暴かれた秘密(1)
【主な登場人物】
・三宮皇…本作の主人公。日本で暮らす男子高校生。十七歳。
・スメラギ…コウから見たら異世界である、神皇国で暮らす少年。癒しの神子。十七歳。
・三宮深門…日本で暮らす男性。皇の父親。四十二歳。
・三宮美夜…日本で暮らす女性。皇の母親。三十六歳。
・三宮聖…日本で暮らす女子中学生。皇の妹。十五歳。
・明美…日本で暮らす女性。二十四歳。
「お、目を覚ましたか?」
ここは病院のベッドの上か。俺は身体を起こしてみた。頭がガンガンする。まだ起きるのは無理か。諦めてゆっくりと元に戻った。
「明美さん?」
ベッドの横に座って本を読んでいたのは、明美さんだ。俺の知らない本だったが、推理小説のような題名を見て、似合っているなと感じた。彼女と会うのは、文化祭の日以来だ。
「昨日の貴殿とは別人だな。あれがスメラギか?」
「ええ。よく覚えておいでで。どうしてここに?」
明美さんは本に栞を挟んで閉じた。推理小説であそこまで終盤に差し掛かっていれば続きが気になりそうなものだけど。
「貴殿のことが気掛かりでな。視えていない人間にこんな話をする気はなかったが、話した方がよかろうと思って何度か足を運んだんだ。」
明美さんは水筒を取り出して中身を飲んだ。
「私は霊感が強いんだ。貴殿の持っていたお守りが特別なものであることも、貴殿の頭が痛むことも視ればすぐ分かった。私には分かるのだが、例の事件は、人間が人間ではない何かに変貌することで起きている。一高での出来事を通じて分かったのだが、人間ではない何かに変貌した者の居場所も、ある程度近ければ感じ取れるようだ。」
理解が追い付かねえ。明美さんは大真面目な調子で話している。まあ、俺の話しを信じてくれたことだし、多分本当の話だろう。
「それは凄い能力ですね。」
明美さんは俺の方を見ているが、焦点が定まっていない。
「貴殿からは悪しき気配を感じないから言うが、貴殿は…人間ではないな?」
気まずい沈黙が流れた。俺が人間じゃないだと?これが文化祭の日に言われたことならば一笑に付すところだが、妙に引っ掛かる。本当に俺は三宮皇なのか?ミライにはコウではないと言われた。何か大切なことを忘れてしまっている気がする。
「人間だと思っていたんですけど…。例の事件と同じように俺も人間ではない何かになっているってことですか?」
「あれとは本質が異なるように感じる。別の存在だろう。今は弱っているようだが、本当の貴殿はかなりの力を有しているとみた。」
頭が痛い。思い出すのを拒むかのように脳が悲鳴を上げている。
「あの時、貴殿は怪物の力を吸収したように見えた。あの怪物が人間に戻ったのも、貴殿が力を吸い取ったからだろう。少なくとも貴殿は、あの怪物よりは格上の存在だということだな。喜べ。」
喜ばしくはない。普通の人間でありたかった。
明美さんは俺をまじまじと見ている。
「こう見ると、ただの人間にしか見えぬが…。特別な力も感じない。不思議なものだ。」
「両親が何か知っているかもしれません。話を聞いてみます。」
「そうか。それなら、私は退散しよう。また来る。これ、私の連絡先だ。」
明美さんは連絡先を書いた紙を置いて、病室から出て行った。何者なのだろう。思ったより良い人そうではあるが。連絡先を教えてもらえたということは、ある程度信頼されたとみていいのだろうか。
スメラギの日記を読むが、治療しかせずに一日が終わったようだ。申し訳ねえ。
どれだけ時間が経っただろう。頭痛がマシになるようにぼーっとして過ごしていると、両親がやってきた。
「具合はどう?」
「良くなってきたよ。それで、二人に言いたいことがあるんだけど…。」
俺は二人を見つめた。息子を案ずる優しい親にしか思えない彼らの正体は、一体何だというのだろう。
「俺は、貴方たちの正体を知っている。」
母さんが口を押さえた。父さんは微かに眉根を寄せただけだ。俺は黙って二人の反応を待った。




