[Mission-021]
前回までのMission!
ジャングルで遭難し異星人と出会い、機星と呼ばれる兵器の操縦を巻かされた昴流。
蜥蜴型の敵機星と抗戦するも、一歩及ばず燃料切れでの敗走を余儀なくされた。
そんなこんなで気分を一新して、[第2話]始まります!
[Mission-021]
現時点で俺の所属は地球防衛軍(Safety・Earth)、軌道エレベーターSTT04支部、BP理論試験運用テストパイロット候補生、KR専攻科所属となっている。
KR専科は地球防衛軍(Safety・Earth)の教育機関の一つであり、俺の所属は一応SEと言う事になる。そうなると、有事の際には戦力として任務に従事する必要が出てくる。もっとも今の過疎化した地球だと、スペースデブリの撤去やテロの対処くらいだが。そう言った事に迅速に対応する為にも、俺達KR専科の生徒は様々な訓練を行う必要があった。
そのKR専科での様々な訓練内容は、SEで主に扱うKRの操縦方法や、火星と地球を結ぶ星間航路船の乗組員としての知識、軌道エレベーターの管理運用に関する技術など多岐にわたる。
本来は生徒の要望に従って、将来就きたい職種に応じた学科に分けられるはずだが、現在生徒は最優先でKRの操縦過程に送られる。
理由の一つとして、火星圏で新たに提唱されたBP理論に早期順応させる為と言うのがある。このBP理論は複雑化し過ぎた旧世代の戦闘に対して提唱された物で、かいつまんで言えば、如何に戦闘行為等を簡略化するかという物だ。
地球外に生存圏を拡大した人類は、新天地の開発に膨大な時間と人員を必要とした。しかし開発の末端にしても、現場ではかなり専門的なレベルの知識や技術を必要とし、いくら教育を高度化してもそれら全てを詰め込むには現在の人類には限界があった。しかし加速する人類の宇宙進出を前に、優秀な人材が出そろうのを待っている余裕はなかったと見える。
その為に発展した技術が、人類の負担を如何に減らすかという分野だ。
まず技術に関しては、基本的な動作のオート化、複雑な操作を要する物に関してはAIの搭載が施され、人が担う負担を極力減らすような工夫がなされるようになった。現在火星の工業はほとんどが無人機で行われていると聞く。
人が操作する物には、各種機械の操縦系統を統一するという案がとられた。その為現在火星で使われている搭乗機の操縦システムはそれ一つで、自動車から艦隊司令クラスの戦艦まで操縦可能というほどに高性能な操縦モジュールとなっているらしい。
そして知識に関しては、ネットワーク[ネビュラ]が開発された。これは軌道エレベーターの統括システムではあるが、多機能端末を用いる事でいついかなる時でもその膨大なデータにアクセスする事が可能となっている。[ネビュラ]は地球各所に設置された機動エレベーターを全て統括する上に、遥か彼方の火星に存在する同様のシステムともリンクしているらしい。ゆくゆくは人類の生存圏を全て張り巡らせる膨大な、それこそ星雲規模でネットワークを構築するつもりなのだと言う。
これら二つの技術を組み合わせたものがBP理論と言う訳だ。より少ない人員でより大規模の部隊を。しかも可能な限り構成員の成熟を待たなくても行使出来る精鋭を。
その理論の試験要員として選ばれたのが、恐らくは俺達KR専科の生徒であろう事は疑う余地も無い。
無論火星圏や現在開発途中である木星圏に就きたい俺達としては、将来それらの現場で使われるであろう技術体系に早めに慣れて置く事は利点以外の何物でもないので文句は無い。将来的にこれらの技術を導入した際の、不具合や問題点の発見に役立てると言うなら本望だ。
KR専科が軌道エレベーター直下にあるのも、前述の[ネビュラ]ネットワーク、そしてBP理論を試験運用する上で一番便利な場所だったからだろう。そう考えると人類にとって、軌道エレベーターがまだ重要な拠点である事がうかがえる。
しかしだ。いやだからなのか。
この任務がSE側からの提案か学校側からの提案なのかは知らないが、いくらなんでも色々な事態を想定過ぎなんじゃないかと思う。
雑多な思案をしている内に、任務開始まであと3分を切った。
俺は身体を弛緩させて、咄嗟に動けるように準備を整える。
〈間もなく第134号作戦開始時刻です〉
通信から、1番機ナビの声が入って来る。
コクピット内の全天周囲モニターには格納庫の内壁と、隣接するKRⅢ(ナイトラウンダー)-F03aが窺える。俺の乗る4番機と同様に、KR各機は手足を装甲内に格納した航行形態でKR用アームに固定され、格納庫内に固定されている。
今回のドッキリビックリ装備は何と言っても機体の後方に聳える大型ブースターだろう。この増設されたブースターはKR本体よりも大きく、本体とは別の燃料タンクと駆動系が搭載されている。これはKRの理論上最高速度を出す為の装備であり、今回の任務ではこの装備が重要な役割を持っていた。
〈じゃそろそろ任務の最終確認と行くか〉
1番機パイロットこと通称委員長が通信で呟く。それに合わせて各員が一斉に口を開き始めた。
〈じゃ任務概要からね、今回のターゲットは軌道エレベーターSTT04に向けて発射された大気圏外軌道型弾道ミサイル[コルヴァズ]の阻止、です〉
鈴の音の様に響く声音で、任務内容を告げるのは4番機ナビの観言だ。
〈今時ミサイルってもなー〉
この不満気な声は3番機パイロットのフレックス。確かにKRが戦闘の主流になりつつある今、ミサイルなどの遠隔兵器はほとんど意味をなさなくなっている。
〈ミサイルにはミサイルで対抗したらいいんじゃないのか?〉
2番機パイロットも同じく不満気な様子だ。
KRに大型のブースターを取り付けた上に専用の輸送機に押し込められて満足に動けないまま、俺達パイロットは作戦開始までただひたすらに待つばかり。不満は募るばかりだ。
〈ミサイル[コルヴァズ]は、弾頭部分にKRを搭載しているので迎撃装置などでの撃破は不可能……〉
〈その為のF03a装備ですのよ〉
3番機ナビと2番機ナビが続けて説明を補足する。
〈えっと、つまりこれからあと2分後に付近を通過するミサイルに対して、全員秒速7km以上まで機体を加速させて接近、ミサイルの外壁に取り付いて、こちらのハッキングの中継を行って貰います、こちらはその間にミサイルの機能を停止させるって流れね〉
〈ミサイル接近から、軌道エレベーター到着までは約10分、それまでに止められなければ作戦失敗です〉
〈ミサイルの全長500mで直径も30mはありますわ。推定質量15万トン、その上装甲と多弾頭ミサイルまで内蔵、ほとんど宇宙船ですわね……下手に爆破しても破片が被害を与えますの。横着せずに手動で止めましょうって事ですわね〉
今回の任務は超高度を進行する巨大ミサイルの迎撃。もし直撃すれば軌道エレベーターは半ばから圧し折れる事は間違いない。しかしこんな非現実的な武装を引っ張り出すテロリストが居るかね実際?
〈KRのF03aでの再大加速はもって5分、それまでにミサイルに取り付かれなければその時点でゲームオーバー〉
ナビゲーターチームが続けざまに情報を提示して来る。ここまで大掛かりな準備の癖に5分で決着が付くと言うのも、不満の一つである。
〈相手側もこちらを妨害してくることが予想されます、今回の装備は今まで以上に小回りが利きにくいので各自、機体間距離に気を付けてください〉
最後にナビゲーターチームのまとめ役、1番機ナビが優しい言葉で締めくくる。やはり副委員長の優しさは癒されるものがある。緊迫した雰囲気がほんの少しだけ和らいだ気がした。
〈ハッハァ、秒速7kmで激突したらいくらKRでも木っ端微塵だからねぇ〉
それを台無しにするうちのエンジニアの芦屋。安らぎを返して欲しい。
[アルカの手記-021]
「そう言えばふと思ったんだがな」
〈様々な事に疑問を持つ事は良い事だと思います、それで何でございましょう?〉
「こやつらは何時も何と戦っておるのか」
〈ええっと資料によりますと、他のクラスと競っておられるようですな〉
「何と相手もちゃんと人なのか!」
〈そうでございますな、今回の対戦相手はBクラスとの事でございますな、他にもまだ戦ってはおりませんがAクラスもあるとか〉
「……漠然とした社会悪とか必要悪といった抽象的な物と戦っている訳でも無かったのか」
〈それらは機動兵器で倒せるモノでもありますまいに〉




