36話 「違う」
「やっぱりいないか……」
がららっ、と【うずまき】の扉を開いてみて、果たしてそこに猿渡さんはいなかった。
「いや、でも、ここは【うずまき】だ」
外から見ても、そこまで広くはない【うずまき】だ。
上の階に行ったことがなくても、猿渡さんを探すのはそれほどの難題でもないだろう。
……多分。
「勝手に上がるの、なんか抵抗あるなぁ」
と、僕が呟いたのは階段の前。
上の階へ続いている階段の前。
上がったことのない階段の前。
「……でも」
上がるしか道がない階段の前。
猿渡さんへと続きし階段の前。
覚悟を見極めている階段の前。
「上らなくちゃ、猿渡さんに辿り着けないんだ」
僕は、上がる。
そして、少しして、二階へと辿り着く。
三階へも階段が続いているが、構わず二階の探索を始めた。
果たして。
「ノート……」
僕は、書斎のような部屋にて、やけにボロボロなノートを見つけていた。
羊皮紙、と言うやつなのだろうか。元は高級品であったことがうっすらと感じられる代物だ。
……羊皮紙、見たことないけど。
「字、薄っ……」
幾つかページを捲ってみるも、日に焼けてしまったせいか全然読めない。
鑑定士とかなら簡単に解読できるのかもしれないけど、僕は鑑定士でも名探偵でもないのでお手上げ。ゲームオーバー。
略して言えばお手上げームオーバーだ。
「なーんて、ふざけたダジャレを言ってる暇もな」
沈黙。
くるっ、と踵を使ってUターンし、階段の方へと振り返ったその時。
僕は、つまらない独り言を思わず停止させていた。
だって、そこには、居たのだ。
僕が探し求めていた人物、猿渡久遠。
「どうして、ここ、な?」
ではなく、現さんが。
「ここでなんで現さんが来るんですかそこは猿渡さんと僕がバッタリ出くわす展開じゃないのですか!?」
「……エンターテインメント、は、予想、を、裏切り、期待、に、答える」
「僕の行動はエンターテインメントじゃあないだろーが!」
そんなに御大層なものじゃないよどーせな!
「《創造捏造》、なら、店長、の、前、に、まず、こっち、が、出番、だろう」
「……つまり、僕の邪魔をする為に、ここにわざわざ来たの?」
「違う」
断定。
いつもみたいに、ぶつ切りじゃなくて。
一文節で、簡単に、単純に、明確に、単刀直入に。
「頼み、が、ある」




