。むしろ機体をよりスムーズに、そして簡易に操縦する為に考案されたものだ。

 しかしその為に機体に負荷が掛かるような動きや、無茶な挙動は取れないように設定されている。出力設定も動力炉などに支障が無いように70%までしか出ない様にリミッターが設けられているのだ。さらにシステムのサポートが操縦に介入する為に、レスポンスが若干悪くなる。それでは俺は満足に動かせない。

 コクピット内のコンソールを操作して、オートバランサー及び各種アシストをOFFにする。これでこの機体は半自動制御と言う枷から解き放たれた。

 同時に機体の動きに関する全ての制御を手動で行わなければいけない。元々KRは三人で操縦するように出来ている。一人で操縦するには人型汎用兵器と言うのは複雑過ぎるからだったのだが、システムが完璧にサポートして一人でも動かせるようになった現在でもその機能は残っている。システムの部分的な損傷やパイロットが意識を失った場合に、他の人が肩代わり出来るようにと言う配慮なのだが、応用すれば三人で操縦を分担することは十分に可能だ。

 勿論、全ての機能を人間が掌握する事がKRの本領と言う訳でもないだろう。しかし、この操縦方法が従来の機械のサポートに頼り切っている操縦に劣っているとも俺は思わない。

「さて、ここからは本気で行かせて貰う」

 呟いて、画面に映る敵を見据える。敵機はこちらの様子を窺うように旋回を続けている。流石の百川も俺達が何をしようとしているのかまでは読めないようだ。

〈敵の射撃が来るわ、回避コード343!〉

「そのまま射線上を掛け抜ける! 芦屋バランスは任せた!」

〈了解だよぉ、ブースター03-06全開!〉

 瞬時に指示が飛び交い、連携操縦によって機体は銃弾が飛来する前に斜め前方へ回避する。上体を傾けながら、銃弾の軌道を避けるように敵へと向かう。

〈軌道修正、ブースター07-08稼働するよぉ〉

 背面の推進機に、さらに脚部のブースター加わり機体が瞬間的に加速する。

 俺たち一人一人の判断の速さが機体挙動に反映されて、各動作のレスポンスが恐ろしく早く感じる。フレックス機の射軸修正が追い付けないほどだ。

〈パターンから推測すると今から3.5秒後に次の進路をとる確率が45%、攻撃を続行するか確率が30%、それ以外の行動の可能性が25%、カウント3、2、1〉

「反撃に備える!」

〈了解回避コードを211に設定〉

〈ハッハァ、じゃあ緊急回避機動準備しとくよぉ〉

「緊急回避は使わない、全速力で距離を詰める!」

〈ちょっとそれ危険!〉

「危険は百も承知の上だ!」

 俺は機体のペダルを全力で踏み込んで、襲って来る衝撃に耐える。機体は激しい衝撃を伴って、敵機へと一気に付き進む。

 直後に、進路が危険エリアと表示され、コクピット内に警告音が響き渡った。敵機がこちらの動きを読んで射線を合わせてきたのだ。この速度での強襲に攻撃を合わせてきたのは流石と言おう。

 このままでは敵の銃撃にさらされて蜂の巣になる事は必至、腕で防ぐか? いや前回それで片腕を失って窮地に陥った事を思い出せ。椀部を損傷すると攻撃力が下がり、肉薄した際に決定打を失う。銃弾が機関部に当たらない事を祈るか? そんな運任せでこの先勝ち抜ける事は出来ない!

「武装ケースを展開!」

〈ちょっともう武器なんて入ってないわよ!?〉

〈はいはいっと武装ラック展開したよぉ、何をする気だい?〉

 腰に保持されていた武器収納ケースが展開され、サブアームが腕の付近にまで箱を持ってくる。俺は自律腕部挙動追従(ハンドモーショントレーサー)で武器収納ケースを掴むと。サブアームが壊れる事も厭わずにもぎ取り、機体の頭上に盾の様に構えた。

 敵の射撃が、頭上ギリギリを通過していく。何発かがケースに当たり、ケースを損傷させていく。勿論ただの武器収納ケースである為、防弾性能は期待出来ない。しかし機体の侵入角度と加速、そしてケースが丁度傾斜装甲の役割を果たし、銃弾を上手く跳弾させる。機体本体の損害は軽微、そのまま突入を続行する。

 タイミングを間違えば直撃でジ・エンドな危機を乗り越え、この思い切った突貫が敵の虚を付けた様だ。敵の攻撃反応を上回る加速で懐へと肉薄する。

「上昇だ!」

〈ブースター01-02で急上昇だよぉ〉

〈攻撃チャンス外すんじゃないわよ!〉

 穴だらけになったケースをその場で破棄し、敵の真下で地面を蹴る様に軌道を直角に変える。弾け飛ぶように、敵の退避ルートへ回り込む。その様子は姿を見てから逃げても遅い、まるで猛禽類の狩の如く。そして手にした刃は、確実に相手の息の根を止める鉤爪の如く。瞬間、モニター全面に敵機がアップで映る。俺は自律腕部挙動追従(ハンドモーショントレーサー)で手にした剣を的確に敵へと向けて――。

 その瞬間。

 俺にこいつらが斬れるのか?

 剣先が鈍る……。

 刃が火花を散らして敵機に食い込む瞬間、剣の軌道がずれ、刀身が大きく歪む。しまったと思った時。

『緊急停止コードが発令されました、シミュレーションを強制終了します』

 突如鳴り響くシステムアナウンスと共に画面が真っ暗になる。

「おう!?」

 操縦桿も一切の操作を受け付けず、コクピットモジュールの扉が勝手に開き俺は外へと放り出された。

 会場を見渡すと、向こうのチームも同じような状況らしく呆然としていた。

『現在SE施設が未確認の襲撃を受けています、生徒及び職員は至急安全地区へと避難してください。緊急事態の為、施設内の機能に制限が掛かります』

 部屋の照明は最低限に抑えられ、非常用ライトが避難経路を照らし、所々で警報が怪しい音を奏でる。

 部屋は警戒色の深紅に染まり、騒々しいまでの警告が非常事態を全力でアピールしていた。

 ドクンと動悸が高まる。

 嫌な予感が俺の身体を駆け巡っていた。






[アルカの手記-030]


「ふむ、システムのアシストを切るとは中々に粋な事をする」

〈私には実に不合理な事にしか映りませんが〉

「機械のシステムに頼るだけなら誰でも出来よう、ましてシステムに依存するだけならばいっそ全自動にすればよいのだ」

〈確かにその通りでございますな〉

「何故兵器にパイロットを載せるのか、その答えを今回垣間見た気がするぞ」

〈しかし全手動とは思い切った事を、パイロットの負担も相当な筈でございましょう〉

「そんなに大変なのか?」

〈人体で例えるならば、息を吸い、息を吐き、右足を動かし、重心を移動しつつ左足をと歩くだけでもこのように無数の命令が存在します、普通はそれらをまとめて歩行プログラムとして一括管理しておりますが、あ奴らはそれらを全て一つ一つ自分達で制動したのでございます。そうすれば一つ一つの動作を確かに素早く行はしますが、人間技ではございませんな〉

「えっと右足を上げて? 息を吸い? 重心を移動させつつ、息を吐いて? 右手を? むぅスミスよ歩くとはどうやったんだったか?」

〈人間技でない事ですので、人間並みの動作すらおぼつかない姫様には無理かと〉



[続く]

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