プロローグ 外れスキルで優しく追放
緩めの追放から始まります
「ドローン全機発進! さぁ、蹂躙の始まりだァ!!!」
背中の母艦がプシューと音を立て、全てのハッチが開かれる。
1機、2機、3機……32機展開。
瞬く間にダンジョンの天井は黒い戦闘用ドローンで埋め尽くされた。
〈32機!?背負った装備まで増えるん!?〉
〈企業案件確定〉
〈反則で草〉
「これが俺の『数の暴力』だ」
黒い戦闘ドローンが天井を覆い、コメント欄は一気に大騒ぎ。32機の前面へ青い魔法陣が展開された。
これは、誰もが「外れスキル」と肩を落とした【分身】で、追放された俺が世界中の注目を集める物語。
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数日前。
「すまないが神楽那由多。君はパーティから抜けてくれ」
Eランクダンジョンを攻略し終えた翌朝。
ホテルから出発する時に、2人きりになったタイミングでリーダーの倉田に言われた、突然の解雇通達。胸の奥が少し痛む。
だがパーティの雰囲気で伝わっていたから驚きはない。
ただ、今日が俺の19歳の誕生日でなければ、もう少し平気だったかもしれない。
そんで2ヶ月くらいしか所属していないってのにリーダーは申し訳なさそうに追加して言う。
「君の体格は良いが、分身は最大三人までだし、痛覚も共有する。戦闘より採取や農業向けのスキルなんだ。そして僕たちはこれから更なる高みを目指す、そこで君に死んでもらいたくない」
優しく言うがつまりは死にそうな荷物持ちのお荷物はお払い箱ってなわけだな。
でも彼は急に茶封筒を渡してきた……?
「手切れ金というよりかは僕からの詫びだ、友達としてはこれからも頼むよ」
少し分厚いので恐る恐る中身を見た。なんと30万も入っていた、これは低級討伐クエスト6〜8回分の金額だ、嘘だろ!? こいつ本当に俺の事を想っているのか!?
俺はなおのこと複雑な気持ちになる、いっそのこと創作物で見るような悪辣に非道に追放してくれた方が良かった。だってこれじゃあ別れるのが惜しいんだもん……
「お前の気持ちはわかった、俺の事を考えてくれてありがとう。だがこんな大金は受け取れないよ、また遊ぶ時に使おうぜ……それより今日誕生日なんだ、ただおめでとうって言ってくれないか?」
リーダーの倉田は面食らった顔をして呆然と数秒立ち尽くしてから焦るように口を開く。
「す、すまない……こんな日にこんな事を決断してしまって。……おめでとう。尚更、金は受け取ってくれ」
と俺のポケットに封筒を捩じ込む。
俺は他のメンバーに挨拶をと言うと、しなくていいと言われて俺は嫌われているんだなと再確認して落ち込み家にトボトボと、急に老けこんだかの様に気力なく帰宅した。
「ただいま……」
「チャットでも言ったが頑張ったな……今は休みなさい」
「暫くは無職でも大丈夫よ」
と両親は労ってくれた、俺は不幸な事が多いが人には恵まれていると思う。
なんとか絞り出した、ただいまの言葉以外何も出ず頭を下げて自室に戻った。
久しぶりの自室には寂しさが広がっていた。埃を被った工具に、意気揚々と冒険者になろうとした時にもらったパンフレットやガイドなどが積まれたままだ。
「はぁ……どうすんだよ」
分身を出せばこんな時も寂しさは紛れるが虚しいだけだ。
俺は金属の鎧やら装備品を脱ぎ、一応買ってずっと腰に付けていたエネルギーブレードを机に置くとソファに倒れ込んだ。
スマホを少しいじってから、虚しいけど結局出す事にした分身。
「分身だすか……」
ぽんぽんと自分と全く同じ顔と体型に同じ服装で今握っているスマホを持っている……? ん?
俺は疑問を抱いた、もしかしてだが分身の姿は着てる服以外にも装備も一緒に増えるのかと。
分身のケツポケットにはちゃんと財布があり、身分証までもが一緒に分身されていたのだ。
次はライト、その次は鎧を手に持つもやはり増えた。
そこで、最後の実験に少しお高めだった科学の叡智の結晶のエネルギーブレードをまた腰に付けて再度分身を出すとエネルギーブレードと共に分身した。
「いや、待てよ。これ、俺が強い武器持っていたら最強の軍勢になれんじゃないか?」
と俺はリンクしている分身に抜刀させて改めて確認。
俺の分身能力は装備品全てに引き継がれる。
ならばSS級の装備に、話題の強化外骨格やナノマシンを使った俺でも、それを持ち増えるって事になるよな……?
「痛覚が共有されるせいで、まともに前線へ出たことがなかった。だから装備まで複製されるなんて知らなかった! これなら分身の人数を増やす努力をすれば……」
再起の活路を見出した俺は分身と手を繋ぎ話になって喜んでいると、部屋の扉をノックされた。
「入るぞ」
父だ。
「うん」
「お前ソロになったしダンジョンで配信者をしてみたらどうだ? ソロ配信者は特に多いぞ。それに外でずっと聞いていたが分身も試せるんじゃないか?」
無職をソロとは物は言いようだな。
「急だね、試せるのはいいけどなんで配信者?」
「今ダンジョン専門配信アプリのDive ONが流行っているから、仕事探すまでの小銭稼ぎの娯楽をと思ってな」
それを聞き良いなと率直な感想が出たが、ソロで行ったら死んでしまうのではないかと憂う。
「スキルも冒険者ライセンスも下から2番目のE止まりの俺が?」
本気かと俺は頭を傾げる。だってリンチされて死ぬじゃん。運が悪ければ人を狙う盗賊だっているし……
「1番弱いFランクを周回するんだ! そこから雑談でもなんでも良いから視聴者と対話してファンを獲得して投げ銭をもらう、素材を得る、そんでもってダンジョンの成功報酬をもらう一石三鳥だ!」
俺はこの時決めた、自分の現在理論上でしかない最強装備複製分身軍団を試すのにこの上なく良い場所であり、視聴者つまりは世間に俺を認めさせるのにも丁度良いと確信した。
もう荷物持ちだけとは言わせない。
——この日、まだ誰も知らない。
Eランクと評価された、【分身】がやがて軍隊やSS級冒険者パーティをも凌ぐ最強スキルになる事を。
評価などよろしくお願いします!




