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怪を喰む  作者: 毎日馬鹿
もぐもぐキューカンバー
12/22

もぐもぐキューカンバー012

結局僕は幼なじみも、そして皿谷潜も救うことは出来なかった。2人とも、僕の手が出せない時間/場所で亡くなっていたのだから。元々救うなんて、出来るわけがなかった。いつだって間が悪く、力不足。いつだって僕は無力だ。

それでも……。

《わたしは救われましたよ》

皿谷 潜のあの言葉が反芻する。

《救うなら最後までね》

訝屋 依のあの言葉が反芻する。

訝屋 依は収集家だと名乗った。怪異の専門家であると名乗った。そして河童を退治すると、そう言った。このままであれば、それがどういう意味を指すのか素人の僕には分からない。それでも、皿谷 潜が救われるとは到底思えなかった。仕事に対する訝屋の態度は本気そのものである。

無力感を噛み締める。僕が駆けつけたところで事態は変わらないのかもしれない。それでも。

もう、何も出来なかったと後悔するのは、ごめんだ。

公民館を後にする。意を決して、覚悟を決めて立ち上がった手前格好がつかないが、ここで近隣住民に見つかる訳には行かず、そそくさと裏口から出た。

すっかりオレンジに染まってしまった街を駆ける。皿谷 潜が向かった先も、訝屋 依が向かった先も分からなかったが、それでもあの場所だと確信があった。何故なら、皿谷 潜は怪異であるのだから。

河川敷に到着する。推測が正しければ、ここで訝屋が皿谷 潜と幼なじみを退治しようとしているはずだ。場所はここ意外にない、何故なら彼女らは河童であり水死体であるのだから。

見つけた。

岩場で影になったその場所に人影があった。既に決着は着いた後だった。

「遅かったじゃないかアリクイ君」

「訝屋さん……」おいおいヨリでいいって言っただろ

そう彼は呟く。黒い手に足を捕まれ、逆さ吊りにされている。着ていたスウェットは破れ血が滲んでいる、そこかしこに御札が散乱していた。皿谷潜は彼の横で蹲っていた。そして

2つの漆黒の人影が2人を挟むように立っている。片側は左腕と顔面の半分が、もう片方は下腹部に大きな穴が空いていた。

「いやぁ、まずっちゃった。行方不明者の2人も河童になってるとはね。そんな簡単に怪異になんてなるはず無いんだけどな」

去年、幼なじみと一緒に川へ遊びに行き、同様に巻き込まれた2名。幼なじみとは違い遺体の殆どは見つからなかったはずだ。だから、右手だけの幼なじみとは違い、ほぼ完全な状態で今僕の目の前に立ちはだかっている。

「元々武闘派じゃないんだよ。痛ェ痛ェなれないことはやるもんじゃないね。あとは頼んだよアリクイ君、じゃないとこのままだと俺も君も尻子玉抜かれて、この川の贄だ」

軽口を叩く彼は、肩呼吸をするほどに満身創痍に見えた。それでも、彼はまだあの目をしている。仕事に対峙する時の、冷静で真剣なあの目を。バレないように彼からアイコンタクトが送られる、視線を外せばすぐ近くに御札が巻かれた金属バッドがあった。訝屋さえ解放出来れば、状況は打開できるはずだ。

皿谷 潜は小さな声でブツブツと何かを必死で呟いている。動いてくる様子は無さそうだ。黒い手も訝屋を釣り上げていて動く様子はない。それなら、対峙するべきは黒い人影、2対1やってみるだけはあるだろう。

黒い人影へ目掛けて、靴を飛ばす。咄嗟の出来事に怯んだ様子を見せた、その隙は逃さない。バットを拾い一気に距離を詰める。訝屋の横に構えた人影へ大きくぶった。

水死体の怪異、彼女らが河童であるとするならば。弱点はここしかない。最もベースは元人間なのだ。効いてくれるはずだと。そう信じて人影の脳天に一撃をお見舞いする。ドカっと、鈍い音とともに金属音のような断末魔が木霊する。手応えはあった。

「ガッ」

脇腹に強烈な衝撃を貰い宙を舞う、意識外からもう1体が放った蹴りを受けてしまったようだった。そのまま川へ自由落下し、視界が歪む。黒い手が追い討ちをかけるように僕の腕を掴んだ。つまり、訝屋は解放できたに違いない。安心するまもなく僕は河底へと引きずり込まれる。

もうダメだと思った。それでも僕を犠牲にしてでもこの件が解決するのであれば。僕は無力ではなかったと、満足することができた。

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