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神隠し(3)

「スメラギくんは今のところどう思ってる?」


 イクサが訊ねてきた。


「まだ何とも…。ただ、元凶は妖怪ではなく、付喪神の可能性が高いと思っています。」

「何故だ?」

「理由は三つ。一つ目は短期間であまりに大人数が行方不明になっていること。二つ目は大人数が行方不明になっている割に不審な点が見受けられないこと。三つ目は行方不明になる条件が室内で一人きりであることです。」


 俺は指を立てながら説明した。


「どうしてそれで付喪神の仕業だと言えるの?」

「一つ目の理由ですが、三ヶ月で村の半数がいなくなったのは、一般的な妖怪の生態からすると異常ですよね。それほど燃費の悪い妖怪はいないのに、悪目立ちしすぎています。現に神子が派遣される事態になりました。」

「そうだな。ではどうしてこのようなことを?」


 ヒサメはお茶に一切口をつけていない。随分と警戒心が強いことだ。


「付喪神が人間の願いを叶えているという可能性が高いと思っています。素行の悪い人間がいなくなるのは、村人にとって都合がいい。無論、村人に化けている妖怪が住みやすい環境を整えている可能性はありますが、それにしても短期間で攫いすぎです。」

「言われてみれば、不自然だな。」


 ヒサメは顎に手を当てた。美人が考え込む姿は絵になる。


「続いて二つ目の理由です。元凶が妖怪であれ人間であれ、短期間にこれほど動いておいて不信感を抱かれないのはおかしいです。本当に不審な動きをしている人間はいなかったのでしょう。元凶は動物型の妖怪や付喪神など、目撃しても気にならない存在なのだと思います。」

「いや、それでも見慣れない品があれば気になるよね?」


 イクサは尋ねた。


「それは私も気になりました。そうだとしても、犯人は付喪神だという方がまだ納得できませんか?」

「釈然としないねえ。でも、一旦話を聞くよ。」


 村長は俺たちの顔を見比べている。きっともう理解が追い付いていない。


「三つ目、室内で一人きりの場合のみ神隠しが発生しているのはどうしてだと思います?」

「その方が攫いやすいからではないか?他人に見つかる危険性も減る。」


 ヒサメの言葉に俺は頷いた。


「そう。理想的な攫い方です。そして、毎回必ずその条件が揃っている時にしか神隠しは起こらない。つまり、元凶は対象の状況を把握していたと言えます。家具の付喪神であれば、家の中の様子を把握できるのではありませんか?」

「物によるけどねぇ。辻褄は合うか。」


 ヒサメとイクサが外に目を向けた。すると、二十代くらいの女性がこちらに近付いてきていた。


「村長、あの人が例の…?」

「へえ。トラや、中へお入り。」


 トラと呼ばれた女性は粗末な着物にボロボロの手拭いをして、やつれた姿をしている。トラと入れ替わるように村長は外に出て行った。


「こ、こんにち…は。」

「こんにちは。突然呼び出してすまないね。キミが山に入った時のことを訊きたいんだけど、いいかな?」

「へ、へえ。」


 トラは俺たちの顔色を窺った。


「んと、山に入ってしばらくして…みょーな大男に会ったんでさ。七尺はあった…と思いやす。稲穂のような色の髪と目で、頭には真っ黒な長い角が牛のように二本生えて…。あ、右腕はねえようでした。」


 鬼か。やはり神隠しの犯人では…。

 俺は隣から凄まじい殺気を感じた。瞬きをする間に、ヒサメがトラの喉元に刃を突き付けていた。


「ヒサメ!」

「何故だ…。何故生きておる!」


 ヒサメの表情は鬼気迫るものがあった。トラはがたがたと震えている。


「答えよ、女!あの悪鬼、リュウサキに会っておきながら、どうして生きておるのだ!」


 俺はハッとした。リュウサキとは確か、スメラギの両親を殺して喰った鬼だったはずだ。

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