[Mission-012]
前回までのMission!
外周コースを外れたせいで、森を彷徨う事になった昴流。歩き続けて辿り着いた場所はクレーターが出来て何やら怪しい雰囲気が漂っていた。
案の定怪しい人物に襲われてしまう。どうする昴流!
[Mission-012]
「ええっと……」
先ほど翻訳ツールと言っていた事から、こちらの言葉も向こうに通じていると思っていいのだろう。
『驚くのも無理はあるまい、我等は木星手前で足止めを受けているはずなのだからな、我がこの大地に降り立った事実を受け止め切れない心境は察しよう』
妙に勝ち誇った態度で宇宙服は話を進める。しかし木星といったか? 木星と言えば最近開発が始まったばかりの人類進出の最前線のはずだ。
『フハハハハ、所詮我等[カレント・スフィア]の前に貴様らは跪くしかないのだ!』
今度は妙に悪役な声音で高笑いを上げはじめる。
情緒が不安定なのだろうか。
しかしこの物言いから推測するに、友好関係にある味方と言う訳ではなさそうだ。少なくとも、C.W.O.Uや地球防衛軍(S・E)とは敵対関係にあると思える。もしかしたら彼女こそが、俺達が仮想敵として訓練している相手なのではないだろうか? いや、まさかな。
『しかし何故貴様はこのような場所を徘徊している? 機星の展開した偽装地形は完璧のはずだが。よもや貴様の様な若い個体が地球の戦士と言う訳もあるまい?』
一方的に情報を提供してくれるのはありがたかったが、如何せん状況を理解するほど有益な物では無かった。ここはもう少し相手に喋らせて情報を得た方が良いだろう。
「えっと、その改めてこんにちは」
とりあえず縄はほどいた物の、縛られたままと言う体で上体を起こして、軽めの挨拶を試みる。
『フン、悠長に挨拶とは拍子抜けだな、どうやら貴様には目の前に差し迫った脅威が理解出来ないと見える』
脅威も何も、今置かれている状況からして認識出来ていないんだけどな。
「えっと、どうして俺が怯えないといけないんだ? その脅威って何の事だ?」
『ほう我等[カレント・スフィア]の名前を聞いて怯え竦まないとは豪胆だな、いやそれとも末端過ぎて知らぬのか?』
「そうね、知らないんで、出来れば教えて欲しいかなと」
どうやらその[カレント・スフィア]とやらが彼女の所属する組織の様だ。振興のテロ組織か何かだろうか。
『良かろう、無知なる民を導くのも君主たる務めだな。我ら[カレント・スフィア]は大いなる意思[スフィア]の元に集った偉大なる種族である、その目的はあらゆる問題の平定と全ての事象の観測である』
「それで、どうして遠路はるばるこんな辺鄙な地球へ?」
『フッ、我らがここに来た目的はただ一つ、この星を征服し、この星に満ちる[ソラン]を我が物とするために決まっている!』
「そりゃご苦労様です、で、言い方から推測するにあんたお偉いさんな訳?」
『無論だ、我は[カレント・スフィア]地球方面派遣旅団所属の第21番作戦指揮官補佐代理であり、さらに第三位皇位継承者である!』
よくは分からんがお偉いさんらしい。
「そういやさっき腕からビームみたいなものだしたけどさあれ何?」
『ビームでは無い、ソラン粒子を使用した歩兵携帯用のソランシューターだ』
よく分からんが未知の武器という事は分かった。
「それで俺は結局このまま捕虜とかにされる感じ?」
『安心しろ、スフィア連星協定、捕虜取り扱い条約に則り丁寧に持て成してやる、私は寛大だ。風呂にも入れてやるし柔らかいベッドも用意しよう、そして食事には肉を多めに出してやるぞ!』
何言ってんだこいつ。
「えっとじゃあ総戦力数と駐屯場所は?」
『まて先ほどから私ばかりが一方的に話しているぞ!』
チッ気づかれたか。
もうちょっと色々と情報を引き出したかったんだが。
奴のいう事は俄かには信じがたい、しかし腕からビームを出したりと全てを冗談と切り捨てるわけにはいかない証拠があるのも確かだった。
『さぁ色々と貴様の事を話して貰うぞ、まずはこの持ち物からだ』
宇宙服は先ほど漁っていた俺のリュックを拾い上げると、無遠慮に手を突っ込む。
『そうだな、よしこれについて知っている事を話して貰おうか!』
そう言って宇宙服がとりだしたのは、多機能端末だった。
これは地球圏防衛軍(SE)から支給される情報端末である。軌道エレベーターやSE関係のシステムを制御している統括ネットワーク[ネビュラ]へアクセスする為の端末であり、個人の身分証明も兼ねている。
大事な物ではあるが、別にデータは自室にバックアップはあるし、失くしても申請書類一枚で再支給されるけどね。
特徴として本体に様々なオプションを取り付ける事で、機能を拡張する事が出来るという事だ。現在は非殺傷銃に接続されており、この状態では照明、周囲のスキャン、そして対象を麻痺させるパラライズガン等の機能が追加されている。
パラライズガン機能は、出力を上げる事で大型の獣を仕留めるハンティングモードとなる事も可能で、取扱には注意が必要だ。その為不用意に触ったり安易に使用出来ないように厳重なセキュリティが施されている。
『ふむ、特にこの握りの部分が手にフィットしていい感じだな』
「あ」
宇宙服がグリップを握りトリガーに指を添える。すると。
〈正規の登録ユーザー以外の使用を検知しました、ただちに正規ユーザーに所有権を譲渡するか、セキュリティ解除コードを入力してください。もし渓谷に従わず機能を使用しようとした場合、防御機能が発動します〉
『ん、何だこれは?』
「あー……それには触れない方が」
俺の忠告に、宇宙服は全く聞く耳を持たなかった。
『ハハハ誰がその様な脅しに屈するものか! なるほどここを押されると困るのだなどれ――キャン!?』
勝ち誇った哄笑を垂れ流しながら、宇宙服は妙に可愛い悲鳴を上げて麻痺効果のある電気銃を受けて倒れた。宇宙服の着ている服が本当に宇宙服だったら効果はなかっただろうが、どうやらただのコスプレだったようだ。
しかし今時銃のセキュリティも知らないとは、一体どんな訓練を受けているんだか。もしくは本当にコスプレ姿で紛れ込んだ一般人だったのだろうか? ビームとかは予め木に爆薬を仕掛けたトリックだったりとか? そう思うと少し同情する気持ちもあるが、これ以上関わる気にもなれない。今は出来る限り遠くへ逃げるべきだろうと俺の生存本能が訴えている。
俺は奪われた荷物をリュックにまとめると、速やかに自由な明日へと目指して逃走を。
『……逃がすかぁ!?』
「く、やはり服越しだと効果が薄いか!」
声と共に宇宙服が足元にしがみ付いてくる。思ったよりも宇宙服の力は強く俺は再び地面に倒れ込んだ。
[アルカの手記-012]
「まったくこれだから地球人共は!」
〈いかがいたしましたか姫様?〉
「我の偉大さをこうも我の口から説いたと言うのに、全く恐れ慄く気配が無い!」
〈まぁ所詮は野蛮な民ですからな〉
「言われるならまだしも、自分の口から自分の偉大さを告げると言うのは結構恥ずかしいのだぞ!」
〈その様な事はございませぬ、姫様は胸を張って君臨なさればよろしいかと〉
「しかしだな、第21番作戦指揮官補佐代理だぞ、正直言って何をする仕事なのだ!」
〈ふむ、我らの指揮系統や役割分担は複雑故、姫様が混乱するのも無理はありますまい〉
「とりあえず名目上指揮をとればよいのか?」
〈さようでございます、ただし補佐官の代理でございますので上官である21名の指揮官が何らかの事情で指揮継続困難となり、その補佐官すらも指揮を放棄した場合には、姫様が全指揮を取って貰うのでございます〉
「……そのような状況が一体いつ起こると言うのだ」




