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46話 「……どうして、あんな場所に戻らなきゃいけないの」

 僕らは、この世界から出られない。

 つまり、生死の境をさまようのがどんな原因であろうと、僕らは寿命が来るまでは死ねない。

 いや、死なない。

 なら。

「僕が迎えに行くまで、猿渡さんにこの世界に居て貰えば、僕は確実に間に合うじゃないですか」

 そうすれば、僕の到着が遅れたせいで間に合わなかった、なんてことには絶対にならない。

 猿渡さんの言い方だと、この世界に縛られるか縛られないかは変更ができそうだ。

 どうして猿渡さんにだけそんな権限があるのかは分からないけれど、そこは今はどうでも良い。

「無理なの」

 ぴしゃり、僕を遮る猿渡さんの声。

「私の任意で、皆がこの世界に居る、って訳でもないから」

「え、え?」

 違う、の?

「『死にかける』なんて状況の後でも、恐れずに生きていこうとする勇気。それがないと、ここからは出られない」

 空元気や偽りじゃダメだしね、と続け、遠い目でどこかを見る猿渡さん。

「……だったら、なんで荒谷はまだここに居るんですか?」

 その話が本当ならアイツなんてもうとっくに生還できているはずだ。

「まだ怖がってるから、なのかな。多分。……首吊り自殺の未遂、って後遺症が酷いらしいよ?」

 詳しくは知らないんだけど、と笑う猿渡さんの声はどこか悲しげ。

 猿渡さんはまだ幼い、ってさっき言ってたっけ。

 なら普通、後遺症に詳しかったりなんてしない筈だ。

「スミレちゃんは、何度も、何があっても必ず生還するのよね。……どんな目にあっても、また希望を抱いて」

 アリス。

 何度も消え、何度も現れる。

 それも、アリスだけが特別なんじゃなくて。

「……猿渡さんは、何がそんなに怖いんですか」

 今までの話からして、猿渡さんは何かを恐れている。

 何か、って何?

 それは知らない。

 だから聞きたい。

 僕は命知らずだ。

 だから、猿渡さんと帰れないなら僕は帰らなくても良い、なんて考えたりもする。

 でも、僕は、猿渡さんが死ぬまで死にかけ、なんて嫌だ。

 だから。

「……どうして、あんな場所に戻らなきゃいけないの」

 猿渡さんが拒絶を重ねる理由も知らずに、踏み込んでしまっていた。

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