21話 ≪創造捏造≫
「すいません、洋服借りましたー」
タオルで頭を拭きながらそう言いながら、【うずまき】の入り口まで戻ってきた僕が見たのは。
「……、……、……、……、……、……、……、……、……、……、……、……、」
無言で、ガリガリと紙にペンを走らせる、現さんだった。
真剣。
その二文字以外に、今の現さんの顔つきに似合う言葉を僕は知らない。
そう思わせる程に、今の現さんの表情は中々絵になっていた。
さっきまでは、あんまり明るいとは言えない顔つきだったからなぁ。人の事は言えない、かもしれないけども。
「あ、服のサイズ大丈夫だった?」
「えぇ、大丈夫です!」
胸部のゆるみ以外は――とは思っても言わないでおく。
「……って、何で荒谷の首根っこ掴んでるんですか?」
「捕まえられる時に捕まえておかないと、雅也はまた調査を始めるからね」
「なるほど」
そんなに、【うずまき】から離れたいのだろうか?
でも、荒谷って猿渡さんに好意を抱いているのでは……?
ギタリストとしてやり直す、と言う意思はそこまで強かったのか。なるほど。
「なぁ」
と、荒谷の思考回路について思考している僕に突き刺さる荒谷の声。
「え?」
「現実が帰ってきている、ってマジなのか?」
すぐそこに現さんはいると言うのに、いつもの荒谷らしくない声。
そんな荒谷の顔を見てみると、その目に宿る色は、怯え。
「何か、あったんですか?」
「答えろ!」
ビクッ! と震えるのは僕。
だけでは無く、猿渡さんも。
「悪ぃ、クオン」
と、何故か――ではなく分かりきった理由で猿渡さんにだけ詫びた荒谷は、次に僕に視線を向けて。
「アイツの……《創造捏造》には、気を付けろ」
と。
「……は?」
今、なんと?
「《創造捏造》? 何ですか、その漫画の特殊能力みたいな名前は」
生死の境では、実力次第で特殊能力を身に付ける事もできる、とでも!?
ありうる。実にありうる。
でも、そうだとすると他のメンバーがそれを全く口にしないなんておかしい、か。
なーんだ、つまりは嘘か。
期待して損し――
「本当なの」
――てないね得したねまさかこんな世界があるなんて!
「彼――現実の中には、《創造捏造》なる能力がある」
「マジのマジで?」
「マジのマジで」
ガリガリガリガリ。
声に気付かず、音は続く。




