↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『残憶レプリカ:』プロットver  作者: 毎日馬鹿
壱章 もぐもぐキューカンバー
PR
15/54

もぐもぐキューカンバー015

突きつけられた2択は余りにも慈悲が無かった。


13歳の少女と18歳の少女3人の怪異と、

ざっと見積もっても100人以上の命。


天秤を握ってしまえばその責任は全て僕にかかる。


皿谷潜の顔を見る、申し訳なさそうに俯いている。無意識とはいえ、僕を水死体にしようとした元凶であったと突きつけられ、彼女はいったい何を思うのか。


大したことない頭でひたすらに考える。


「例えば、この尻子玉さえ管理してしまえばどうなんでしょうか。だって今の皿谷ちゃんは無害なんですよね?この玉さえ返さなければ今まで通り……」


「本気で言ってるのかい、アリクイ君。それで皿谷 潜は無力化できても、眷属が3人もいる。これは収集家として断言するけれど必ず4人目が出るよ。その子は既に君の幼なじみを含めた3人を殺してしまっているんだから。」


本職からすれば甘い考えなのだろう。

収集家 訝屋 依からすれば、これまで様々な事を理解し分解再構築し収集してきた彼に言わせれば、経過観察ができる段階なんてとっくに過ぎてしまっているのだろう。


「だから俺が来た」


専門家。収集家。


「訝屋さん、まだ僕に黙ってること有りませんか」


そんなことは無いよ、とわざとらしく彼はとぼける。この問題に素敵療法は無いのだろう。それは分かっている。


しかし、100点満点が有り得ないにしろ、このまま行き着くのは赤点もいい所である。

無い頭で精一杯振り絞り、せめて及第点を。


皿谷潜に、少しでもマシな結末を迎えさせられるように。


思案し、引っかかっていた訝屋の一言を思い出す。


「訝屋さん。怪異を理解し分解すると前に言われていましたよね。それはつまり、この尻子玉を記憶と河童の力に分割出来るということでしょうか」


収集家、戦闘は専門外の対怪異の専門家。物事を理解し、必要であれば分解し再構築を行い無力化する。

彼は以前そう言った。

つまり、何かしらの武力以外の怪異に有効な手段を持っているはずである。


「できるよ。そのくらいなら、朝飯前だ」

彼はほくそ笑む。


それでも、いくら俺が優秀だってこの押さえつけられた状態じゃぁにっちもさっちも行かないわけだ。流石にこの子らには退いて欲しいかな。

皿谷ちゃん頼むよ。そう、へらへらと懇願する訝屋から、皿谷ちゃんは冷たく目を逸らす。


「皿谷ちゃん、頼む」


真っ直ぐに目を見て、頼む。彼女に届いたのか、ゆっくりと、人影たちは訝屋さんから離れた。

訝屋は立ち上がり体のあちこちをパキぽきと鳴らす。そうした後におしりのポケットから1枚の折りたたまれた用紙を取り出し、徐に広げ始めた。


「OK、準備できたよアリクイ君。この真ん中に立って」


言われるがままに従うと、訝屋が紙に触れ端を強く握った。紙は、火もないのに灰になった。崩れた文字が夕風に舞う。


手元に大事に抱えた尻子玉を、落とさないように抱き抱えるとコツンとガラスが衝突したような音がした。ひとつは白く透き通った球体。ひとつは、濁った灰色の球体。まるで手品だった。


「面白いよねぇ」


訝屋さんは白い球体を眺めながら笑う。


「元凶はこんなに澄んでる。彼女の記憶はこんなに濁ってるのにね。腐っても神、落ちても神か」


やっぱり連中は嫌いだよ。と小さく吐いた。


「それでここから君はどうするの。まさかこのまま皆を無罪放免してハッピーエンドなんてのは無しだぜ。責任を取るなら彼女ら4人をちゃんと娶ってハーレムエンドくらいしないと」


口数の減らない奴だ。


「ここからどうするんだい、アリクイ君」


促され、僕は先ずは皿谷ちゃんの前にたった。


灰色に濁った球体を彼女へ差し出した。

目を見合わせ、1度だけ頷き静かに彼女は尻子玉を受け取った。大切そうに抱きしめる。球体はスっと彼女の体の中へ吸い込まれていく。


「あ……」


彼女の目から大粒の涙が溢れはじめる。泣き崩れる彼女をそっと抱きしめた。


これまでの経過で劣悪な家庭環境であったこと、そして3名を自らのせいで殺めてしまったこと、忘れていたはずの痛みが、今まとめて彼女に返ってきている。


僕は選ぶ。


彼女たちを消すんじゃない。

河童を終わらせる。

それが、僕の出した答えだった。

少しでも続きが気になれば、ブックマークや評価を頂けると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。