うごうごベイビー010
「遅かったじゃないかいアリクイ君。何処かで道草でも食ってたのかい?全く待ちくたびれたよ。でも、多少この嬢ちゃんからも、手がかりを聞くことができた。まぁ、俺に言わせれば答え合わせみたいなもんだったんだけどね」
僕らが逢住公民館へと戻ってきたのは13時半過ぎだった。澪影先輩と訝屋は儀式を行った隣の部屋で先程の結果とその原因追求を行っていたようだった。
「まぁ腹が減っては何とやらだ、適当に有り合わせで君らの分を作ってるから、さっさと食い給えよ」
テーブルには少し冷めた炒飯が並んでいた。どこから材料を調達したのかは考えないことにする。
空腹だった。僕も皿谷ちゃんも、ほとんど無言でそれを掻き込んだ。
「紹介がまだだったね」
訝屋さんはいつもの調子で、
「こっちがロリ枠ちゃん、こっちが年上枠ちゃん」
そう雑に言った。
一切正解でもない、有り得ない雑な紹介をされた2人は戸惑うように顔を見合せ、クスリと笑った。
「えぇ、えぇ、先程からお話は聞いておりますよ、澪影さん。アリクイさんの先輩さんなんですよね。今回は若輩ながら、この皿谷潜が万策尽くさせて頂きますよ」
万策尽きるとはよく聞くが、万策尽くすとはまたよく言ったものである。澪影先輩は何卒よろしくお願いしますと、少女に頭を垂れた。
そこで、僕はようやく気づいた。
「先輩には、皿谷ちゃんが見えるんですね」
「……どういう意味かな」
澪影先輩は困ったように笑った。
まるで、自分がおかしなことを言われている意味、そのものが分からないみたいに。
柏田には見えなかった少女を、彼女は見えている。戸惑って訝屋さんを見る。けれど返ってきたのは、貼り付けたみたいな笑顔だけだった。
「いや、なんでもありません。気にしないでください。」
これ以上考えても、たぶん答えは出ない。怪異っていうのは、そういうものなんだろう。
「OK、とりあえず顔合わせは済んだね。早速皿谷ちゃんは俺と一緒に儀式の準備をしてもらいたいんだけど、大丈夫かな?」
了解です!と危ないちょび髭式の敬礼をする少女。コンプラを飛び越えたボケである。僕はもう突っ込むのを諦めた。
「そしてアリクイ君は、君なりの答えを、お嬢ちゃんに話してやってくれよ。本人がその気がなけりゃ、周りがどれだけやる気でもしょうがないんだ。」
訝屋さんは、そこで一度だけ澪影先輩を見た。
「現状をちゃんと理解して、どう救われたいのか。そこはお嬢ちゃん自身が決めなきゃならない」
じゃ、あとは頼んだよ。と、そう言って皿谷ちゃんと訝屋は襖の奥、午前中に儀式を行った部屋へ、僕と澪影先輩を置いて入っていく。
襖が閉まる。
残されたのは、僕と澪影先輩だけだった。
気が重かった。
これから僕は、澪影先輩がずっと抱え込んできたものを聞かなければならない。
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