ぱらぱらドリーム004
「へぇ〜いい所、住んでるじゃん。一軒家ってちょっと夢なんだよね。なんか、どっしり安心できる感じ、わかる?」
「わかんねぇよ」
正直、今の縒木も、同じくらいわからない。
縒木は本当に家出してきたらしい。しかも行き先すら決めていなかったあたり、衝動的に飛び出してきたように感じた。持ち物だって肩掛けのバックひとつだけ。
普段順序よく段取りよくこなす彼女とは到底思えなかった。
だから、消去法で、ウチへ案内するしか無かった。
「しっかし、大胆だよね。家出してきた同級生を、真っ先に家に連れ込むなんて。何されちゃうのかな〜」
「何もしねぇよ」
「でも。今日、親御さん帰ってこないんでしょ?」
「……」
本当に危機感があるのか、段々分からなくなってくる。そもそも普段の彼女から考えれば、この状況は有り得ない。いつもの彼女じゃないのだ、この違和感が気になった。
縒木を改めて観察する。いつもは綺麗にまとめられた長髪が、先程走っただけでは説明つかないほどにボサボサだった。
目の下にはクマ、少しだけ汗の匂いがした。制服じゃない縒木は、驚くほど無防備に見えた。一昨日、彼女は家を出たと言った。じゃぁ、今までどうやって。
「とりあえず、シャワー浴びてこいよ」
「それってさ、そういう意味?」
「違うから」
縒木はちょっと赤くなって、口元を抑えながらジト目でこちらを見てくる。心外だ。
「服は……とりあえず僕のを貸すから使って。その汗臭い服は洗濯機回すから、放り込んどいて」
「もうちょっと、デリカシーあってもいいんじゃないの」
そう言いながら、それでも僕の促しに従順に彼女は浴室へと向かった。
「覗いたらダメだよ」
「覗くわけないだろ」
「そう?そんなに魅力無い?」
「……今日のお前は、ほんとに面倒臭いな」
これ以上付き合ってられるかと、半ば強引に扉を閉める。どうせろくに食事も摂ってないんだろう。有り合わせのサラダ、残り物のカレーを暖めて彼女を待った。
シャワーの音が止み、程なくして縒木が浴室から戻ってきた。
「お!いい匂い。カレーじゃん。用意してくれたんだ、ありがと」
笑顔だった。風呂上がりで、僕の服を着て、まるで普通に友達の家へ遊びに来たみたいに。
息を飲む。
彼女は自然だった。だから、余計に目立った。
「そんなまじまじ見つめるなよ。風呂上がりなんだから、さ。照れるだろ」
首元には、細い縄みたいな赤黒い痕が残っていた。
それはまるで
────誰かに首を締められた痕、みたいだった。
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