45話 「養いますよ」
「それで、僕たちはずっとここに居る、ってことですか」
「……まぁ、スミレちゃんみたいに『何故か帰れる』人もいるし、『海の果てまで行けば帰還できる』も多分本当なんだけどね」
もう一度、人生をやり直したい。
そう思う荒谷は、日々『調査』と称してどこかへと行っている。
その『どこか』は恐らく、海の果て。
何故なら、そうでもしないと、戻れないから。
他に、自分の意思で戻る術がないから。
なら。
「猿渡さん、なんか色々と言いましたけど、結局『自力では帰れない』ってのは変わらないじゃないですか」
あいにく僕は、必死になってまで帰還したい訳じゃない。
なら、どちらにせよ、向こうの僕が生き返るか死ぬかするまではここから出られない。
なら、猿渡さんがどんな細工をしようが、大した問題じゃないんじゃないか?
「前にも言いましたけど、僕は自力で帰れたとしても、猿渡さんと一緒にじゃないと帰りませんよ」
ここに猿渡さんを残して自分だけ生きる、なんてゴメンだ。
「でっ、でも、私には【うずまき】があるから、出られない……っ!」
「だったら、【うずまき】支店を作るために、まずは向こうに戻りましょうよ」
猿渡さんの、夢。
自分の店を開く。
それは、叶った。
でも虚構なんだ。
苦労なんてない。
願っただけの店。
他力で作った店。
それは自分の店?
それは違うだろ?
だから。
「僕も頑張って、猿渡さんのサポートをしますから」
本来の猿渡さんは、もっと幼い。
だったら、手助けをすれば良い。
「猿渡さんが【うずまき】支店を開くまで、僕が猿渡さんを養いますよ」
言うは易し。
行うは難し。
でも、言わなきゃ始まらない。
でも、やらなくちゃいけない。
猿渡さんも、前に言っていた。
――生死の境、なんていつまでもいるべき場所じゃない。
だから。
「僕と一緒に、戻ってはくれませんか」
こんな、プロポーズ染みたことも、言う。
勢いじゃない。
虚構じゃない。
本当なんだ。




