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『残憶レプリカ:』プロットver  作者: 毎日馬鹿
参章 ぱらぱらドリーム
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ぱらぱらドリーム013

「ねぇ、ちょっと歩こうか」


行先は言わなかった。それでも、今の縒木は、立ち止まれば簡単に壊れてしまいそうで、彼女が進むままに僕は隣を歩く。まだ、彼女を繋ぎ止めておきたかった。


歩調を合わせる。指先が触れて、変に崩してしまう。

長くなった日が沈んで、景色はすっかり夜の顔をしていた。流れる風が、少しだけ冷める。


「変な感じ」

「何が?」

「いつもなら、こんな時間って、ずっと家で勉強してたから」

「後悔してる?」

「うんん、楽しい。ドキドキしてる」

「……そりゃぁ、よかった」


彼女は前を向いたまま、少しだけ速度を上げていく。生き急ぐみたいに。転げ落ちていくみたいに。


「そんな顔するなら、ちゃんと握っといてよ」

そう言って彼女は手首をこちらに差し出す。察しがいいやつだった。


「お見通しか」

「××って、すぐ変な顔するから」


今思えば。他人の顔色を読むのが上手かったのも、彼女が“ちゃんとしてる側”に居続けるために努力した結果の1つだったのかもしれない。


彼女の細い手首を再び握る。そのまま夜へ紛れてしまわないように。


小一時間ほど歩いた先で、縒木はやっと足を止めた。

「なんか飲みたくない?」


縒木がコンビニを指差す。深夜一歩手前のコンビニは、昼間より少しだけ治安が曖昧に見えた。制服のまま座り込んでる高校生。駐車場で煙草を吸う青年。

みんな少しだけ、“帰る時間”を誤魔化してるみたいに見えた。


小っ恥ずかしくなったのか、手は振りほどかれて。彼女は先に店内へと入る。蛍光灯の白さだけが、妙に眠たく店内を照らしていた。


缶コーヒーを1つ手に取って、彼女を探せば、酒類コーナー前で止まっているのが見えた。冷蔵ケースの光が、金髪をやたら白く照らしていた。


「お酒は大人になってから」

「流石に買わないよ。多分、買えないだろうけど」

「興味もないと思ってた」

「うん。正直ね、高校生でこういうの飲んでる子達、ずっと馬鹿だと思ってた」


でも、今は、ちょっとだけ羨ましい。

そう呟いた気がした。


コンビニを出る。冷房で冷えた身体へ、夜気がまとわりついた。縒木はレジ袋をぶら下げたまま、行先も決めず歩き出す。車道沿いを並んでけば、信号待ちの赤が金髪をぼんやり染めた。


「……なんかさ」

「ん?」

「まだ、帰りたくないかも」


公園を照らす街灯が、暗く沈んだ田舎町には不釣り合いなくらい、明るかった。縒木は、錆びたブランコを見つけると、吸い寄せられるみたいにそっちへ歩いていった。

ブランコに2人並んで揺られながら、さっき買ったばかりの飲み物に手をつける。


「にがー、よくこんなん飲めるよね。ブラックなんて絶対見栄張っただけでしょ」

「良さがわからないなら返せ、お子ちゃま舌が」


1口よこせとせがまれた缶コーヒーを取り返す。舌を出して不味いを伝えてくるけれど、それでも何処か彼女は楽しそうだった。


「夜の公園でさ、ブランコ乗って、どうでもいい話してるの。なんかドラマっぽくない?」

「そんなベタなドラマ、最近はもう無いだろ」

「そうかな?そうかも。最後にちゃんとドラマ見たの、いつか忘れちゃった」

「……なぁ。やっぱり、忙しかった?」

「うん。なんか、“見てる暇あるなら勉強しなさい”って感じだった」

「……厳しかったんだな」


彼女は何も答えなかった。


「ねぇ××」

「何」

「手出して」


今更何を言われても驚きはしなかった。彼女へ向けて手を差し出す。

彼女は自分の手を合わせて、やっぱり関節ひとつぶん違うよ、と。何故か嬉しそうに笑った。


「私さ」

縒木は、合わさった手を見つめていた。


「この手で握って貰えたらさ、ちょっと安心する」

夜風が吹く。


「ちゃんとしてなくてもいい気がしてくる」


合わさった手を眺めながら、彼女は確かに安堵してる、そんな表情を僕に見せた。


だから余計に、背筋が冷えていく。


たぶん、僕は縒木が壊れていく側へ、ちゃんと手を引いてしまっていた。心当たりはあった。金髪に染める場所を貸したのも、服を一緒に選んだのも、サングラスをあげたのも、ピアスを開けたのも。


僕はちゃんと共犯で、共に彼女を壊していた。

首元の痣が、また少しだけ黒く見えた。ぎち、と。そんな音がした気がした。


「なぁ、苦しくないか」

「大丈夫だよ」


「───今の方がよっぽど、息がしやすいから」

縒木は、ようやく息継ぎが出来たみたいにそう言った。

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Twitter⇒@Alwaysfoolgirl

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