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[Mission-025]

前回までのMission!


 強敵である漆黒の乱入者に、際どくも勝利を収めた昴流たちであった。

 しかし、中々にあり得ない凡ミスでミッションを失敗してしまう。

 そして――。

[Mission-025]



 戦闘の後と言うのは何時も億劫だ。

 モニターは数分前から暗転し、アラートメッセージの赤い光に照らされている。

 お前の仕事は終わりだ、早く出て行けと急かされているようで気分が悪い。

 特に任務失敗の後味の悪さの中だと、特に気が滅入ってしまう。

 こういう時は、とにかく早めに切り替えた方が良い。汗だくの身体を何とか座席から引き剥がし、俺はコクピット外壁の開閉スイッチを押した。内部の熱気を輩出しながら扉が開き、座席が外へとせり出す。

開閉を待っている間に、だんだんと怒りが込み上げてきた。

コクピットの外、模擬訓練モジュールの置いてある会場に出る。俺はチームメイトの言葉を無視してそいつの元へと足を進めた。

向こうも俺と同じ気持ちだったらしい。俺と、金髪をバンドマン風になで付けたパイロット、フレックスは会場の中央で互いに服を掴み合う様にぶつかり合った。

「おいなんて事してくれる!」

「ああン!? てめェこそふざけた事してくれンなよ!」

 俺の機体をこいつが破壊しなければ、あと少しで任務成功だった。

ほんと余計な事をしてくれたよコイツは!

「まぁまぁそこまで機体ボロボロにしたアンタにも少し責任あるって」

「ハッハァー、機体接触で捥げるって事は脱出途中で空中分解の可能性だってあるんじゃないかなぁ?」

 チームメイトの小柄ながらお姉さん風をなびかせる()(こと)と、ひょろ長いボサボサ頭の芦屋(あしや)が俺を抑え込んだ。

「……今回はフレックスにも非はある」

「そうだよ、それにほらまだやる事が残っているんだぜ?」

 一方でフレックスの方もチームメイトが抑え込んでいた。

 訓練終了直後で今はやる事が多い、仲間の言う通りフレックスに構っている余裕は無いのだ。互いに目線で睨みあってその場は離れる事にした。

「Bクラスから返信きました、我々は乱入者とは無関係である、もともと[コルヴァズ]には制御用のKRが破損した際の緊急脱出用にシャトルが搭載されており、そこにいつの間にか忍び込まれたとの事です」

「じゃあ、ミサイルの発射経緯と内部構造のデータを要求しておくか、今更データを洗い直しても痕跡は残って無さそうだけどな」

 委員長と副委員長のコンビは侵入された原因をBクラスと連絡を取り合って調べていた。今回は作戦途中の乱入とはいえ、超高速で移動するミサイルの中から現れたのだ。いくらシミュレータが仮想現実とはいえ、[ネビュラ]の演算支援を受けて可能な限り現実世界をトレースしている。どれほどハッカーの腕が高かろうと、任務中の稼働したミサイルの中にいきなり出現する事は不可能だ。事前に積み込みデータの中に紛れ込んでおく必要がある。模擬訓練の開始直前の何処かから潜り込んだかで侵入経路を掴み、再発を防ごうとしているのだろう。

 まだまだ手も足も出なかった俺としては、また現れてくれる事を願うばかりだが。

 パイロット一同の戦闘ログと、ナビゲーターの通信記録、そしてエンジニアの報告をまとめた委員長は、会場を見降ろす見学席にて、多機能端末で何処かと連絡を取り合っている尾乃(おの)教官に声を掛けた。

「えーっとそれで、これは我々側の失敗って事になるんでしょうか?」

 委員長の言葉に、尾乃教官は少しだけこちらを向いて。

「ああ、それで」

 淡白な台詞を述べたあと、再び多機能端末でやり取りを始めた。

 教官が急に俺達に対して指導するやる気を失い職務をボイコットした……訳では無い。今現在教官やその他職員は、現在軌道エレベーター周辺で起きている謎の通信不能状況に上へ下へと大忙しなのだ。

 先日の夜に突如として起きた通信障害は、軌道エレベーター内のあらゆる通信を不可能とした。現在は施設内での通信ならば何とか繋がるようにはなった。しかし未だに他の軌道エレベーターや火星との通信は途絶えたまま、復旧の目途はたっていないと言う。

 忙しそうな教官を会場に残し、模擬訓練システムの終了作業を終えた俺達は場所を食堂に移した。

 軌道エレベーター及びそれに併設された施設では、機械による自動化が行われている。その為職員が休む暇さえ無い現状でも食堂は通常通り使用する事が出来る。

 表示された項目からメニューを選ぶと、受け取り口から料理が出てきた。内容は本日のおすすめランチ、ガーリックシュリンプとスパムむすびにアサイ―ボウル。中身を確認して注文すればよかったと少し後悔した。

昼時には少し早かったが、今は飯を食う以外にする事は無い。午前中の訓練も中止となったし、何とか自主的に他のクラスと連絡を取り合って模擬訓練の場を設けたのだが、午後に何をするかの予定も決まっていない。

「ハッハ―、しかしいつまで続くのかねぇー」

 テーブルにつくと、先に座っていた芦屋が口を開いた。

「隕石が原因の電波障害くらいパパッと直んないものかしらね?」

 続いてクラブハウスサンドを手に、観言が席につく。

 食堂の空気が何処か重い。それも当然か、今まで普通に続いていた日常がある日突然日々入れば誰だって戸惑うだろう。

〈これが噂の隕石の墜落跡だと思われる場所です〉

 食堂備え付けの大型モニターを誰かが付けたらしい。現在星間ネットワークが繋がらないので、報道科が自主的に流している報道番組くらいしか観れるモノが無い。

〈ご覧ください、周囲一帯の木々が薙ぎ倒されて地面が捲れあがっています。しかし肝心の隕石本体は衝突の衝撃で粉々になってしまったのか見当たりません〉

 報道科が時代遅れな手持ちカメラで流している場所は、昨日俺が居たあの場所だった。

 そう、あいつらに出会った場所。

 その時、俺の多機能端末が着信に震えた。

「誰だこんな時に……」

 特に何も考えずに通話に出ると、予想もしていなかった声が響いた。

〈うむ、我が戦士(エイン)よ壮健か?〉

 その瞬間背筋に悪寒が走り、気が付けば俺は立ち上がっていた。

「お、お前!」

 そしてそんな様子の俺を不思議そうに見つめるチームメイトが目に入り。

「あ……悪いちょっと出てくる、食器片付けといてくれ」

「え、マジ? じゃアサイ―貰い♪」

 強奪される昼飯を尻目に、俺は通話しながら食堂を出て人気の無い所へと向かう。

「どうやって俺の端末に!?」

 生徒に支給される端末情報は、統括ネットワーク[ネビュラ]の管理下のはずだ。この不審人物が端末を持っているはずが無い、という事は。

〈ふん、我らに言わせればこの程度のシステムはセキュリティとは言わん。それはさておき、戦士(エイン)昴流よ、人目のつかない場所へ移動せよ〉

「そうしてるよ、こんな会話誰かに聞かれたら大事だ!」

 とりあえずあまり使用されていないトイレの個室に入った。ここならいくら騒ごうとも誰かが来る心配はまずないだろう。

〈人目は無いな?〉

「ああ」

〈では転送を開始する〉

「へ、転送って!?」

 俺の言葉に返事はなかった。いつの間にか俺のいる個室の後ろ側の壁が、何処か知らない場所へと通じる扉の様に開いていた。扉の中は輝かしい光を放っている。手を伸ばすとそこはやはりもう壁では無く、何処かへと繋がっている様だった。

「いや、誰が入るかよ」

 吐き捨てた瞬間、床が唐突に光の扉の方へと傾斜しはじめる。

「んなっ!?」

 そのまま俺はバランスを崩し、扉の奥へと消える。



[アルカの手記-025]


「しかしあれだな、こうして実践に近い設定で訓練を行う事で、優秀な戦士(エイン)を育成しているのだな」

〈まったく地球人と言うのは野蛮ではある物の、末恐ろしい連中でございますな〉

「これは蛮族と侮る訳にはいかんぞ、我々もそう言った良いと思った事は取り入れていくべきではないだろうか?」

〈と申されますと?〉

「我々も訓練により現実的な設定を取り入れて緊張感を持たせるのだ」

〈なるほどそれならば兵達の習熟も早くなりそうですな、しかし現実的な設定とは一体どのような?〉

「そうだな、我等が支配制度に不満を持った民が反乱を起こすとか」

〈いやはや姫様、いくら設定とはいえ我等が組み敷く絶対王政に逆らう民など、むしろ非現実的でございまする〉

「むぅ確かにそうだな。ではもっとあり得そうな……例えば我等皇機種(ルーラー)の腐敗に臣下共が嫌気がさし機星を誑かすのだ。秘密裏に皇機種(ルーラー)に凍結処置を行い実権を握る事で表面上は何も変わる事無く影から支配権をかすめ取ると言うのはどうだろうか?」

〈……いささか現実的過ぎるのもどうかと思います〉



[続く]

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