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【蘇生スキルで世界最強へ】 無能だと思っていたスキルが進化して最強になりました 〜蘇生スキルを手にした俺は蘇った仲間たちと共に冒険者ライフを楽しんでいく〜  作者: ああああ
第三章 深淵に潜む絶対

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ep.31 【魔皇】ヴェル=ベント


教会に立つ鐘楼しょうろうの上は、王都の喧騒から切り離された異界のようだった。石造りの小部屋から突き出した展望台には、鈍色の鐘が鎮座している。その側壁から身を乗り出せば、城壁の外側へと広がる惨状が一望できた。


燃え上がる畑、逃げ惑う避難民、戦場を縦横無尽に駆ける魔物と冒険者。南門には地面が抉れた跡があり、巨大なクレイジーベアーの死骸がいくつも転がっている。西門へ伸びる街道にはタンクオーガの巨体が折り重なり、その奥からはまだ砂煙が上がっていた。全身が震える。早くヴェルを呼ばなければ、取り返しのつかないことになるかもしれない。

天井の梁に手を当て、深呼吸。心を落ち着かせ、頭の中で静かに呼びかける。


──いでよ!【天再葬蘇リバイヴ・ディー】!


『蘇生する対象の名をお伝えください』


いつもの無機質な声が響く。俺ははっきりと言い放った。



「ヴェル=ベント」



『対象名を取得。ヴェル=ベントを検索します』


少しの緊張。一体どう言う人物なのか。ギルドでの断片的なイメージしかなく、一抹の不安は残る。


『魔力の不足を確認。周囲にいる生命体の魔力を使用します────成功しました』



「くっ……!」



やっぱり慣れないな……!魔力をごっそり持っていかれた!


『所有者の魂の一部を媒介として使用します────成功しました』


この魂の一部を媒介にって部分。毎度引っ掛かりはするがやはり気にする余裕は残ってない。


『干渉権限を得ました。これより冥土ベントに干渉します────成功しました』


機械的な声はなおも続いていく。


『接続権限を得ました。これより世界記憶(アカシック・レコード)に接続します────成功しました』


いよいよか。


『蘇生条件を満たしました。最終段階に移行。代理詠唱を開始します────成功しました。一件の個体を発見。対象の蘇生を開始します』



輝きが膨らみ、光の中から人影が浮かび上がる。クルエラやリノの時と同じ光景。だが、今回は少し違っていた。先ほどの光が黒に変わったかと思うとそのまま外套となり、影を覆う。その存在はゆっくりと俺の前に着地した。


紫色の髪が肩のあたりでふわりと揺れ、同じく紫の瞳がこちらを見返す。白い肌に黒の薄衣が映える。捻れた角と蝙蝠のような翼、そして細長い尻尾がひらひらと可愛らしげに動いていた。大人の女性だ。背丈はクルエラより少し高いくらいか。妖艶な雰囲気と無邪気な微笑みが同居している。今回は全裸じゃなくてよかったと、ほっと胸を撫で下ろした。


キョトンとした表情の彼女──ヴェルは俺をしばらく見つめた後、なにかに気づいたようにハッとする。口角を僅かに上げ小さく笑った。



「ふぅん、なるほどね。リノに鎖をつけておいてよかったわ。中々面白い状況じゃない」



そう言って彼女は伸びをした。全身をぐうっと反らすその仕草に、どこか妙な色気と愛らしさを感じる。俺は咄嗟に目を逸らし、頬に熱が上るのを感じた。



「さぁて、意図もわかったし。ここは派手に一発、かなり丁寧に構築してあげるわ」



任せて、とウインクしてきたヴェルに再びドキリとする。後ろに振り返り、城門の惨状を一望すると、彼女は右手を前に突き出した。



「陣を展開。中心に破神ラダグノスの紋章」



その名を口にした瞬間、空気が重くなる。視界の中心に禍々しい紋章がくっきりと浮かび上がった。筆では描けないほど複雑な形状のそれは、見る者に底知れぬ恐怖と神聖さを同時に与えてくる。



「四精霊の象徴を省く」



模様の端がざわめくように揺れ、四方の空白が深い闇に沈んでいく。少し魔術を扱えるならわかる。あれは四精霊の加護を塗りつぶしたのだ。



「共鳴回路を作成」



幾つもの細い線が陣内を縦横無尽に走り回り、まるで血管のように脈動しながら輝きを増していく。魔力がそれに沿って流れ込み、陣全体が静かに震えているのを感じた。



「陣を上下に複数展開。紋章に三次元の意味を持たせ、形状を球体に」



上下に同じ陣が複数出現し、螺旋を描くように連結する。幾重にも重なったそれらが回転し、やがて球体へと変化した。その動きはあまりにも滑らかで、俺はただただ見惚れることしかできない。



「端に魔の象徴を刻む」



球体の外縁を細かな文様が走り、赤黒い光が染み込んでいく。まるで魔術回路を根本から変えていくような光景だ。悪魔の力とはこれほどのものなのか。



「魔力回路を修正。陣殻にマナとオドの融合回路を展開。中心に向かって共鳴回路と魔力回路を複合」



陣の表面に走る線が再び組み替えられ、無数の点が生まれては交わる。青白い光と赤黒い光が入り混じり、それが渦となって中心へと収束していく。俺にはとても理解できない高度な構築だが、ヴェルは嬉々として指を動かし、次々と命令を与える。



「詠唱を陣に刻む。対象を魔物に設定。属性を破滅に指定。構築を完了する」



最後の言葉が紡がれた瞬間、球体全体が眩しい光を放った。空間がうなる。膨大なエネルギーがうごめいてるみたいだ。ヴェルは満足そうに頷き、こちらに振り返った。



「魔物しか倒さない。環境に優しい破滅魔法よ」



そう呟いて彼女はくすりと笑った。


──破滅魔法?


言葉の意味を脳内で組み立てる間もなく、ヴェルはパチンと指を鳴らす。乾いた破裂音とともに球体から一本の光柱が上へと飛び立っていった。目にも止まらぬ速度で雲を貫き、天高く消えていく。それと同時に、遠くの空が波打って揺らいだように見えた。



「あれは……?」



次の瞬間、天に刺さった光柱が眩い閃光を放つ。光は拡散し、まるで星が弾けるように広がり始めた。小さな光の粒が無数に生まれ、それらは静かに、しかし確実に王都へと降り注いでくる。


雨に似ていた。だがその粒の一つ一つが無慈悲な輝きを秘めている。見上げた俺の視界いっぱいに、光の雨が広がっていく。そして、次の瞬間──


空気が震えた。


光の粒が地表に達すると同時に、巨大な波動が次々と巻き起こる。それはまるで同時多発的に落雷が発生したかのように、次から次へと光が刺さり、眩い柱が立ち上がる。城壁の外にいる魔物の群れが、光に触れた瞬間に蒸発した。巨大なゴブリンも、肉厚なウッドウルフも、頑丈なタンクオーガも、光に撃ち抜かれると微塵も残さず消え去っていく。



「な、なんだこれ……」



声が震える。目の前の光景が信じられなかった。数千、数万はいたであろう魔物の群れが、光が降るごとにどんどん減っていく。それは建物や人には一切触れず、不思議なことに魔物だけに吸い寄せられていくかのように命中していた。まるで天が魔物だけを憎んでいるかのように。道路や人、建造物などを一切傷つけずに殲滅していくその光景は圧巻の一言に尽きる。



差別する破滅の雨エレクトス・ラディオン



ヴェルが静かに呟く。その言葉通り、光は区別することなくありとあらゆる魔物を焼き尽くしていく。空から降る白銀の雨は、王都を幻想的に明るく照らしていた。


やがて時が過ぎると、周囲にあれほど押し寄せていた魔物の姿は跡形もなくなっていた。魔物の焦げ跡と土煙が僅かに残り、さきほどまでの喧騒が嘘のように消えている。



「ま、これくらいにしといてあげるわ」



パンッと手を叩き、同時に球状の魔法陣が霧散する。空に広がる残光が消えると、鐘楼しょうろうの上に静けさが戻ってきた。俺はヴェルの後ろ姿を見ながら、ごくりと喉を鳴らした。






ヴェルの参考画像

挿絵(By みてみん)





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