第2話 魔法のランプ
サンドラムの街。オアシス水売り屋。
「おかえりなさ〜い。お兄ちゃ〜ん」
テーダンの妹が、出迎えた。
オキミ・ダン。14歳。
黒髪のボブヘアの女の娘。
水売り屋の看板娘。のんびりしたしっかり者。
「その女の人、誰なの〜?お客様〜?」
「パトラちゃんだってさ。何だろ」
妹と兄。オキミとテーダン。一緒に首をかしげる。
「わたくしは、今、追われているのですわ」
財務大臣の娘、パトラちゃんは、家出してきたという。
「美術館の魔法のランプを盗んできたからですわ」
衣服の隙間から、金色に輝くランプを取り出す。
「これを、わたくしのために使いたいのですわ」
「魔法の…ランプ…」
テーダンは、物珍しそうに金色に輝くランプをのぞき込む。光っている。
「これを、今から使いたいのですわ」
「え、えーと…」
「マブイねーちゃんじゃねえか。見守ろうぜ、テーダン」
面白顔の砂漠精霊ジンリンが、ギョロ目で言った。
第2話 魔法のランプ
魔法のランプ。
どんな望みも叶える魔人ラムが封印されているランプ。
魔人ラムは、砂漠の精霊ジンの始祖。
強大な魔力で、砂漠王国の建国にも協力した。
このランプは、魔力を補充する効果を持つ。
ランプが、光りを放つ時。魔力が充填されていることを示す。この状態は、“どんな望みも叶えることが可能”なことを伝えている。
コスリ。コスリ。
「おいでませ。魔人ラム」
パトラちゃんの言葉に反応して、ランプから、もくもくと煙が出てくる。
青い髪の妖艶な女性が、クルクルと現われる。
「ハーイ。ワタシがラムなのデース」
女性は、上機嫌だ。
金粉を振りまき、店内をところせましと飛びまわる。
「ワタシを呼んだのは、あなたデスネ?」
「わたくしの望みを叶えて欲しいですわ」
「どんな望みも叶えマース」
「美味しいメロンジュースが、飲みたいですわ!」
パトラちゃんは、ほほを熱くするほどに言った。
美味しい…メロンジュース…。
「了解デース」
ボワッと。
グラスに入ったメロンジュースが、パトラの前に浮かぶ。
パトラちゃんは、すぐ手に取り、飲み干す。
「美味しいですわ。もう一杯」
「残念デース。望みは、一度に一回デース」
「残念ですわ」
「また呼んで欲しいデース。またね。なのデース」
魔人ラムは、煙になって、魔法のランプの中に戻って行くのだった。
「はあ…。美味しいジュースですわ…」
ボワッと。
メロンジュースの入っていたグラスが消える。
魔法のランプの輝きも消えた。
「勝手な利用のため、怒られますわね」
遠い目をするパトラちゃん。
「無事、望みを叶えましたわ」
パトラちゃんは、魔法のランプを抱きしめる。
「貴方たちには、感謝しますわ」
微笑む。
「お礼に、次の望みを叶える権利をお渡ししますわ」
「望みを叶える権利?」
魔人ラムは、どんな望みも叶えてくれる。
「…いや、俺でいいの?もしかしたら、悪い人間かもしれないんじゃないのか?」
「商人は、良い人ばかりですわ」
天然なのか。
疑ってしまう。
「テーダンは、良い人間。良い男なんだぜ。見る目あるじゃねえか。ねーちゃん」
ギョロ目のジンリンは、正直に褒める。
パトラちゃんを見てから、テーダンを見る。
「テーダン。ありがたく、いただくしかないぜ」
「お、俺が?いいのかな」
魔法のランプの使用権利なんて、すごすぎる。




