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『残憶』  作者: 毎日馬鹿
うごうごベイビー
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うごうごベイビー002

「そのお腹は……その……」

「そんな顔しなくたって良いよ。安心して、柏田との子じゃないよ」

不動 薫は、何でもできる人だった。

成績優秀、弓道部部長、神社の跡取り娘。

けれど彼女が凄かったのは、そういう部分じゃない。出来ない側の僕らを、置いていかない人だった。

そんな彼女が、どうして柏田なんかに惚れたのかだけは、今でもわからない。

彼女は弓道部顧問の柏田と付き合っていた。彼には奥さんがいた。

冬の入口。忘れ物を取りに戻った夜の道場で、僕は二人の逢瀬を偶然見てしまった。後日先輩が柏田に脅されでもしているんじゃないかと、心配して問いただしたのを憶えている。彼女から愛を力説され、あの不動先輩ですら、あんな男との恋愛なんかでこんな風になってしまうのかと、呆れて乾いた笑いが出たのを今でも覚えている。

「これは、柏田には関係ないんだ。いや、そもそももう私も柏田とは無関係なんだ。新学期始まる前に彼とはお別れをした。過ぎた火遊びだったんだよ。めでたいよね、……奥さんに、子供ができたそうだ。」

私が卒業したら今の奥さんとは別れて籍を入れてくれる、そう嬉々として語っていた先輩が脳裏に過ぎり、胸をチクりと刺された気分になる。

「このお腹はここ数日の出来事なんだよ。君だって今週の部活には来ていたから、わかるだろう?絶対に」

勿論彼女の腹部がこんなになっていたのであれば、僕は間違いなく気づいただろう。僕以外の部員だって気づいたはずだ。“絶対に”の部分だけ、妙に強く聞こえた。知らないふりをする。それが僕のいい所らしい。少なくとも、不動先輩はそう言っていた。

彼女はそこで口を噤んだ。何かを言うべきか、迷っているようだった。

「……心当たりが、ないわけじゃないんだよ」

「なるほど。それはえっちな話でしょうか」

「のーえっちだ」

残念。先輩は少しだけ笑った。濡れた髪のせいか、その笑みは妙に色っぽく見えた。水も滴る、とはよく言ったものだ。その程度の軽口が許されるくらいには、僕らは気安い先輩後輩だった。

「信じて貰えるかは分からないんだけど、それでも××には聞いて欲しいんだ。今日ちょうどよく、こんな都合よくココに現れてくれたのも、絶対何かの縁だと思う。だから、ちょっと付き合いなさい」

柏田の件を知り、話を聞いてくれたのも君だけだったんだから、あと1つくらい私の秘密知ったってバチは当たらないよ。

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