第7話 幸運の罠
サンドラムの街。財務大臣邸。
「この魔法のランプを返す」
「いらないぜ」
テーダンと面白顔のギョロ目のジンリン。
財務大臣ダオ・ミトに、魔法のランプを返した。
「いいや。これを、戻されては困るのだが」
財務大臣は、あわてている。
魔法のランプの所持権を返されたくないらしい。
「…こりゃあ、何か隠してるぜ」
ジンリンは、ギロリと財務大臣をにらむ。
「理由がありそうだぜ?」
「な、無いぞ」
あわてる財務大臣。
その時、迷い黒猫が、財務大臣の前を通り過ぎた。
そのまま、飾ってある、高価値そうなツボを落として、割ってしまう。
「うわああ」
ダオ財務大臣は、悲鳴を上げる。
黒猫は、その後も、室内の美術品を壊してまわる。
「幸運のありすぎデースネ」
魔法のランプがしゃべった。
魔人ラムの声だ。
第7話 幸運の罠
魔法のランプの罠。
幸運を持ちすぎている人間は、所持者を続けると、反対に不幸なことが起こるようになる。
幸せになったり、不幸になったり、わかりづらい。
突然の急降下ってやつである。
「そうなんですの?」
パトラちゃんは、知らないようだった。
砂漠王国首都から、流れてきた魔法のランプ。
王国首都ニューデザートも、上層部が幸運の持ち過ぎで、不幸に見舞われはじめた。
そのため魔法のランプはサンドラムの街に流れてきた。
幸せすぎて、不幸になること確定の大富豪たちは、魔法のランプを使わないでいようと決めていた。その中で、幸福を落とす罠も、何も知らないパトラが魔法のランプを持ち逃げして使ってしまった。
大好きなメロンジュースを望んでしまった。
不幸に見舞われることを回避したかったダオ財務大臣は、魔法のランプの所持権を、テーダンに譲渡した。
「不幸のなすりつけかよ」
「幸運の後に不幸なんて、ひどいぜ」
「商人さんは、不幸になるんですの?」
パトラちゃんは、顔面蒼白になる。
商人人生をエンジョイしているテーダン。
水商人の夢を持つ男の人。
サンドリッチメロンの夢を聞いてくれた人。
それを、気になりはじめている。
パトラちゃんは、正直にテーダンに惹かれはじめていた。
この男の人に不幸になってほしくない。
そう思っている。
「わたくし、商人さんの幸運分の罠を受け入れますわ」
パトラちゃんは、魔法のランプを奪い取り、衣服の中にしまう。
「わたくしが、ランプ所持者になりますわ」
「パトラちゃん。いいのかよ」
テーダンの手は、振り払われる。
「わたくし、商人さんが好きですわ。不幸になってほしくないですわ」
「パトラちゃん…」
思わぬ告白に、胸が熱くなるテーダン。
パトラちゃんも顔が真っ赤だ。
バタっ。
不意に倒れるパトラちゃん。
本当に熱がある。幸福を落とす罠かもしれない。財務大臣邸の近くの診療所に運ばれる。
サンドラムの街。診療所。
「サンドスコーピオンに刺されていますね」
「なっ」
医師の診断に、ダオ財務大臣は、言葉を無くす。
サンドスコーピオンは、ミニマム魔物である。
娘パトラちゃんが、魔物に刺されているはずが無い。
魔物は、砂漠の魔法陣で、街に侵入できないようにしてあるはずなのだ。
「俺たちが、街の外のフリーオアシスに行った時かな」
「ねーちゃんを身代わりにしちまったな」
落ち込むテーダンとジンリン。
街の外の、フリーオアシスに行った。その時、魔物に刺されていたのだろうか。
夢を熱く語り合ったのに、ひどいぞ。
看護師が、解毒魔法で治療中である。
「ランプの罠が、ここまでひどいとは…」
魔法のランプは、幸せ者を罠に落としてしまう厄介なアイテムだった。




