↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力ゼロの辺境伯令嬢、アーティファクトで覚醒する~ユニークスキル「超能力」を使っていたら、いつの間にか救国の聖女と呼ばれていました   作者: 楠 冬野
第1部 聖女誕生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/33

第18話 女神降臨

 総勢十人の屈強な男たち――あの先頭に立つ壮年の男がリーダーかしら。

 厚手の革鎧に頑強な盾、兜。手にした鉄の武器も含め、随分と重装備よね。


 アイラは男たちの力量を計った。

 盛り上がる筋肉、引き締まった体、鋭い眼光。それに統制が取れた動き。

 この男たちは相当な戦士に違いない。


「アイラ、どうする?」


「相手は人間、多勢に無勢ということもある。今後のことを鑑みても事は穏便に済ませたいわね」


 幸いにして、リーダーは野蛮な感じではない。

 ここが蛮族の村ということもないだろう。

 よし、少し探ってみるか。


『空間把握! からの、スキャン!』

 アイラは念じて脳裏に村の姿を描いた。

 ……この洞窟は村の端ね。正面の広場を囲むように数十個の家屋が点在している。

 外は……深い森と岩山に囲まれているわね。


「おい、何をしている! おとなしく出てこい! 武器は離せよ」

 焦れる男の声、アイラはダリアと目を合わせ、すばやく武器を鞄の中に収納した。


「わかりました。いま出ます。武器は持っていません」

 両手を上げて階段を上る。

 格子戸の前には、更に数十人の男たちの姿が見えた。

 緊張する面持ちの戦士たちが各々に武器を構える。

 ――うわぁ、これもう軍隊じゃん。


「アイラ、これは随分と仰々しいな」


「でも、警戒するのも分かる気がするわ」

 アイラはくるりと祠を見回した。

 一枚岩から削り出した柱も、屋根にも、複雑な文様が彫り込まれている。

 ここは祠というよりも神事を司る神殿に近いわね。

 ……神殿を守る魔物と神殿を守る村人ってところかしら。


 階段を上り終え外に出ると涼やかな風が頬を撫でた。

 石造りのアーチの下、篝火の明かりが二人の姿を照らし出す。

 男たちの間でどよめきが立った。

 ――いったい何が起きたの?

 先導する男たちを見ると、誰もが驚愕の面持ちで身を固めていた。


「アイラ、これって? なんでこの人たちは驚いているんだ?」


「さぁ、なんなんでしょうね」


 リーダーの男がアイラの顔を、まじまじと見つめていた。


「なにか?」


 尋ねると、ハッとしたリーダーの男が狼狽しながら地面に膝をつく。

 男が、叩頭しながら「女神様……」と呟いた。

 束の間、強い風が吹く。煽られたフードが捲り上がった。

 たなびく髪。風よけに翳した手をおろすと、場がドッと湧き立つ。


「女神様だ! 女神様が降臨なされた!」

 歓喜に沸く人々。ある者はもろ手を挙げて喜び、ある者は抱き合って喜んでいる。むせび泣く者もいた。

「女神様、此度の降臨を寿ぎ申し上げます。心より歓迎申し上げます」

 リーダーの男が誇らしげに笑った。


「ダリア、女神様って?」


「まぁ、私ではないだろうな」

 言ってダリアは、あきれ顔で目を細める。

 アイラに向かって、たぶんそのせいじゃないか、と法衣を指さした。


「ま、まじか……」

 嬉しそうにこちらを拝む男たち。アイラは、あんぐりと口を開けたまま固まった。


「女神様、良かったではありませんか、これでいらぬ諍いを回避できます」


「ちょ、ちょっとダリア、冗談はやめて」

 アイラは救いを求めるようにダリアを見た。ダリアは、両腕を抱え下を向き、必死に笑いを堪えていた。


「お、おい、おっさんたち、勘違いしているわよ。私は、無力な子供だぞー」

 アイラは、違う! 違いますからっ! といって両手を振った。だがそこでまた男たちが歓喜した。

 ――ダメだこりゃ、こうなったら、もうどうにでもなれ!


 ――その夜、アイラ達は村で歓待を受けた。そうしてその後、二人は長老の屋敷に招かれる。


「アイラ、その不細工な牛の飾りはなんだ?」


 ダリアが、胸に貼り付けていたブローチを指さす。


「ああこれ、宴のときに村の子供にもらったの。可愛いでしょ、これ、たぶんブルホーンね」


 アイラはローブに刺繍された月の女神の紋章の上に牛の飾りを付けていた。もちろん、女神なんて仰々しく扱われないためである。女神の威厳を示すような、そんなものは隠しておくに越したことはない。


「それから、こんな物もね。小さい角も、このお鼻の鼻輪も可愛いでしょ」

 アイラは懐から着ぐるみを取り出した。宴で使われていた牛の被り物だ。


「アイラ……残念だけど、そのマスク、私には、ちょっと、その趣味は理解できないわ」

 ダリアが、額に手を当て下を向く。

 ……こんなにも素敵なのに、なぜ呆れているのだろう。


 二階の客室、長いテーブルの対面に座る年経た男。

 禿げた頭、白髪に長い顎髭、目を隠すほどの長い眉毛、そのビジュアルは、いかにものザ・長老だった。


「長老、ここは月の女神様に縁のある村でよろしいのでしょうか?」

 アイラは、表情を読み取られないように気を付けながら尋ねた。


「いかにも。ここ、フェルスは、もう千年以上も前から月の女神様をお守りしております」


「それは、女神様の祭祀を執り行う、ということですか?」


「いかにも」

 と答えたまま、長老は沈黙した。長い眉毛に隠れていてよくは見えないが、どうやらこちらを観察しているようだ。


「ちょ、長老? どうかなされましたか?」


「しかし、アイラ様、度肝を抜かれましたぞ。よもやあのような場所に、それもいきなり現れるとは」

 村の長老が白い顎髭をしごきながら話した。


「私たちも驚いたのです。目が覚めると、いきなりあんな暗い場所にいて、しかも魔物まで」

 精一杯、愛嬌を振りまく。アイラは、話しながら長老の様子を窺った。


「月(・)の(・)扉(・)は(・)開(・)く(・)ま(・)じ(・)。あの魔物は、月の扉を守っておるのですよ」


「扉の守り?」


「魔物が扉の向こうを、我らが扉のこちら側を、このフェルス村は、大昔より『月の扉』を守ってまいりました。それは女神様がお隠れになった時からと、言い伝えられております」


「月の女神様ね、私もお伽噺で聞いたことがあります」


「さようで」


「長老、あの扉の向こう側には何が?」


「さて、それは分かりかねますな。なにせ、あの魔物を打ち倒す者などおりませなんだからな」


「いなかった? ということは、今までに誰か挑戦した者がいたということね」


「昔むかしに、何人か、血気盛んな冒険者や、村の戦士が挑んだ、という言い伝えはあります」


「へぇ、すごい。勇気があるのね、あのミノタ、いやブルホーンに挑むなんて」


「しかし、誰も帰ってこなんだ」


「そ、そうね、あれは相当ですもの」


 アイラは相槌を返した。まぁ、それはそうか、あれは並みの者では太刀打ちできないだろう。


「あの扉は、魔力を持つ者には絶対に開くことができぬ。『鍵』が必要なのです。試練を経て鍵を得る。この要件を満たすことは並大抵のことではないのだが」

 長い眉毛の奥で、長老の目が光る。ん? なんかまずいな、この感じ。


「そ、そうですかぁ、開くことも難しいのですね」


「その通り、にもかかわらず、アイラ様はどのようにして、扉を開かれたのでしょうね」


「え?」


「しかも、魔物の正体まで知っておられる。まるで見てきたように話す」

 長老の鋭い視線がアイラを刺す。どうやら、まんまと嵌められたようだ。


「え、えーっと、それは……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。