4話
部屋の中に残っているのはフィアの両親と使用人たち。
「少し、彼らにもお仕置きが必要だね。 私と彼女を引き離そうとするから。 どんなことがいいと思う、ルフス?」
彼が発した言葉は部屋全体に響き、人質になっている人たちはディーンが連れていかれ、自分はどうなってしまうのかと怯える。
「それも大切ですが、彼女を探さなくていいのですか?」
「大丈夫、もう見つけてるから。 この屋敷からは出ていないよ。 彼女は運良く私の部屋に飛ばされたみたいだから。」
「そうですか。 でしゃばってしまい、申し訳ございません。」
「別に気にしなくていいよ、ルフス。」
「はい。 ご寛大なお答え感謝いたします。」
淡々交わされる2人のやりとりに不安を覚える人質たち。
これからどうなるのか分からない。
だが、外に逃げきれたと思っていたフィアはまだ、彼ら、化け物の屋敷の中に居ることから自分たちが身を呈して守ることはできなかったと悔いてはいた。
「この人質たちには暫くごはんを食べさせなくていいよ。 1人人質が残っていれば何人殺してもいいから。 ただし、生きるか死ぬかのギリギリでごはんをあげたり、お水を飲ませてあげたりしなよ。 そっちの方が面白そうだからね。 あとは、ルフスに任せたよ。」
ルフスは部屋から消えていく自分の使える王様に御意と頭を垂れた。
その後、王様の言葉を実行し、人質達は数を減らしていくこととなる。
暗い部屋はさっきの明るい部屋とは正反対で、誰かの部屋みたいだった。
(ディーンたちは無事かな? 私はどうすれば……。)
答えの出ない悩みに囚われる私は、勇気がない者だと思う。
だって、お母様もお父様も使用人たちもディーンも私のことを思って行動してくれていた。
本当は怖かっただろう。
人間が現在、どうなっているかを目の前で見ていない私より彼らは知っているはず。
人間がどんなことをされていったかを……。
眠っていた私より分かっているのに、私のために行動してくれた。
私も彼らを助けるために自分のことを捧げることができるかな?
答えなんて、もう出ているのかもしれないね。
私は彼らを助けたい。
だから、自分が犠牲になる。
彼らが自分自身を犠牲にして私を助けようとしてくれたように今度は私の番。
なんて、綺麗事だろうと私は小さく笑った。
滑稽な自分がおかしかった。
暗闇から現れた彼。
漆黒の髪は闇に同化し、真紅の目は不気味に輝く。
「フィア、少時間の逃亡は楽しかった? ねぇ、交渉をしようなんて思ってももう無駄だよ。 君はあの時に人質の彼らを逃す手段を自ら手放してしまったのだから。」
フィアの目の前に立ち、彼女をもう逃さないようにと強く腕を掴む。
彼女は痛みに顔をしかめたが、彼を見返した。
「私は覚悟を決めました。」
「へぇー。 それは……。」
「あなたのものになるという覚悟です。 でも、人質の彼らを生かし、彼らが生きるのにあたって必要最低限の生活を保障してくれなあのなら、私はあなたのものになんかなりません。」
フィアのうでを掴む力が強くなる。
「虫が良すぎると思わない? 君は最初から私の下にいる存在。 対等な交渉は私が認めてこそできるものだよ。 さぁ、おしゃべりはここで終わりだ。」
フィアの腕を力強く引っ張り、ベットの上まで連れていく。
彼は彼女のお腹に手を当てなでた。
「な、に?」
「大丈夫だよ、フィア。 恐れないで。 私と君の子が生まれるだけだよ。」
「えっ? お腹が膨らんでいないのに赤ちゃんがいるはずありません。 まして、あなたとの子供なんていりません。」
「それは酷いことを言うね。 私との子供を産めないのなら、お前の大切なものを助けるのなんて、夢のまた夢の話だね。」
彼は私の頰に優しく手を添える。
そして、私と目線を合わせた。
「ほら、対等な交渉を望んでいるフィアが断るの? フィアのことを身を呈して守ってくれた、彼らは死んでしまうかもしれないよ?」
「……。」
私の覚悟は揺らぐ。
この人のことを拒絶している。
心の底から。
嫌だ嫌だと悲鳴をあげて……。
でも、私は私の守りたいもののために心を殺そう。
「わたしがあなたとの子どもを産めば、彼らを助けるというわたしの望みを少しは聞いてくださいますか?」
「やっと、前向きに考えてくれたね? それくらいなら別にいいよ。 君と私の子はさぞ可愛いだろう。」
でも、やらなければならないことがあるから、まずはそれからだね。
着々と進んでいく。
彼女を手に入れることを、彼女が自分から離れられないように縛り付けることを……。
私は彼女の囲い込みを始める。




