暴かれた秘密(6)
次の日、俺とミカドは約束の時間にファミレスに行った。明美さんはミカドを見て、あからさまに不機嫌になった。無断で連れてきたのは悪いとは思うが、そもそも一方的に電話を切ったのはそちらだ。
「初めまして、三宮深門と言います。」
「…明美だ。」
やっぱり大人が相手でもその態度なんだな。むしろ安心した。
「何の用だ?」
「どう話したらいいものか…。」
「もし、霊感を消す方法があるとしたら、明美さんはどうしますか?」
俺は単刀直入に尋ねた。ミカドが隣で盛大に咽たが、無視する。明美さんは不敵な笑みを浮かべている。
「ほう…。」
「いきなり何を言ってるんだ、皇!」
明美さんがミカドに黙るよう合図した。ミカドは大人しく引き下がる。
「まずは話を聞かせてもらおうか。」
俺は文化祭で生じた事件を起こした男子の力を俺が吸収して消したこと、明美さんの霊感も同じように俺が消せるかもしれないことを伝えた。
明美さんはにやりと笑う。
「それはいいな。もう私にこの力は必要ない。」
軽いな。もっとこう、疑ったり戸惑ったり…。まあ、話しがスムーズでありがたい。ミカドが手を挙げた。
「口を挟んで申し訳ないが、想像よりも貴方の持っている力が大きいようだ。我々がこちらに来てすぐ、貴方に力が発現したからだろうか。」
「マズいの?」
ミカドは腕を組んだ。
「皇の力が完全に戻るかもしれない。想定外だ。」
「朗報じゃないか。」
「…まだ早いんじゃないか?力と共に記憶が戻ったら大きなショックを受けるはずだ。」
そんなの覚悟の上だ。先延ばしにしても仕方がねえ。
「問題ない。明美さんさえ良ければ。」
「構わん。私からも一つ言わせてもらうが、そのお守りが壊れた途端、貴殿の頭を覆っていた不穏な気配が増したかと思うと、貴殿の魂が輝きを放った。恐らくそのお守り、貴殿の体調を治すと同時に、本当の力を弱めてしまってもいるな。」
スメラギの護符は強い浄化の力を持っている。死んだ時の状態に戻ろうとする脳を治すのと同時に、俺の力そのものも浄化してしまおうとしていたのか。それでも完全に俺の力が消えてしまわないということは、俺が妖怪や悪い精霊の類ではないのか、スメラギの神力を上回る力を有しているのか。両方という可能性もある。
「それなら、これは父さんに預かってもらって、明美さんの力を吸い取ってみようかな。」
不安は残るが、俺は深呼吸してスメラギのお守りをミカドに預けた。頭が割れるように痛む。俺は明美さんの手を握る。意識を集中させると、彼女の中に何かがあることを感じ取れた。温かい光のような、柔らかい音のようなそれを、自分の方に引き込むように意識すると、彼女の中からそれがせり上がってくるのが感じられた。
「いける。」
俺はさらに意識を集中させた。明美さんは急に俺の手を振り解いた。怯えたような表情で俺から距離を取る。
「あ…すまない。つい…。大丈夫だ。続けてくれ。」
「痛みますか?」
「動揺しただけだ。」
明美さんは心なしか蒼い顔をしている。大丈夫か?俺はミカドを見た。ミカドは明美さんの様子を観察する。
「問題はないはずだ。文化祭の一件で妖力をなくした男性も今は普通に暮らしている。後遺症は全くない。元々持っていなかった力を失っても、不具合は生じない。」
ならいいだろう。正直、もう理性が飛びそうだ。力を吸い取ってしまいたい。
「明美さん。」
明美さんは手を差し出した。俺は手を取った。乾いたスポンジに水を垂らしたかのように、明美さんの力を吸い上げているのを感じた。自分の中の渇きが満たされていく。全てを奪い尽くした時、明美さんがぱたりと倒れた。気を失ったようだ。
「どうだ?皇。」
ああ、力が戻った。全盛期とは比べ物にならないくらい弱いが、自分の力の本質が見えた。
「俺がみんなを妖怪にしたんだな?」
「…思い出した?」
俺は首を横に振る。記憶はない。でも、分かる。
「俺には他の人の願いを叶える力がある。人間に神力を授けたり、妖怪に変貌させたりすることができる。そう言えば、神を人間にすることもできるのか。」
俺は頭を抱えた。薄々感付いてはいたが、やはり、俺は…。
「俺は皇宮の守り神にして、転化させる神、マロウドだったんだな。」
頭痛が酷すぎる。俺の意識はそこで暗転した。
【コウとスメラギの日記】
日本にある日記より一部抜粋
7月18日 コウ
スメラギは、俺がマロウドだと知っていたのか?ミカドとミヤの正体も。
7月22日 スメラギ
マロウド様だったの!?只者じゃないことは知っていたけど、まさか神様とはね。前皇陛下と前皇配陛下のことも初耳だよ。信じられない話だけど、色々と納得がいったな。大変だったね。コウが力を取り戻したことで、私の力も強くなったみたいだ。三宮皇の脳は完治させられたよ。次に入れ替わるとしたら、もう頭痛はしないはずだ。




