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[Mission-026]

前回までのMission!


 ミッションを終えた昴流は唐突にアルカに呼び出される事に成る。

 目の前に開かれた転送ゲートに戸惑いつつも、中ば無理やり突入を余儀なくされた。そして転送された先に待ち受けるのは?

[Mission-026]



「ぐふぅ!」

 滑る様に転がり、硬い床に腰を打ち付けた。しかし痛みよりもトイレの床が傾斜した事よりも、俺は周囲の風景が様変わりしている事の方に驚いた。

 そこはもうトイレの個室では無かったのだ。

 見たままをそのまま伝えるとだ、機械に囲まれた水族館って感じ。

 壁や天井を用途不明の複雑な計器類が埋め尽す。松本零士の世界観だこれ。

 それ以外は周囲前景を見渡せる様なガラス張り、いやよく見ると壁に海の光景が映っているって感じだ。熱帯魚と海面から差し込む日の光という映像に何の意味があるかはわからないが。

 しばらく部屋の様子を眺めていると、不意に部屋の照明が落ちる。部屋に設置された様々な計器から、きらびやかな光が灯り、天上が円形に開く。そしてそこから、盛大なファンファーレと共に宙に浮く不思議な椅子に座って銀髪の少女が降りてきた。

「全てはスフィアの元へ(オルシャルドリターントゥスフィア!)!」

 それはまるで勝利宣言の様な凛とした声だった。

 椅子から零れ落ちる煌めく銀の髪。銀色の衣装に身を包み、スタイルはモデルの様にすらりと細く、そして胸は大きい。神話にて勇者を魅了する女神の如き美貌の少女はアルカ・スート。

 彼女は仰々しく椅子の上に立ち上がる、すると彼女の周りを銀色の粒子が飛び交い、彼女はその粒子を纏うように両腕を広げる。粒子は彼女の銀色の衣装の装飾やマント等に姿を変える。彼女は宇宙服の様な姿から、軍隊の指揮官のような華やかな姿に変身を終えた。

「さぁ、地球征服を始めよう!」

 彼女は見た人を射抜き魅了する笑顔で、そんな物騒な事を言ってのけた。

 そうだ、この微笑みにほだされてはいけない、この人物こそ俺の日常を完膚なきまでに破壊し、ゆくゆくは世界の平穏すらも破壊せんとする侵略者なのである。

〈姫様、地球(アース)人の転送完了を確認いたしました〉

 続いて、虚空にモニター画面が開き可愛いんだか不気味なんだか分からないマスコットキャラが表示された。こいつも椅子に座る女の仲間である。

「くっそここは何処だ!?」

 とりあえず俺はこいつらから離れるように距離をとって、背後の壁にへばりつく。こんな部屋見た事も無い、少なくともここは軌道エレベーターやそれに併設する施設ではないだろう。

 すると手が、扉の開閉ボタンらしき物に触れたらしい、背後の壁が扉の様に唐突に開いた、よしここから脱出だと思った瞬間。

「わおぶぶぶぶぶ!?」

 扉の奥から溢れだした大量の水に俺は押し流された。あっという間に流れ込む水が足元まで溜まる。

〈船内に海水が侵入、ただちに扉を閉鎖し海水を輩出いたします〉

 マスコットが告げた瞬間、扉は閉まり海水は何処か知らに排水されて行った。後には無駄にずぶ濡れになった俺だけが残される。

「はぁはぁはぁ……外まんま海かい!」

 どうやら映像では無く本当に海中にいる様である。

「ふむ元気そうだな」

 彼女が椅子の上でクスリと微笑む。

〈対象をメディカルチェックいたしました所、体組織崩壊も欠損箇所も見当たりません、転送範囲内の他物質との融合も見受けられませんな〉

「うむ、僥倖だな」

「いやそんな物騒な技術で呼びつけるなよ!」

 姫様とやらがちょくちょく使ってるもんだからてっきり、ど○でもドアくらい気軽なもんかと思っていたんだが。

「安心しろ、貴様の生体波動は既に登録済みだ、安全は保証しよう」

〈我々の技術を持ってすれば、規格外の地球(アース)人の転送でも98%の安定性を保証します〉

「その2%が怖ぇんだよ!」

 何なんだ、その2%で何が起こるんだよ! 体バラバラにされんの!? 未知の時空に飛ばされるの!?

「安心しろと言っている、もし貴様の身体が直視できぬほどに変質しようとも、私はお前を見捨てはしない」

「そこは別に心配してない」

 その辺は出来る限り早々に身捨てて自由にして欲しい。

「ってかここ何処だよ……」

 叫び疲れて、俺は膝に手を置いて息を整える。見渡す限り人類の文明の産物とは思えない。ここがこいつらの居城である事は間違いなさそうなのだが。

「ここか? ここは[ファルアタート]の艦橋(ブリッジ)だ」

 彼女は胸を張って自信ありげに答えたが、情報が少なすぎてあまり役には立たない。彼女達が乗ってきた宇宙船って事か?

「貴様も自室の如く寛ぐが良い」

 こんな未知の文明に囲まれては無理な相談だ。

〈姫様! 野蛮な原住民に身勝手な許可を与えないでください! 私めがこの船の管理運営を取り仕切っているのです、機星の整備等重要な機関も多々ございます、この様な者に自由に振舞われては気が気でなりませんぞ!〉

「……なら入られて困る所は施錠でもしておけ」

 話を聞く限り、乗船許可証? の様な物は登録されているらしい。得体が知れないのであまりうろつきたくないんだが。そもそも水の中じゃ脱出もままならない。

「ってか何で海中?」

 最初見た時は宙に浮いていた気がしたが、いやそもそも宇宙から来たんなら宇宙空間も行けるわけで、それなら水中にいても何ら不思議は無いのか?

〈これだから地球(アース)人は……地上では目立ってしょうが無いではないか! そんな事も分からぬのか〉

 マスコットが馬鹿にするように叫ぶ。画面の中じゃなきゃ殴っていた所だが、

「あの丸い兵器みたいな光学迷彩はこの船にはないのか?」

「丸い兵器とは第九機星(ソラ・ソード)の事か」

〈ふん、物事を争いと言う尺度でしか計れぬとは野蛮種め〉

「スミスよ説明してやれ、我々も彼らの事が分からぬのでこうしてここにいるのだ、無知はお互い様よ」

〈し、しかし姫様。それでは我らが英知が!〉

「彼は我が戦士(エイン)となったのだ、多少は教えてやっても良いだろう」

〈ぐぬぬ、姫様の寛大な御心に感謝せよ蛮族!〉

 完全にこいつらに仲間扱いっていうのも何か引っかかるが。

「では後は頼むぞスミスよ」

〈はお任せください姫様!〉

 彼女はそう言うと、椅子と共に天井へと消えていった。

 後には、俺とモニターに映るマスコットが残される。ええっとこれは聞きたい事を色々聞いていいって事か?

「じゃぁ、まずはここは何処だ? その船っていうのも何だか良く分かんねぇけど、その説明」

 マスコットは俺の問いかけに嫌そうな表情を見せた後、物凄く事務的な口調で答え始めた。

〈隠密型強襲揚陸艦[ファルアタート]は我々カレント・スフィアが主に機星を運用する上で用いる輸送手段兼メンテナンスドッグ艦である。現在この艦は貴様の先程居た場所からおよそ南東に5000mほど離れた海中の水深500mの所に居る〉

 何か仕様説明丸読みな感じがする。

「意外と近場なんだな、それじゃ軌道エレベーターに見つかるんじゃないのか?」

〈ふん、貴様らの探知の目などいくらでも誤魔化せるわ、海中を潜伏場所に選んだのは我らを狙う機星の目から逃れる為と、ファルアタートや第九機星(ソラ・ソード)S(ソラン)粒子を供給する為だ〉

「ええっと、じゃあその機星ってのは何なんだ? 俺が昨日乗った機動兵器の事だよな?」

〈貴様らの兵器等と比べられる代物では無い! が、しかしおおよその認識ではそれで良いだろう。本来は姫様のような皇機種(ルーラー)かその様な方々に選ばれた偉大なる戦士(エイン)にしか操る事は叶わない高貴な代物なのだ、貴様も今後乗る時は心せよ〉

「またあれに俺は乗せられるのか……」

〈そうでなければ今すぐ貴様を焼却処分している所だ。第九機星(ソラ・ソード)は現在ファルアタート最下層のドックにて修復作業が行われている。作業完了には少なくとも地球時間であと20時間ほどを要する、それまでは貴様に用は無い〉

 姫様とこのマスコットではこちらへの対応が全く違う。俺はこいつらに歓迎されているのかいないのか。


[アルカの手記-026]


「どうだ我の登場シーンは、中々に様になっているだろう?」

〈素晴らしい限りでございます、入念なリハーサルを繰り返した甲斐がありましたな!〉

「ふふん、我の実力を持ってすればこの位容易い」

〈あやつも姫様の迫力を前にして声も出ないようでしたな〉

「次はもっと演出を派手にして行くぞ!」

〈……いやそれは、あまり艦橋に余計な機能を仕込むのも邪魔ではないかと〉

「何を言う、指揮官が颯爽と登場するからこそ、兵も士気が上がるのであろう!」

〈まったくその通りでございます〉

「次は踊りを取り入れてみるのもいいかもしれんな!」

〈それは良いのでございますが、打ち合わせよりも早々に退出なさいましたが何かありましたのでしょうか?〉

「……いや後半台詞を忘れてな」



[続く]

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