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魔力ゼロの辺境伯令嬢、アーティファクトで覚醒する~ユニークスキル「超能力」を使っていたら、いつの間にか救国の聖女と呼ばれていました   作者: 楠 冬野
第1部 聖女誕生

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第10話 アイラの力

 両手を持ち上げ小さな手のひらを見つめる。


 ――私は、生まれ変わった。しかも、異世界に。


 次にアイラは、先ほど頭の中に響いていた声を思い返す。


「……サイコメトリー、レベル5。サイコキネシス、レベル5。フォアサイト、レベル5」


 呟くように言葉にする。その言葉は前世の記憶の中にあった。

 能力は実体験としてすでに用いていて、この世界で確認ができている。


 相手に触れて気持ちを読み取る力、触れずにペンを転がす力、先の出来事を予測する力がこれに合致する。ユニークスキルのESPの意味も知っている。


 前世の病床で、有り余る時間をゲームとラノベで費やしていた。なので分かる。ESPは日本語で超感覚的知覚、平たく言えば「超能力」である。


「レベルが5というのは気になるけど、これはもう、魔力が無いなんて、なんのハンデにもならないわ」


 静かに拳を掲げたあと一歩踏み出しガッツポーズをする。胸がドキドキしていた。


 あとは……Life force(ライフフォース)という言葉だけど……その言葉には聞き覚えがないわね。

 響きから察するに、生命力とか活力ということだろうか。

 無限大となっていたが……リミッターが設けられていた。しかも、「警告」と表示されていた。

 あれは何を意味しているのだろうか?


「まぁ、あらかたは理解したわ、でも、お約束のHPとかMPとか、能力値の提示はないのね。気になるのが、生命力ってことなんだけど、これがHPということになるのかな? MPは、そもそも魔力が無いし……なんか分からないことが多いわね、でもまぁ、どっちにしても、これから検証していけばいいわ」


「あ、あの……アイラ様? さっきから何をブツブツと言っておられるのですか?」


 困惑する顔がアイラを覗き込む。ハッとした。思索にふけってしまいダリアをほったらかしにしてしまっていた。


「ああ、ごめんなさい。ちょっと考えごとをね。それよりも、ダリア、オーブを供えた後、何か声のようなものを聞いたかしら?」


「声、ですか? いえ、なにも」


 首を傾げるダリアの様子を見て、アイラは、うむ、と下を向き口に拳を当てる。

 ――これは私だけに起きたイベントだったか。


「ダリア、これからのことなんだけど、少し相談があるのだけれどいいかしら?」


「はい、何か?」


「祭壇の奥に、大きな扉が見えるでしょう。あれがきっと出口に通じていると思うの」


「そうですね。来た道は塞がり、出口らしきものはあそこだけ、どちらにしても進むしかないかと」


「そうね、ダリアの言う通り。だけどね」


「アイラ様、なにかご心配なことでも?」


「あの先にはきっとフロアボスがいるわ」


「フロアボス?」


「出口の番人のようなものよ、強力な魔物か魔獣がいるはず」


「ま、魔物ですか!」


「しかも、それが一匹なのか、群れなのかは分からない。今の私達は情報を持たない。ここは考えどきよ」


 ダリアは無類の剣士だ。魔術にも長けている。だが、それでどうなる? 一人のずば抜けた能力で切り抜けられるほど甘くない気がする。


「ですが、アイラ様、ここでジッとしているわけにもまいりません」


「そうね、だから、しばらくここで修行をしましょう」


 ここで心身の回復ができるのは幸いだった。自分達には時間の猶予ができた。この機会を逃してはならない。


「修行といいましても……」


 言い淀みダリアは握った拳を見つめた。


「ああ、ごめんね、言葉足らずだったわ、あなたの実力は認めているし、ここであなた一人でできることなど知れている。単身で修行したところでどれほど、と考えたのでしょう? 違うのよ」


「アイラ様、それは?」


「私に修行を付けて欲しいの」


「ア、アイラ様が修行?」


「そうよ、あなたの力で、私を強くしてほしいの」


 真剣にダリアの目を見つめる。

 9歳の子供に何ができるのか、と彼女の眼は語っているようだった。

 ダリアは困惑の表情のまま口を閉ざした。


「初見殺しなんてごめんだわ、大丈夫。当てはあるの、信じてくれないかしら」


 決意を眼差しに込めダリアの目を覗き込む。アイラは「おねがいします」といって頭を下げた。


 しばらく考えた後、ダリアはふっと肩から力を抜いた。


「ここまで来れた奇跡、あの戦いで見せた力、なによりあなたは私の命の恩人。信じましょう」


「命の恩人だなんて、大げさよ、だってまだ生きて帰れると決まってないもの、それから」


「まだ、なにか?」


「こんなに長い時間を共に過ごしてきたのに、あなたはまだ傅くの? 私達は戦友、裸の付き合いもした友達じゃない」


 アイラは不満を口にして頬を膨らませた。

 驚くように眉根を持ち上げるダリアはそのまましばらく考え込んだ。

 一つ息を吐く。彼女は瞳を持ち上げて真っすぐアイラを見た。


「やるならば、手は抜きません。覚悟はいいですか? アイラ」


 聞いてアイラは飛び跳ねた。初めて親しみを込めて名前を呼んでもらえた。心の中がジワリと温かくなる。そんなアイラを見てダリアは嬉しそうに笑った。


 力には目覚めたが、それにより身体能力(パラメーター)が上がるわけではないようだ。

 現実はゲームのように都合よくはいかない。

 強者のダリアから、実践的な特訓を受けたとしてもそれは同じ。

 短期間で9歳の子供の戦闘技能は上がらない。

 それでも、やれることはやっておこう。

 それぞれのスキルレベルが5、今の自分の力がどれほどのものなのか、見極める必要がある。


 戦闘において、最重要は未来視(フォアサイト)。

 これは戦況を支配する力。敵の動きを予測し、攻略の糸口を見つける能力だ。 

 そして、次に重要なのが念動力(サイコキネシス)。

 この力には、攻撃はもちろんのこと、相手の動きを止めるデバフ効果も期待できる。

 後は連携の確認だ。互いの動きをきちんと把握する必要がある。


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