[Mission-017]
前回までのMission!
謎の異星人兵器の戦闘に巻き込まれた昴流であったが、何とか武器を展開して攻めに転じる。
しかしこちらの攻撃は謎のバリアーによって阻まれてしまった。間髪入れずに放たれる敵の光線、果たして昴流の安否や如何に!
[Mission-017]
視界が閃光に眩んだ。
やられた、と思った。
しかし良く目を見開くと敵の放った光線はこちらの機体が展開した粒子力場によって防がれていた。
「こっちにもバリアーついているのかよ」
『当たり前だ、機星をなんだと思っている!』
だからそういう機能は事前に伝えておいてくれと言うに。
『機星同士が戦う場合、互いにS粒子を削り合い動けなくなった方を負けとする習わしがある』
宇宙服は宇宙服で、後ろで偉そうに講釈たれて。そのうち背中に当たる二つの膨らみ鷲掴みにしてやろうかと野望が疼くのだが、今は戦闘に集中しなければいけない。
「要するにエネルギー切れを狙えって事か」
『Cの光が消えた時、機星の敗北は決する』
「もうちょっと分かる言葉で頼む!」
互いの攻撃はバリアーによって弾かれる。少なくともバリアーが健在な限りまともなダメージは与えられないようだ。逆に言えばバリアーが無ければどちらの攻撃もまともに当たればただでは済まないって事か。
バリアーの燃費がどれほどかは知らないが、自動的に展開される仕様上、攻撃より消耗するって事は考えにくい。如何に攻撃を無駄撃ちさせるかが決め手となるだろう。
〈何だか動きがいいっスねぇ、もしかして操縦スミスに変わりましたっスか? でも攻撃権限の無いサーヴァントじゃ私には勝てませんよ!〉
敵は勢いを付けて尻尾先を突き付けてくる。刃での迎撃が間に合わず、辛くもバリアーが攻撃を弾いた。なるほど物理的な攻撃なら一方的にバリアーを消耗させられて消費がいいのか。
「こっちも物理攻撃何かないのか!?」
機体を左右に傾けて尻尾の刺突を何とか避ける。しかし相手はこちらと違って蜥蜴型だ、重心を安定させた状態で無数に尻尾を繰り出してくる。流石に全てを避け切れずいくつかはバリアーではじくも、このままでは押し負ける。
『誇り高い第9機星に野蛮な攻撃手段など無い!』
宇宙服は誇らしげにそう宣言した。
いや同郷の敵が思いっきり物理攻撃して来てるんだけどっ!?
物理攻撃が野蛮な攻撃とは言うが、粒子で形成された刃はどうなんだ実際?
〈ほらほらほらほら、いい加減投降するっスよ! こっちも無暗に傷つけて後でミストに怒られたくないんスからね!〉
おどけた口調をしつつも、敵の攻撃は正確で強烈だ。何とか回避しても尻尾の先から放たれる光弾がある為、反撃の糸口が掴めない。回避に専念すればじり貧、無理に反撃しようとすれば光弾を受け、こちらの消耗が増加する。
「くっ、他に武器は無いのか!?」
『何と情けない、第9機星はいかなる時も己の刃一振りで戦況を切り開いていったのだ、貴様も戦士の一人ならば、己の機体と剣を信じて見せよ』
だから背後で偉そうに無茶言うなっての。
「攻撃がバリアーに弾かれる以上手も足も出ねぇよ!」
『ふむ、そう言えば先ほどから何故剣を抜かなぬのだ?』
「え?」
『いくら第9機星至高の一振りS・ソードとはいえ、流石に柄ではまともな攻撃は期待出来ぬぞ』
まさか。
宇宙服の言葉に、俺は自律腕部挙動追従を起動させる。そして自機の方腕から伸びる刃を、恐る恐るもう片方の手で掴んだ。トレーサーにリンクした腕が、確かな感触を伝えてくる。
「だから……」
そのまま粒子で形成された刃を掴んで引き抜くと、その先にさらに粒子密度の高い刃が伸びる。握る椀部に損傷はない。
「そういう事は……!」
完全に引き抜くと、片手には丁度ショートソードクラスの刀身を持つ剣が握られていた。
「先に言えっての!」
俺は片腕を機体の腕の動きにリンクさせる。先ほどの腕から伸びる刃と違い、刀身の厚みや重心などが感じとれた。掌に疑似的に腱を握る感覚がフィードバックされたのを確認して、剣を構える。
『対機星戦用の第9機星のS・ソードならば第8機星のS・バリアーをたやすく切り裂けるであろう!』
そうかい、ならその言葉信じてみようじゃないか。
〈……何スか? その構えはスミスじゃない? 姫様でもないっスね? お前は一体誰っスか!?〉
敵の機体が尻尾を構えて突っ込んでくる。敵の攻撃は長くて鋭い。おまけに胴体から生えていて独立して動く為に機体の重心などの影響を受けない。攻撃の際にバランスを崩さないというのは接近戦の際に非常に大きなアドバンテージだ。
しかし、重心の影響を受けないという事は、一撃が軽いという事でもある。的確な狙いで繰り出される尻尾の突きを、剣の背で受け止め、そのまま軌道を反らすように弾く。動作をなるべく最小限に、機体のバランスを崩さない様にして一歩、二歩と確実に距離を縮める。
『良いぞ、それでこそ我が戦士だ! さぁ我に勝利を捧げよ! この勝利には重要な意味がある! 我が覇道の貴重な一歩としてのな!』
後ろの宇宙服を無視して、操縦に集中する。
〈このっス!?〉
弾いた尻尾の切っ先がこちらを向く。先ほどまでならここで大きく回避を余儀なくされたのだが、刃を信じるならばここでさらに一歩踏み込むしかない。
「おおおおおおおっ!」
剣を直角に立てて、相手の尻尾へと突き出す。剣の切っ先が、敵の光弾を弾き四方へと拡散させた。
〈な!? Sシューターを切ったっスか!?〉
流石に光弾は重く、刃が押し返される。俺はあえてそのまま押し流される勢いを殺さずに、機体を反動で回転させ、剣を敵へと振るった。その一撃は敵の展開するバリアーによって弾かれた。
〈させないっスよ!〉
敵の尻尾が突き出される。
機体を軽くバックステップさせてその一撃を回避した後、素早く尻尾を足で踏み込み動きを制する。地面に向けてブースターを起動、敵が尻尾を引き抜くと同時に機体を空中に浮かび上がらせる。刃を翻して、上空から敵の懐に向かって刃を向ける。
〈何なんスか! 誰なんスか!?〉
敵はこちらを迎撃する様に、機体を軽やかに宙返りさせて尻尾を鞭の様に振るう。それはまるで刃の様に虚空に弧を描いて残滓を残した。俺は焦らずに、操縦桿を強く握る。ブースターを吹かすのは一瞬で言い。下に向けて噴出させ、落下のタイミングを一瞬遅らせる。それだけで、敵の攻撃は掠りもしない。
「お前さっき重要な戦いって言ったな?」
さきほど後ろの宇宙服は、この戦いには重要な意味があると言っていた。
『ああそうだ、全ての事には重要な意味がある』
自信満々の宇宙服に、俺はあえて告げた。
「それは間違っている」
そう、全ての事に意味など無い。敵が目の前にいる事も、俺が此処に居る事も、全ては単なる偶然でしかない。そして。
「戦いに意味なんか無いさ」
そのまま上空から敵に強襲を仕掛ける。振り下ろされた剣が、敵の展開したバリアーに触れる。夥しい粒子を迸らせて、今度こそ剣は敵のバリアーを切り裂いた。
「これで!」
『決まりだ!』
剣はさらに敵の尻尾を切り付け、断ち切る。
[アルカの手記-017]
「まったくS兵器も知らんとはこれだから地球人は」
〈全くですな、我らにとってS粒子を用いた技術などはもはや日常にあって当たり前の技術でございますのに〉
「うむ、ソラン兵器から、ソラン動力炉、ソラン推進機にソランモーター、ソラン通信機にソランマグカップと全てがS粒子で賄える我等の生活水準の高さを地球人も見習って欲しいものであるな」
〈まぁもっとも乱用が過ぎたのでこうして侵略作戦を行っているわけでありますが〉
「S粒子を使わぬのに大量に保持している地球人が悪いのだ! そんなにあるなら少しくらい分けてくれても良かろうに」
〈そうは言いましてもな、例えば姫様。両手に一杯果物を抱えているとしましょう。それを譲って欲しいと言う人が現れたらばどういたしますか〉
「ふん、愚民共が誰にものを聞いておるか知らぬようだな! 先ずはその不躾な口を縫い付け、首を垂れる所から始めよ! と返すかな」
〈……それ以前の問題がございましたな〉
[続く]




