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怪を喰む  作者: 毎日馬鹿
もぐもぐキューカンバー
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もぐもぐキューカンバー015

突きつけられた2択は余りにも慈悲が無かった。13歳の少女と18歳の少女3人の怪異と、ざっと見積もっても100人以上の命。天秤を握ってしまえばその責任は全て僕にかかる。

皿谷潜の顔を見る、申し訳なさそうに俯いている。無意識とはいえ、僕を水死体にしようとした元凶であったと突きつけられ、彼女はいったい何を思うのか。

大したことない頭でひたすらに考える。

「例えば、この尻子玉さえ管理してしまえばどうなんでしょうか。だって今の皿谷ちゃんは無害なんですよね?この玉さえ返さなければ今まで通り……」

「本気で言ってるのかい、アリクイ君。それで皿谷 潜は無力化できても、眷属が3人もいる。これは収集家として断言するけれど必ず4人目が出るよ。その子は既に君の幼なじみを含めた3人を殺してしまっているんだから。」

本職からすれば甘い考えなのだろう。収集家 訝屋 依からすれば、これまで様々な事を理解し分解再構築し収集してきた彼に言わせれば、経過観察ができる段階なんてとっくに過ぎてしまっているのだろう。「だから俺が来た」

専門家。収集家。

「訝屋さん、まだ僕に黙ってること有りませんか」

いや、そんなことは無いよ、とわざとらしく彼はとぼける。この問題に素敵療法は無いのだろう。それは分かっている。

しかし、100点満点が有り得ないにしろ、このまま行き着くのは赤点もいい所である。無い頭で精一杯振り絞り、せめて及第点を。皿谷 潜に少しでもいい結末を迎えさせれるように。

思案し、引っかかっていた訝屋の一言を思い出す。

「訝屋さん。怪異を理解し分解すると前に言われていましたよね。それはつまり、この尻子玉を記憶と河童の力に分割出来るということでしょうか」

収集家、戦闘は専門外の対怪異の専門家。物事を理解し、必要であれば分解し再構築を行い無力化する。彼は以前そう言った。つまり、何かしらの武力以外の怪異に有効な手段を持っているはずである。

「そのくらいなら、朝飯前だよ」彼はほくそ笑む。

それでも、いくら俺が優秀だってこの押さえつけられた状態じゃぁにっちもさっちも行かないわけだ。流石にこの子らには退いて欲しいかな。皿谷ちゃん頼むよ。へらへらと懇願する訝屋から、皿谷ちゃんは冷たく目を逸らす。

「皿谷ちゃん、頼む」

真っ直ぐに目を見てやったお願いは彼女に届いたのか、ゆっくりと人影は訝屋から下馬した。訝屋は立ち上がり体のあちこちをパキぽきと鳴らす。そうした後におしりのポケットから1枚の折りたたまれた用紙を取り出し、徐に広げ始めた。

「OK、準備できたよアリクイ君。この真ん中に立って」

言われるがままに従うと、訝屋が紙に触れ端を強く握った。刹那紙が一瞬にして灰となり舞う。手元に大事に抱えた尻子玉を、落とさないように抱き抱えるとコツンとガラスが衝突したような音がした。ひとつはより白く輝きの球体、ひとつはグレーに濁った球体。まるで手品だ。

「ほらできたよアリクイ君、それでここから君はどうするの。まさかこのまま皆を無罪放免してハッピーエンドなんてのは無しだぜ。責任を取るなら彼女ら4人をちゃんと娶ってハーレムエンドくらいしないと」

口数の減らない奴だ。

「ここからどうするんだい、アリクイ君」

促され、僕は先ずは皿谷ちゃんの前にたった。彼女には《グレーの球体》を差し出す。目を見合わせ、1度だけ頷き静かに彼女はグレーの尻子玉を受け取った。大切そうに抱きしめる。球体はスっと彼女の体の中へ吸い込まれていく。

「あ……」

彼女の目から大粒の涙が溢れはじめる。泣き崩れる彼女をそっと抱きしめた。これまでの経過で劣悪な家庭環境であったこと、そして3名を自らのせいで殺めてしまったこと、それらの切り離された記憶がたった今自分のものとして彼女に帰ってきているはずだ。

僕が選んだ選択は、彼女ら4名には全員が納得して、河童を消してしまう事だった。

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