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『残憶レプリカ:』プロットver  作者: 毎日馬鹿
参章 ぱらぱらドリーム
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ぱらぱらドリーム008

“めんどくせぇ”


「……もしもし」


“聞こえなかったことにするんじゃねぇよ。薄情者が。簡単に俺を売りやがって。お陰様でこっちは昨日から大変だよ”


「訝屋さんを売る?待ってください、僕はそんなことした覚えは」


“澪影 灯火”


心当たりしか無かった。


「すみません。どうしてもと詰められまして」


“だろうね。従順なハチ公だよ。君がゲロったせいで昨日の夜は中身のない長電話。”


“今の花の女子高生ってみんなあんななの? 話なんて合うわけないのに、くっそ強引でさ。”


“今朝は根城を落とされ気づけば朝食が出てきた。びっくりだよ、タチの悪い押しかけ女房だ。”


相変わらず行動力のある強かな先輩だった。彼は心底怠そうに語る。


“で、今度は何に絡まれたわけ”


「変え首、かもしれない物に、友達が憑かれたみたいなんです」


僕は、縒木のことを説明した。

首を絞められる夢。変わっていく性格。家出。“優等生じゃなくなりたい”という言葉。死んでしまうかもしれない、それなのに異常に軽く見てる彼女。


電話の向こうで、訝屋はしばらく黙っていた。


“……なるほどね”

珍しく、茶化さなかった。


「どうにか、助けられないんでしょうか」


“無理”

即答だった。


「っ……なんで」


“だってその子、自分で受け入れてるだろ”

冷ややかに訝屋はそう告げる。


“変わっていくことを”


「そんなの」


“違う?”


言葉が止まる。


“アリクイ君。怪異ってのはな”


一拍。


“人間の思いへ、寄ってくるんだよ”


『優等生っぽくないこと、してみたかったんだよ』確かに、縒木はそう言っていた。


“死にたいやつには、死ぬもんが寄る”


“消えたいやつには、そういうもんが寄る”


“怪異ってのは、大体そういう隙間に入り込む“


「……でも、アイツは、怖がってました」


“怖がることと、望むことは両立するだろ。そもそも誰だって変化は怖いよ”


“それとも、君はその子が助かりたがってるように見えたかい?”


喉が詰まる。縒木は確かに怖がっていた。でも同時に、ちゃんとしてるのが馬鹿馬鹿しくなった、とも言っていた。


あの笑い方を思い出す。壊れかけているくせに、それでもどこか楽しそうだった横顔を。


“澪影 灯火はさ”

不意に先輩の名前が出る。


“あの子は生きたがったんだよ”


“だから手を貸した”


“でも今回は違う”


“その子、自分で進んでいってるだろ”


“変わる方向へ“


「……」


“壊されてるんじゃねぇよ”


“壊れようとしてる”

その言葉は、やけに重かった。


“だから俺は助けないし、関わらない”


「……」


“だから、そうだな。家出の共犯にでもなってやれよ。君が出来るのはそういう事だよ”


“今のあの子が望んでんのは、多分そっちだ”


言いたいことは言い切ったとばかりに、一方的に通話が切れる。耳からスマホを離しても、訝屋の言葉だけが残っていた。


壊れようとしている。助かりたがっていない。

きっと訝屋は、間違ったことを言っていない。それでも。ソファーで眠っていた縒木の顔が、頭から離れなかった。


それでも。

縒木が、助けを求めていなかったとして。


だから見捨てていい。なんて、

僕にはどうしても思えなかった。

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