表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『残憶レプリカ:』プロットver  作者: 毎日馬鹿
貳章 うごうごベイビー
PR
33/54

うごうごベイビー015

室内各所に配置された蝋燭の火が天井に着かんばかりに最高潮へと達した刹那、ソレは現れた。全ての蝋燭が同時に消火し、祭壇からは大量の霧が吹き出し、狭い室内にも拘わらず、中央に居る先輩の姿を見失う。


僕には神様とやらの姿は見えなかった。

しかし、その霧が顕現したソレの輪郭をなぞるように揺れる。ソレの息遣いが、生暖かく僕らを包む。

巨大、なんて言葉じゃ足りなかった。僕らの目の前にあるであろうその顔面が、おおよそ高くは無い僕の身長以上であると推測できた。


「1」

真っ先に狙われたのは皿谷だった。少女は紙屑みたいに吹き飛び、大きな音を立てて壁に弾かれる。

同時に澪影先輩がいた方向から、可憐な彼女とは思えない嗚咽と叫びが木霊する。

呼応するように顕現したソレが身震いし、その気迫に飲まれそうになる。


「2」

コレが神なのだ。

人が到底及ばないソレを前にして、足が竦む。飲まれる、と思った。“ソレ”の頭が、ゆっくり持ち上がる。


「3」

天井を突き破らんとしたその頭部は、意外にもその天井から弾かれることになる。部屋中に張り巡らされたその札の効力だったのだろう。

まだ訝屋の手のひらの上だ。形勢はまだこちらにある。


「4」

人間、窮地に追い込まれた時だけ、異様な速度で思考する。きっと、走馬灯ってやつに近かった。僕は必死にこの1日目の出来事を再生し、糸口を探る。

部屋中に貼られていた札を一枚剥がし、僕は駆け出した。姿なんて見えない。


それでも分かった。

“ソレ”は、

この部屋ほぼ全てを占めていた。


「5」

ヒヤリとしたその神体に触れる。


次に目を開ければ、

僕は訝屋の後方にいた。

遅れて轟音が響く。


痛い。焼けるように痛い。

全身に突き刺すような電流が流れる。声にもならないような嗚咽を漏らす。終わった。そう思った。隣には目を瞑り動かなくなった皿谷潜の姿があった。


「6」

みっともなく地面に伏したまま、正面を見やれば訝屋は下を向き必死に何かを唱え続けていた。部屋を埋める“ソレ”が、ゆっくり動いた。


このままでは、訝屋までやられてしまう。必死に立ち上がろうと踏み出すも、僕を激痛が襲い情けない悲鳴をあげてしまう。


「7」

それでも僕は、訝屋の前に何とか辿り着いた。

手を広げ、足を広げ、大の字になり立ちはだかる。神にしてしまえば取るに足らない虫か。


もう、次は無い。全身が焼けるみたいに痛かった。意識が遠のく。視界も霞んで、もうろくに見えやしない。それでも、澪影先輩の嗚咽だけは止まらなかった。


「8」

目の前で轟音が弾ける。おおよそその巨躯で体当たりをされたのだとわかった。


それでも弾かれたのは僕の方ではなかった。


胸に貼った御札が役目を終えたように散り散りに朽ちる。今度こそ、上手くいったようだった。

押しのけられたソレは、明確に僕を見た。感じたこともない程の圧だった。それだけで身体が、心臓が、存在が、潰されそうになる。


「9」

咄嗟に貼れた札は、一枚だけだった。瞬く間に反撃を喰らい、壁へと叩きつけられる。

痛いのかどうかも、もうよく分からなかった。


霧の向こうが、どんどん遠ざかっていく。もう指の1つでさえ動かせなかった。


「10」

訝屋の背中から軽快な破裂音が響く。

瞬く間に、先程までこの空間を支配していた霧が全て消え去っていた。


訝屋はゆっくりと立ち上がり、澪影先輩の元へ寄る。目を凝らせばもう彼女の下腹部は普段のそれと変わらない大きさへと戻っていた。


もう、澪影先輩の叫び声は聞こえない。

訝屋さんは、やり遂げたんだろう。

それだけわかれば、充分だった。


僕は、そのまま意識を手放した。

少しでも続きが気になれば、ブックマークや評価を頂けると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ