第1話 戦闘準備から配信
配信モノ難しい。
追放されたその日のうちに俺は秋葉原に足を運んだ。とあるアイデアが浮かんだからだ。
分身で装備まで増える。
だったら一番増やすべきモノって何だ?
剣?
否。
魔導砲?
否
答えは空を埋め尽くすドローンだ。
1機でも厄介なドローンが分身で32機になったら、誰も近寄れない。
「すみません〜ドローン用のモーターはどこですか?」
そしてエネルギー源の魔石を搭載した魔弾攻撃用のドローン。これは科学と魔術の交差だ!
作るしかない!
いやーここで倉田の兄貴の30万が沁みるね〜……
ホントにありがと……あとで連絡しとこ……
「こちらになります」
店員に教えてもらうとジャイロセンサーや加速度センサーなどを買い、魔石は問題ない。荷物持ちだった頃、素材回収でかなり貯め込んでいた。
急いで電車に乗って帰った。さっそく、そこで自室で作ろうとすると、また父が配信の話をする。
「おい那由多、それ作るのも配信してみたらどうだ? 戦闘準備動画ってのも需要があるからな」
「なんで?」
「武器の手入れとか作り方を参考にする奴がいるのさ」
俺は全くの無知でふーんという反応しかできなかった。そもそもダンジョンに通用しないおもちゃ扱いされて馬鹿にされる程度が関の山な気もしてならない……
いやそう考えるな、馬鹿にされないくらいの傑作を本気で作れば良いじゃん! ネガティブになるなよ俺!
……まあ憧れの職から無職になった今日の今日で流石に出るのは空元気しか無理だがな……
そしてウェブカメラを設置して顔は映らない様に手元だけを映す。ここだけ見ると玄人の作業場感があって良い雰囲気。
ノートPCに繋いでDiveONをインストールし、登録を終えて配信タイトルなどを設定。
「配信ボタン、ポチッとな!」
配信はアーカイブとして残るし挨拶とかもするか……
ちょっと緊張してきたぞ。
【配信開始しました】
【視聴者数:0】
「どうも! 那由多の電子工作回へようこそ! 今日はダンジョン攻略用ドローンを作っていきます!」
なんか誰もみてないのに挨拶って道化師みたいに滑稽だな。あ、タイトルに何用のドローンか書き忘れた。まあ聞かれたら答えればいいか。
そう思いはんだごてを取り出して弄り始めると、1人また1人と増え、コメントがとうとう来た。
〈初見〜何用のドローンですか?〉
第一歩となる記念の初コメントが無難な物で安堵する。
「これはダンジョン攻略用の射撃ドローンですね、この魔石を動力源として魔弾のエネルギーにします」
銅線を繋ぎなら返事を返す、マルチタスクでは無いのでちょっと大変だが閲覧者がいるのは嬉しい!
と思っていると更なるコメント。
〈いいね、冒険者ランクは何?〉
〈声と手からして若いね!〉
〈魔石は足りるのか?今どきただのバッテリーじゃないだろ?〉
「そうですね〜今日で19になりました、ランクはヒヨッコなのでEです。魔石は地道に集めていたので大丈夫です!」
〈いいやん、おめでとう!頑張れよ〉
ドローンのフレームを用意して嵌め込んで……プロペラをつけて……魔石のエネルギー変換器を……
忙しい……! コメントの返事が大変だよ〜
〈俺ライセンスCだけどドローンなんて無駄だよ、まず数が無きゃ意味なし〉
まあこういうコメントも来るよなぁ。
〈若い子虐めて楽しいかい?人格Fランク野郎が〉
擁護は嬉しいが喧嘩をおっ始めないでくださいよぉ……
「擁護はありがとうございます、ただ喧嘩はやめて……あと勿論、数の暴力を想定しています」
〈数ってどうやるん?〉
「秘密です、それはダンジョンでのお楽しみに!」
別のデスクトップPCを起動して、昔作ったドローンのプログラムを流用し細かい制御部分を調整する、ある程度書き直して完成。
書き込みが終わると部品を全て嵌め込み起動させると姿勢正しく飛んだ、カメラを持ってそれを映す。
〈おお〜!!にいちゃんやるやん!飛行時間はなんぼや?〉
〈これが活躍するの楽しみなのでチャンネル登録しますね!〉
「背中に背負う収納用の母艦でチャージしますので合計最大12時間飛べます!」
賞賛のコメントは劇薬だ、承認欲求が満たされて気持ちが良い。だがこれからだ、メインディッシュは分身を成功させた時だ。
「今日はありがとうございました! これをあと7機作って背中に母艦を背負って、後日手馴しにFランクダンジョンに単独で突撃します! チャンネル登録高評価お願いします!」
と配信を切った、同接は33人で登録者は18人になっている!
昔ゲーム実況した時は数人いれば良いくらいだったが、今回の数は桁が違うな。これは需要が本当に高いのだなと感心した。
すると一階から呼ばれて降りると俺の好きな食べ物やケーキが食卓に並んでいた。
「誕生日おめでとう、あんたの好きなカツ丼とタルトだよ」
「おめでとう、これはプレゼントだ。自動追尾してくれる無線カメラだ、それでダンジョン配信をしなさい」
母と父の愛に感激して2人を抱きしめ、少し涙を流すと背中をさすられ、ダムが決壊したが如く泣いてしまった。
いつか、ちゃんとした親孝行してあげたいなぁ……
次の日、残りのドローンも1機2機3機と着実に作ると母艦に収納した。もう夜だ、試すのは明日の朝からにしよう。装備を整えて眠り迎えた26日。
装備を整えて母艦を背負いダンジョンに行く為に、リビングで食事を済ませて準備万端。
「頑張ってね」
「お前に渡したカメラは良いモンだから壊れにくい、存分に暴れろ!」
「……ありがとう」
頬をポリポリと掻いて答えた。
そしてやはり分身テストもせずに行くのは怖くなったので分身をしてみる。
「そうだ、ちょっと分身するね」
両親は疑問に思いつつも増えた息子を見る。
「そしてこれが真骨頂! 増える大量ドローン!!」
母艦のハッチが開く。
1機。
2機。
3機。
……
合計8機の4倍、今回は試運転なので自分の分も起動し32機がリビングを埋め尽くす、その中でプロペラ音が部屋中を震わせる。圧倒的な数の暴力だ。
「そ、そうか! お前の分身は身につけているものにも反応するから……」
「やるわね!」
「あははっ! これで証明してくる! 俺の【分身】は荷物持ちなんかじゃないって!」
そう言い俺は走り出したのであった、一番近くのFランクダンジョンまで。
評価よろしくお願いします!




