TIPS「計画は狂うもの」
30.April.1947
やぁ、ロバート。
私の祖国、極東の島国で元気にしてますか。こっちは全域で閑古鳥が啼いてますよ。
貴方の想定通りこっちは落ち着いています。やっぱり「怪異周期」がそっちに移ったんでしょう。これから東アジアは荒れますね。
――怪異の大蛇行。
付随する怪異の表出は、人心の真理にも影響を与える。植民地支配の終焉、反体制運動の活発化。東アジアだけじゃない。アフリカや中東でも怪しい動きが観測されています。
人民は自分の意志と思ってるだろうが、革命気運の高まりが怪異に当てられた現象とは露にも思っていないでしょうねぇ。まぁ、ひょっとするとその逆も然りかも知れないけれど、詳しい研究は担当部署に任せましょう。
それにしても、ウチの人材不足は言うまでも無いですが、第一線級の貴方達は引く手数多です。地球上どこでも飛ばされる可能性がある訳ですが、先々で手土産を送って貰えるとウチのボスもお喜びになられるでしょう。保存の利く甘い物ならなおよし。年頃の乙女ってのは気難しくて困ったもんですね。
――とまぁ、冗談はさておき本題です。
彼をどうするつもりですか?
帝国の遺産でウチもやっと元素魔法の体系化に成功した程度なのに、彼は簡単に上回ってきました。詠唱も魔方陣も、それにかける時間すら必要ない。サイコキネシスを加味したらメデューサ以上ですよ。
その上、あの伝説の刀、髭切も手に入れて大天使ウリエルを討滅なんて……御伽噺か何かですか?
ウリエルは曲がりなりにも西方怪異のトップクラスです。本部じゃ第一報で大騒ぎでしたよ。
だから、本音を言えば……彼の扱い方に悩んでいます。
彼自身が『ナチュラルクラスに相当する存在』と本部では考えているようです。味方であれば心強いが私達は人間です。気の迷い、誘惑、懊悩――簡単に改宗すらしてしまう、哀れで弱々しい存在です。彼がいつ翻意するとも限らない。
もし太歳の因子と結合でもしてしまったら――。物理的な力だけじゃない、怪異による精神汚染も加味すると、彼の扱いは慎重にならざるを得ません。
気をつけてください、ロバート。
本部じゃ何か起きたら、彼を隔離対象にするつもりです。ボスはそうじゃないですが、他の連中はいない方が良いとさえ思っている節があります。
――彼に問題を起こさせないでください。
我々だけじゃない。『ラセツ』も『オリガ』も怪異達も、彼の力を取り込みたいんでしょう。運悪く巡り会った、人と怪異のアマルガム。柔らかい塊だからこそ自分達の都合の良いように変えられる。
彼のことを心配しているなら、任務から外すのも手だとだけ言っておきます。
あぁ、あと近々監査がそっちに向かいますので――、そいつらと問題は起こさないでくださいね。
それでは、身体に気をつけて。
倫敦の友人、神宮司より
PS 私の愚妹がご迷惑をお掛けしていると思いますが、彼共々よろしくお願い致します。




