ぱらぱらドリーム003
「意外と強引じゃん。××ってもっと奥手だと思ってた」
「そんなんじゃねぇよ。……いや、見えただろ。警官」
アスファルトを蹴る音だけが、やけに大きく響く。縒木の腕を引いて走る。行先なんて考えてなかった。ただ、今はあの公園から離れなければいけない気がした。
「なんで、そんな必死なの」
走っているくせに、縒木は妙に笑っていた。
「おまえこそ、なんでそんな悠長なんだよ」
今日の縒木は、ずっと薄氷の上を歩いてるみたいだった。少し突けば、そのまま割れてしまいそうなくせに、本人だけが、それを気にしていない。
「そうだね、確かに。捜索願も出されてるだろうし、気づかれたら捕まっちゃうかな。もっと真剣に逃げようとするべきだったのかもしれない。
……でも、君には関係ないでしょ?××は私が捕まったって、君は何の不利益もないんだからさ。だから、なんでそんな必死なの」
「それは……。」
上手く答えられなかった。放っておけばいい。本来なら、そういう話だ。
なのに、掴んだ腕を離す気にはなれなかった。
「もしかしたらさ、さっき警官に見られちゃったかもね。誘拐犯と思われちゃってるかも。あーあ」
一緒に走りながら、それでも口数が減らない。こんなに喋るヤツじゃなかった。それでも、沈黙を埋めるみたいに、彼女は言葉を吐き続けていた。
「ね、××。」
息が上がる。
走ったせいなのか、縒木の言葉のせいなのか、もうよく分からなかった。
「大丈夫だよ。もし捕まっても君は関係ないって、私が勝手に家出しただけだって、ちゃんと言ってあげるからさ」
その言葉だけ、まるで諦めきった人間みたいだった。
縒木が急に立ち止まる。引かれるみたいに、僕も足を止めた。乱れた呼吸のまま、彼女は僕の両手を包むように握る。
──────だから
「家出の、共犯になってよ」
その手は、少しだけ震えていた。




