↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力ゼロの辺境伯令嬢、アーティファクトで覚醒する~ユニークスキル「超能力」を使っていたら、いつの間にか救国の聖女と呼ばれていました   作者: 楠 冬野
第1部 聖女誕生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/31

第13話 突破

 私は、いい。どうせ一度死んだ身だ。

 でも彼女は、ダリアはようやく日の当たるところに出ようとしているのに……

 

 サイコキネシス、サイコキネシス、動け、弾き飛ばせ、奴を。

 ――アイラは必死に念じた。

 しかし、力は発揮できなかった。


「なんでよ、なんで、こんなときに、一番大事なところで、なんのための力よ」


 悔しさのあまりに噛んだ唇が切れる。

 徐々に意識が薄らいでいく。

 この感覚は……あの病室での、最後のときに近いだろうか、悔しいな、今度は人の役に立つように頑張るってママと約束したのに。


 諦めかけて目を閉じたときだった。

 頭の中に声が響く。


『生命の危機を感知しました。リミッターを外しますか?』


「リミッター? どういうこと?」


『リミッターを外すと、後に、生命活動が保持できなくなる可能性があります』


「それは、どういうことなの? 意味が分からない」


『一般的に、一回の戦闘で消費するライフフォースは、人間が人生において消費するエネルギーの30%に相当します』


「つまり? 戦いに使えるエネルギーって人生の30年分ってこと?」


『はい、端的に言えば』


「た、端的って……」


『リミッターを解除すれば、エネルギーを無制限に使えるようになります。つまり』


「つまり?」


『一時的に、限界を超えて能力を向上させることができます。ただし』


「ただし?」


『9歳の子供の肉体が耐えられるかどうかは未知です』


 ライフフォース、無限大、その意味がよもやこのようなチートであるとは。


「お願い、リミッターを解除して。友だちが死にそうなの。私、助けなきゃ」


『賭けですよ』


「……なんだ、こいつ」


『ほんとうに、ほんとうによろしいので? もしかしたら死んじゃいますよ』


「うるさいわね! もういいから、さっさとやってしまいなさい!」


『了解しました。これよりアイラ・シトラスのリミッターを解除します。ただし』


「もう、なんなのよ!」


『念のため、制限時間を5分とします』


「はぁ?」


『では、解除します。ご武運を』


 アイラは目を覚ました。

 立ち上がり両手の拳を握りしめる。

 体に痛みは残るが、内側から溢れてくる力を感じていた。


「これならいけるわ、5分もあれば十分よ!」


 アイラはミノタウロスを睨みつけた。


「おい、牛野郎、よくもやってくれたな」


 啖呵を切ると、牛が振り向く。

 ミノタウロスは何ごとかと目を細めた。


 アイラは足元に転がっていた石を握りしめた。

 ミノタウロスが、そんなものがどうしたといった感じでくつくつと笑う。


「バカにしているけど、いいの? あんた、間違っているよ、要は速さなのよ。威力は速さで変わる」


 アイラは腕を振った。

 瞬間、ミノタウロスの腕が吹き飛ぶ。

 風切り音が遅れて耳に届いた。


 何が起こったのか、驚いたミノタウロスがダリアを放す。

 すかさずアイラはサイコキネシスでダリアの体を引き寄せた。


「ア、アイラ……」


「しゃべってはダメ、今は休みなさい。あれは私が片付ける」


 ダリアの傷に手を当てる。

 肩は外れているようだが折れてはいないようだ。

 

 ダリアを壁際に寝かせてその場を離れる。

 アイラはミノタウロスの方へ歩み寄った。


 フンと鼻を鳴らして敵を睨みつけたとき、後ろで「うう」と呻き声がする。

 見ると肩を押さえたダリアが立ち上がりこちらを見ていた。

 ダリアの口角が上がる。

 彼女は戦う意思を見せた。


「ダリア、やせ我慢はよしなさい」


「あなたこそ、鼻血が出てるわよ」


「こ、興奮してるだけよ。黙って見ていて――」


「肩は入ったわ、まだやれる。9歳の子供に負けてなんていられないわ」

 

「でも、そんな折れた剣でなにができるのかしら?」


「まだ魔力は残っている。一発くらいは打てる。当てて見せるさ」


「ダリア、剣ならあるわよ」


 アイラは、革の鞄から木の大剣を取り出した。


「でも、こんな木の――」


「あら、忘れたかしら? これはただの木剣ではない。アーティファクトよ」


 言ってアイラが微笑むと、ダリアは目を見開いた。


「さあ、行くわよ、決着をつけるわ」


 石を持つアイラ、木剣を構えるダリアが再び敵と対峙する。

 苦々しく顔をしかめるミノタウロスが天に向かって吠えた。


 グレートアックスを構えたミノタウロスが突進してくる。

 振りかざした斧がアイラの頭上に振り下ろされた。


 闘技場内に鈍い金属音が響く。上方に手をかざし、アイラは軽々と巨大な斧を止めた。


「今度はこちらの番ね」


 言うとアイラは、ミノタウロスに向かって両手を突き出した。

 ――痛い、全身が引きちぎられそうだわ。


 たちまち巨漢が宙に浮く。ばたつく牛。

 アイラはそのまま敵の巨体を壁に打ち付けた。

 衝撃音と叫ぶような呻き声。ダメージは大きそうだ。


 その後、アイラは敵を蹂躙した。

 雷を放とうとする腕をへし折ると、巨体を上空に持ち上げ地面に叩きつける。


「これで終わりよ」


 よろめきながら片膝をつくミノタウロス。悔しそうに歪む顔に怒る目。

 敵の闘志はいまだ潰えていなかった。だけど、


「終わりと言ったでしょう」

 ――い、息が続かなくなってきた。リミットは、でも!


 アイラは立ち上がろうとするミノタウロスの巨体を封じた。

 足掻く敵、歯ぎしりの音、骨のきしむ音、渾身の力を込めて抜け出そうとするが、それでも敵は動けない。


「ダリア、美味しいところをあげるわ。決めてみせなさい」


 促すと、ダリアが飛び込んだ。

 くるりと体を回転させることで勢いを増した大剣が薙ぎ払う。

 ミノタウロスの首が飛んだ。


「終わった……」


 渾身の疲労を感じながら、両膝を地面に落とす。

 力を使い果たしたアイラは、その場で体を横たえた。


 ――ちゃんと目が覚めればいいけどね。

 意識を失う中で、アイラは自分が微笑んでいることが嬉しく思えていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。