[Mission-016]
前回までのMission!
異星人の操縦の下手さに耐えかねた昴流は、代わりに操縦することを申し出る。
異星人の兵器で初めての実践、どうなる昴流!
[Mission-016]
えっとこれが操縦桿。ブースターペダルと、火器制御。モニターは良好、各種の計器はよく読めないが表示画像で何とか理解。普段乗っているKRを思い出しながら、この機体の操縦を一通り把握する。
〈おやおやぁ? まだ抵抗する気ッスか?〉
オートバランサー問題無し、姿勢制御は機能している。所々で見た事が無いシステムはあるが、KRと同じ感覚で操縦は可能なようだ。
「ところでさ」
俺は操縦席で、同じ席に座る宇宙服に声を掛ける。
「何で一緒に座ってるの?」
宇宙服は俺の後ろで、まるで二人羽織りの様に密着し、操縦桿などに手を合わせている。
『仕方あるまい、この機の操縦には生体波動の登録が必要なのだ、私が重なるように触れていないと操縦は出来ない』
つまり密着する事で、俺をこの宇宙服とシステムに誤認させているって事か。
それは良いんだが、背中越しに宇宙服の胸の膨らみが伝わって来て集中できないとは流石に言えないな。初見の機体操縦に集中しなきゃいけない状況なだけに、一概に幸せとは言い切れない。
〈姫様! このような事私は認められません!〉
『五月蠅いぞスミス、もしお前がフリスと戦ったとして勝てる見込みはあるのか?』
〈それは……しかし、その原住民も同じではないですか!〉
『こいつは私の戦士となった、ならば負ける事などあるまい、お前は大人しく合流を急げ』
あまり後ろからプレッシャーを与えないで貰いたいな。その過剰なまでの期待には何とか答えてやりたいが。ただでさえKRとは癖も特性も違う機体で、恐らく軍人級の相手と戦うってんだから物凄く無茶な要求としか思えない。
「遊んでいる余裕はなさそうだ」
『何か言ったか?』
「いやぁ、愉しくなりそうだと思ってね」
とりあえず正面に敵に合わせてターゲッティングを設定、試運転とばかりに操縦桿を軽く左右に操作する。それに合わせて、機体は滑らかに左右に揺れるが、モニターは真っ直ぐ敵機を正面に捕らえている。
〈中々いい動きっスね、それじゃ精一杯踊ってくださいなっス!〉
敵の尻尾先が再び光る。
俺は操縦桿を軽く斜め前方に倒しながら、スースターを起動させる。イメージとしては、敵の攻撃を横に軽く回避しながらブースターで加速しつつ捻り込むように敵に接近する、はずだった。
思惑通り敵の光弾は回避出来た。機体は踊るように軽やかにステップし敵の光弾を回避した後、ブースターの恐ろしいほどの加速を受けて一瞬で敵機の横をすり抜けて背後の木々へと突っ込んで転倒した。
『おおうっ!?』
「ぬおわぁぁ!?」
機体の転倒で操縦席が傾き、宇宙服はバランスを崩して悲鳴を上げて俺に寄りかかる。俺はその際に宇宙服の胸が押し付けられて悲鳴を上げた。意外に大きい。
『貴様動かせるのではなかったのか!?』
背中で宇宙服が文句を垂れる。
「くっそ、こんなに加速が強いとか聞いてねぇっての……!」
俺は慌てて自律腕部挙動追従で機体の腕を地面に着けて、脚部の機動補助ブースターだけで受け身をとるように起き上がらせる。
どうやらこの機体、KRの二回り以上も大きいくせに、機体重量は半分以下、機動性能に関しては何倍も上であるようだ。KRの感覚で操作すると機体性能に振り回されて操縦が追い付かない。不本意ではあるが、少々機体性能を殺して動かす必要があるようだ。そうなると。
「この機体に何か武装はないのか!?」
機体性能を生かせないとなると、流石に武器が欲しくなる。敵の様な飛び道具があれば多少は戦えるんだが。ざっと計器類を見渡すが、武器らしきものは見当たらない。戦闘を想定した機体らしいのに武器を持っていないという事は無いだろう。
『第9機星だ』
「あん?」
機体管理画面の中から、武器らしきものを探していると背後で宇宙服が呟いた。
『この機体では無い、第9機星ナイト[ミスト]が機体名だ』
略称はソラ・ソードかナイトかミストと悩むところだな。
「で、このナイトミストには武器は無いのか?」
光学兵器で武装している敵に、素手で殴り掛かるのは流石に無茶だ。
俺の必死の問いかけに、宇宙服は何故かもったいぶった口調で告げる。
『機星の技の使用には、我等皇機種の承認を必要とする――』
宇宙服は俺の肩越しに腕を伸ばして、正面に敵に掌を向ける。
『――第9機星の守護剣士よ。夜霧の剣よ。その観えざる刃と絶断の太刀で、我が先を閉ざす霧を薙ぎ払え!』
宇宙服の言葉と共に、手の甲に何やら複雑な文様が浮かび上がった。
それと共に、コクピット内全体が伝播するように光り輝き、モニターに宇宙服の手に浮かんだものと同じ文様が大きく浮かび上がった。
『皇機承認!』
妙に力のこもった宇宙服の言葉の後に、唐突に機体椀部に[S・ソード]という機能が開示された。名称からして近接兵器だろう。
俺は迷わずその武器を展開させる。
すると機体の椀部装甲が展開し、敵の尻尾先にある様な結晶状の機関が露出する。眩しい光が結晶から放出され、迸る光子が直線状に伸びて、輝く刃を生成した。
「おいおいおい……ビームサーベルとかどこの宇宙世紀だし!?」
『サーベルでは無い、これはS・ソードだ』
機体の椀部装甲からは、不思議な粒子によって形作られた発光するブレードが展開されている。
〈おやおや本格的にやる気っスか、でも手加減はしないっスよ!〉
今度は敵の方から、尻尾を槍の様に構えて突進してくる。
「素振りくらいさせて欲しいってのに!」
機体の軸をずらして、敵の尻尾の突きを躱す。機体のオートバランサーが傾いた姿勢を制御し、転倒せずに敵の突進を受け流した。
敵は眼前で踏みとどまり、避けられた尻尾を素早く引き戻してすぐさま次の刺突を繰り出してくる。踏み込みからの連続突きを、一撃は再び機体の軸をずらして、二撃目は手の刃で薙ぎ払った。
切り払うと同時に、激しい衝撃と粒子が迸る。その衝撃は凄まじく、敵の尻尾を弾いた衝撃で機体が後方に押しやられたほどだ。
俺は操縦桿を倒し、一瞬だけオートバランサーをオフにする。その結果機体は大きく前傾姿勢に傾いていく。地面に倒れ込む寸前にバランサーとブースターを起動。転倒の反動を乗せた急加速、さらに腕を伸ばして刃を刺突の構えで突き出す。敵が状態を立て直す隙を与えず、流れるような動作で刃を振るう。刃は敵の懐へと達し、しかし胴体に突き刺さる直前に、謎の粒子力場に弾かれてしまった。
「何だ今の!?」
一瞬敵が光子壁に包まれて、こちらの攻撃を防いだように見えた。
『S・バリアーだ』
そう後ろの宇宙服が冷静に述べる。
いや、バリアーとか装備されてんなら最初にそう言っておいてくれないと。文句の一つでも言おうと思ったが、敵の尻尾先がいつの間にか展開しこっちを向いていた。
結晶機関から光線が迸り、刹那、画面が真っ白に塗り潰される。
[アルカの手記-016]
「まったく、折角の第9機星だと言うのにあやつ目は全然使いこなせてないな!」
〈全くですな。偉大なる400年闘争では我らの軍の先陣を切って1000の敵影を一瞬にして葬り去った伝説の機体が泣いておりまする〉
「まぁ私ですら使えなかったソラ・ソードを使用した事位は褒めてやるか」
〈それ基本兵装でございますが〉
「何だと!? 私は使えた事が無いぞ!」
〈それは当然でございます、機星の兵装はどれも強力ゆえ、姫様の危なっかしい操縦では大事故につながりかねないので姫様の搭乗時には大抵の兵装にはロックが〉
「そのような事は聞いていないぞ!?」
〈あーそもそもですな、兵士を束ね指揮する立場の姫様が何故武装を扱わなければならないのでありますか、そう言った事は一般兵に任せ姫様はそーんと構えていればよいのです〉
「ま、まぁ確かにな!」
〈しかしいざと言う時、敵兵が懐まで迫ると言う危機もゼロではありませぬな、その時の為にもぜひ戦闘の稽古をば〉
「あー明日な、明日やるぞ気が向いたらな」
〈……ですからロックが掛けられるのでございます〉
[続く]




