第6話 リッチな栄養素
サンドラムの街離れ。フリーオアシス。
早朝。
「水くみ、暑くて大変ですわね」
「大丈夫。大丈夫」
全身、赤紫色の布で日焼け止めをしているパトラちゃん。
そして、水くみ係のテーダン。
「パトラねーちゃんに、見守られて、熱い視線を感じてるんじゃねえのか。テーダン」
面白顔のギョロ目ジンリン。暑い炎天下なだけだ。
億万長者なんて、関係無い。
毎朝、早朝恒例の水くみ中である。
水くみは、やり甲斐があり、楽しい仕事。
頭が悪いテーダンでも、出来る仕事。
体力回復効果のある水は、元値無料で、くみ放題。
オアシス水売り屋で売れば、大もうけだ。
魔法のランプを返す前に、毎朝の日課をすませている。
今回は、パトラちゃんも一緒だ。
「俺とジンリンの夢は、水売り屋を続けて行くことなんだ」
「テーダンとオレの夢は同じだぜ」
テーダンとジンリン。目を合わせて、うなづき合う。
「良いですわね。男の方の友情を感じますわ」
パトラちゃんは、感心してしまう。
魔法のランプなんて無くても良いのだ。
「わたくしも夢があるんですわ」
「え?何だ」
「教えてくれよ。パトラねーちゃん」
「わたくし、メロンという食べ物が好きですわ」
うっとりとするパトラちゃん。
第6話 リッチな栄養素
メロン。
高級なフルーツの一つ。
緑色の甘い衝撃。
魔法で、はじける炭酸水を混ぜれば、メロンソーダの出来上がり。
砂漠王国の首都ニューデザートでは、その栽培をずっと研究してきているのだという。
砂漠の精霊ジンの魔力で、流通させるだけの栽培を間近にしているのだという。
「わたくしの母が、特にハマっていて、首都で研究の協力をしているのですわ」
「へえ。そうなんだ」
「うふふふ」
「あははは」
「おい!魔法のランプを使えばいいんじゃねえか!」
ジンリンが、面白顔のまま、声を上げる。
「魔人ラムに、叶えてもらえば良かったじゃねえか」
「いいえ。皆んなの協力で、完成させるべき名産ですわ」
砂漠の王国のメロンは、“サンドリッチメロン”という名前の名産品にする予定なのだという。
「サンドリッチメロンか。美味そうだな」
「オレ、今、食いたいぜ」
テーダンとジンリンは、頭の中で、サンドリッチメロンを思い浮かべる。
砂漠王国では、果物全般が高級品なのだ。
メロンなんて、1、2回しか食べたことがない。
もし、メロンが毎日食べられるなんてことになったら、世界は、ガラリと変わるだろう。
それこそ、ニューワールドだ。
「魔法のランプなんて使わないでいいさ」
「確かに、言えてるぜ」
「人の協力する力で、実現できることが、夢ですわ」
魔法のランプの効果で、幸運を手に入れたけれど、そんなことよりも、自分の力で切り開ける未来が、誰にでも与えられることの方が大事だ。
テーダンも、ジンリンも、パトラちゃんの夢も、自分の力で叶えられるようになる社会作りが、課題だ。
水商人として、オアシスの水を売ること。
サンドリッチメロンを栽培して、名産品にすること。
夢だ。
これは、すでに上手く行っている。
これから、実現することが可能になる。
仕事だ。
どんどん、夢を持って、それを仕事にしていけば、人生は楽しい。
「良し。水くみも出来た。水売り屋に荷車を運んだ後、魔法のランプを返しに行こう」
「おう」
「良いですわ」
パトラちゃんの夢もわかって、より親しくなった。




