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第8話 良いジンと悪いジン

 サンドラムの街。サン洞窟。

 10年前。この洞窟を、遊び場としていた子供がいた。

 テーダン。6歳。

 両親の無いみなし子で妹のオキミ、4歳と、洞窟探検を続ける毎日。

 児童小説の中では、商人が、お姫さまを助けたり、ドラゴンを倒したりして活躍する。

「俺は、商人になる!」

「アタシもなる〜!」

 二人して、騒いでいたある日の早朝。

 フリーオアシスで、水くみをする大人と子供と出会う。

 大人は、砂漠の精霊ジンの長老スフィンクス。

 子供は、その息子ジンリン。

「オレは、ジンリン。水くみ商人見習いだ」

「商人…!なりたい!」

「なりたい〜!」

 テーダンとオキミは、大きく手を上げた。

「水くみ商人は、地味で地道な商人じゃぞ」

「俺、商人になりたいんだ。難しいことわからない。頭が悪いんだ。それでも商人になりたいんだ」

「頭が悪いとは、自分で言うか」

 長老スフィンクスは、一時悩んだ後言った。

「良し。お主を水商人に任命しよう」


「やったー。水商人になったー」

「アタシも。アタシも」

「お前ら、兄妹をオレの仲間にしてやるぜ」


 良いジンと出会った。あれから、10年。

 オアシス水売り屋は今日も元気に開店している。



 第8話 良いジンと悪いジン



「俺、頭悪いけど、ジンの長老スフィンクスから、水売り屋と水商人としての称号をもらったんだ」

 パトラちゃんの手を握りしめるテーダン。

「フリーオアシスの水には、体力回復効果があるから、飲んでくれよ」

 愛用のショルダーバックから、水袋を取り出す。

「…いただきますわ」

 ごくごく。

「…美味しいですわ。ありがとうございます」

「パトラちゃん…」

 見つめ合う二人。


「人間なんて不幸になればいいのデース」

 魔法のランプから、魔人ラムが毒舌を吐く。


「魔人ラムは、悪いジンだ。望みを叶えると言いながら、本当は、人の不幸を望んでいる」

 パトラちゃんを魔物の猛毒に刺させるなんて、冗談ですむレベルではない。

 やはり、魔人ラムは、完全な悪いジンだ。

 ダオ財務大臣は、位置づける。

「マジックボックスにしまってしまおう」

 執事を呼び、銀色の箱を持ってこさせる。

 有無を言わさず、魔法のランプを箱の中に固定する。

 直ぐ様、箱を閉じる。

 銀色の鍵をかける。


 シーン。


 魔人ラムの気配も魔力も消えた。

 完全封印である。

「封印してしまったんですの?」

 身体が楽になったパトラちゃんが起き上がる。

「パトラちゃん。大丈夫か」

「大丈夫ですわ」

 テーダンに、パトラちゃんは、微笑みかける。

 どうやら、両想いのようだ。


「魔人ラムは、完全封印した」

 ダオ財務大臣は、今までの無礼をわびる。

「なすりつけをしてすまなかった。魔人ラムの魔力で、貧困問題を解決できないか模索中だったのだ」

「俺、億万長者になったよ」

「別荘を買ったぜ」

「それは、キミたちのものだ。娘も、キミを気に入っているようだし、娘と婚約してやってくれないか」

「え、えええ」

 ドキドキを隠せないテーダン。

「うれしいですわ。わたくし、商人さんとなら、上手くやっていけると思いますわ」

 パトラちゃんは、テーダンの手をそっと握る。

「お、俺なんかでいいのか?」

「よろしくですわ」

 テーダンの別荘に、テーダン、ジンリン、パトラちゃんが住むことが決まる。

 妹オキミは、オアシス水売り屋に変わらず住み込む。

 毎朝のフリーオアシスへの水くみも、変わらずやる。

 これからも、水商人だ。

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