研修
ガウスたちは模擬戦闘室からが出てきた。
特にダメージを受けた感じがないので、狐につままれた気分だ。
よく見ると汚れなども一切なく入っていった時のままだ。
ムサシの聞いてみるが、首を振るばかりだった。
「その辺はクレイさんに聞いてくれ。俺にはよくわからん」
クレイさんはこの会社の幹部で技術担当といったところらしい。
社長室に戻ってくると俺たちを見てランス社長が言った。
「試験お疲れ様だ!約束通り研修を受けてもらうぞ!サラとカストロはかなり自分の力を使いこなしているな。ただ攻撃力が不足している、ガウスと一緒ならそれもありなんだろうがいつでも一緒にいるとは限らないからな、最低限の攻撃力を手に入れてから長所を伸ばすのがいいだろう!」
「……よろしくお願いします!」
「えっと……俺は?」
「ガウス……お前は素質に溺れて全く自分の力を使いこなしていない……あまりにももったいない。クレイにつけて特別研修を受けてもらうぞ」
俺は今まで自分が力不足だと感じたことがなかった。
それがムサシには全く歯が立たなかった……悔しいな。
だが、今に見てろよ!必ず見返してやる!
さて、クレイさん……技術担当の人か、どんな人なんだろうか?
「とりあえずガウスはクレイ、カストロはハルク、サラは俺の下について研修を行う、今日はもうゆっくり休め!明日から研修だ!」
次の日、ゆっくり休んだ俺たちは別々に分かれて修行することになった。
俺の前にはランス社長に紹介されたクレイさんがいる。
クレイさんは少し汚れた白衣にボサボサの長髪、そして眼鏡をかけている。
まるで強そうには見えない……こんな人に研修がつとまるのだろうか?
しかし、その眼光は鋭くジロジロと俺を見ている。
「ふーん、わざわざランスが僕に研修に頼むだけのことはありそうだな……ほっといて簡単に死なれでもしたらもったいない」
「そうだろう、膨大な魔力を持っているのにまるで使いこなしていない。だが、うまく鍛えればうちのエース級になる。頼むぞ!」
クレイさんは俺の方を見ながらうなずいている。
会ったばかりなのに何がわかるのだろうか?
俺の不満そうな顔を見てランス社長が笑う。
「クレイはこんななりだがうちで1、2を争う実力者だ!こいつに教えてもらえるなんて幸運だぞ!」
「こんななりは余計なお世話だ」
ランス社長が言うならまあそうなんだろう、俺はクレイさんに挨拶した。
「よろしくお願いします!クレイさん」
「うむ、これから僕のことは先生と呼ぶように、まずは一緒に模擬戦闘室に行って君の実力を見てみよう」
模擬戦闘室に入ると今度は草原では森の中になっている。
いったいどうなっているんだろう?
「さっきと違う景色ですけど、ここはどうなっているのですか?そもそも部屋の中のはずでは?」
「ふふふ……ここは僕の研究成果の一つだよ、仮想現実みたいなもんだ」
「???」
よくわからん。
俺はクレイの前で次々と使える魔術を連発していた。
とはいっても何もない空間にぶっぱなしていっているだけだが、これで何かわかるのか?
「特に的とかなくても威力とかわかるんですか?」
「ああ……そういうスキルを使えばな」
めっちゃ俺の方をガン見している、少し背筋が寒くなったぞ。
「どの魔術も呪文の詠唱がいるのかね?」
「はい、初級だと一言くらいですが、威力があがるほど長い詠唱が必要です」
「ふむ、初級でもかなりの威力のようだが、それより威力を下げたりはできるのかね?」
「?、いえできないですね」
「魔術を使う時の自分の魔力の流れを意識しているのかね」
「いえ意識したことがないです」
「ふむ?呪文の詠唱をすることで自動で魔術が生成されるのか!?だが、僕が同じ呪文の詠唱をしても何も起こらないな……君の世界の人だけが使えるということか、なかなか興味深い」
「俺の世界ではそれが普通でしたが」
「だが、そんなに長々と呪文の詠唱がいるとなるとこの世界では苦しいな……いくら威力が高くてもだ」
そう言ってクレイは中級のフレイムアローを詠唱なしで使ってみせた。
俺の目が驚きで見開かれる。
「君の魔術の魔力の流れを再現したのだ。君の魔力は膨大だから、使いこなせたらすごく強くなれるぞ!」
「がんばります!」
こうして研修が始まったのだった。




