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暴かれた秘密(2)

「違うんだ。そんなつもりじゃなかった。ミヤ様はただあの鬼神から逃れようと…。」


 父さんはいつもより早口で言った。鬼神といえば、リュウサキが真っ先に思い浮かぶ。じゃあ、ミヤ様って、まさか…。


「どういうこと?」


 俺が低い声を出すと、母さんが口を開いた。


「わたしが説明します。」

「ミヤ様…。」


 母さんは父さんを制した。いつも優しい母さんの姿からは想像もつかないような毅然とした表情だ。


「わたしは神皇国の前皇、ミヤです。転魂の神子でもあります。十年前、夫のミカドと共に魂の入れ替わりを行ってこの国に来ました。十年間、貴方とスメラギを入れ替えていたのも、このわたしです。」


「え…。」


 俺は言葉を失った。母さんは俺に向かって深々と頭を下げた。


「今まで騙していて申し訳ありませんでした。」


 父さんも頭を下げた。


「じゃ、じゃあ…俺の父さんと母さんは…どうなったんだ?」

「…。」

「どうなったんだよ!?」


 父さんと母さんは顔を見合わせ、逡巡したのち、口を開いた。嫌だ。聞きたくない。


「入れ替わった後、元に戻ろうとしたら、できませんでした。貴方とスメラギは何度も入れ替えられるのに…。わたしはこの神力の使い方が分かるのですが、転魂を行えるのは、異世界に存在する同等の魂の間のみ…。それも、生者の魂に限ります。その後の神皇国の様子と照らし合わせると、三宮美夜と深門は、もう…。」


「嘘だ!」


 俺は叫んだ拍子に頭痛がして俯いた。両親が差し伸べた手を払い除ける。


「この人殺し!お前たちが生き延びるためだけに、罪のない人々を身代わりにしたのか…?父さんと母さんは、訳も分からず異世界に放り出されて、成す術もなく鬼に喰われたってことか!?」


 俺はふらふらと母さん、いや、ミヤに掴みかかった。ミヤは震えている。ミカドが俺の手を引き剥がした。


「ミヤ様はあの日初めて神力を授かったんだ。リュウサキに追い詰められた時に。恐らくはマロウド様がミヤ様を救うために神力をお授けになったのだろう。理解も追い付かないまま、咄嗟にその力を使って日本に飛び、助かったと安堵してしまっただけなんだ。」


「だから何だ?不可抗力だから赦せって?父さんと母さんを殺して成り代わっておいて?」


 俺は鼻で笑った。俺が何も言わなければ、一生騙されていたかもしれない。そうしたら、本当の父さんと母さんは異世界で死んだことを誰にも気付かれず、身体を奪った連中は罪を償うこともなく暮らしたわけだ。考えただけで胃がむかむかする。


「赦されないことだと分かってはいるわ。一生をかけて償うから…。」

「償うって、どうやって?」


 ミヤは考え込むような素振りを見せた。


「せめて、貴方が治るまでわたしたちのできることを…。」


 俺はハッとしてミヤの言葉を遮った。


「もしかして、スメラギと俺を入れ替えたのは、贖罪のため?」


 ミヤは俯きながら頷いた。信じられない。俺がこの入れ替わりを止めるためにどれほど苦労したことか。スメラギにどれだけ迷惑を掛けたか。


「俺がいつそんなことを頼んだ。俺はあんたの贖罪の道具じゃねえ!」


 俺の叫びに、ミヤが委縮する。その横で、ミカドが拳を握り締める。


「ミヤ様は貴方を救うために、ずっと神力を振り絞ってきたんだ。貴方の気持ちも分かるが、それ以上はどうか…。」


 俺は唇を噛み締めた。口を開けば悪態が飛び出しそうだ。気持ちの整理ができない。


「俺は何者なのか、二人は知ってる?」


 ミカドはミヤを見つめた。ミヤが口を開く。


「貴方が力を取り戻してから説明します。今の貴方にはきっと、真実が重荷となってしまいます。今は、ただ神皇国の存在だとだけお伝えしましょう。」


 俺はさらに問いただそうとしたが、頭が割れるように痛み、何も言えそうにない。暫くしてから、俺は弱々しく話しかけた。


「本物の三宮皇はどこにいる?」

「…死にました。十年前、わたしたちが美夜、深門と入れ替わってすぐに。」


 ミヤは小さな声で言った。

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