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第23話 突然の申し出

2022年4月 高知市内ホテル <冴木 和馬>

 常藤さんと一緒に高知市内にあるホテルの洋食料理店に招かれた。真鍋さんとの会食。話の内容も分からないままなので、多少どころではない不安がある。真鍋さんはシルエレイナ高知の譜代衆として最大出資していただいているが、おそらく成績面では不満に感じさせてしまう部分は無いはずだ。


 一体なにがあったのだろう。お約束している時間よりかなり早く到着した。以前の学園理事会の皆さんとお会いした時にはこちらが遅れると言う失態(時間前には到着していた)をしただけに、今回はこちらが先に着いておく必要があった。


 個室が予約されていてしばらく待っていると店員の方から真鍋さんが到着された事を教えていただけた。席を立ち、待つ。部屋に入って来たのは真鍋さんを含め3人の方々だった。


 「お待たせしてもうて、申し訳ないです。どうぞ、お座りになって?」

 「失礼いたします。(常藤)」

 「先に紹介しとくわ。こっちがうちの娘の量子。こっちは量子の旦那さんで利文さん。」

 「はじめてお目にかかります。株式会社デポルト・ファミリアの常藤と申します。」

 「同じく冴木和馬と申します。」

 「喜田村量子です。お会い出来て光栄です。」

 「喜田村利文と申します。株式会社RCOの代表取締役をしております。」


 株式会社RCO。確か投資会社だったはずだ。日本と言うよりは東南アジアや北欧を中心に投資家と共に様々な分野への投資・買収・売却で莫大な利益を上げていると何かの雑誌に取り上げられているのを見た事がある。


 「今日はな、私が話があると言うよりは利文さんが冴木さんと常藤さんにお会いしたい言うから私が橋渡し役にみたいな感じなんよ。騙し討ちみたいになってもうて申し訳ございません。」


 真鍋さんが頭を下げられる。こちらは慌てて二人で頭を下げる。本当に腰が低すぎる人だ。喜田村さんが事情を説明し始める。


 「実は我々のRCOは元々は義母(はは)の立ち上げた会社を私が引き継いだ形で始めたものでして、義母が大規模な投資からの引退を考えて顧客や投資家の皆様を私が引き継がせていただき現在があります。」


 それは真鍋さんと知り合わせていただいた時にこちらでも経歴を調べた事があった。弁護士として働く傍らで現在は亡くなられている旦那様と共に投資会社を設立された。旦那様が御存命の時には旦那様が代表をされていて、後に薫さんが代表となりその時点で弁護士から投資家へシフトを移した形になる。


 なので、RCOは真鍋夫妻の四十年近い投資会社としてのノウハウと人脈を引き継いだ形になる。聞くとRCO自体は設立されて既に十年ほどになるらしく、引き継いだのは四年前だそうだ。


 「現在、我々の会社では株式や不動産への投資はもちろんですが、ベンチャーキャピタルや新規事業への投資も大きく展開をさせていただいています。」


 まぁ、この辺は投資会社として規模が大きくなれば当然予想出来る事業拡大の路線だろう。


 「その中でお付き合いのある企業様より提案されたのがあるサッカークラブを買い取って貰いたいと言うお話でした。」


 『クラブ買収』のワードに俺と常藤さんは身構える。しかし、それが分かったのか喜田村さんは「違います。申し訳ない。」とすぐに否定してくれました。


 「言葉が足りませんでした。実は買収を提案されているのはタイのサッカークラブなんです。と言いましてもアマチュアクラブではあるのですが。」


 喜田村さんのお付き合いのある企業がタイの5部リーグにあたるアマチュアリーグに参戦しているチームを持っていて、昨年4部昇格を惜しくも逃した。タイリーグはJリーグと同じようにT1からT3まで3部でプロリーグが構成されていて、その下はセミプロリーグ、そして5部はアマチュアリーグに相当するそうだ。

 そう考えると本当に日本と同じカテゴリー分けなんだな。


 しかしそこはやはり餅は餅屋。サッカーの知識も無くクラブ経営は難しいと判断した企業は喜田村さんにチームの売却を相談した。しかし喜田村さん達もサッカークラブ運営は未開拓エリア。その中で今後のアジアサッカーの発展での市場拡大を考えると挑戦する価値はあると考えたそうだ。


 確かにタイリーグは現在Jリーグクラブへ移籍しタイのサッカー人気を更に押し上げるような選手も現れている。今後、東南アジアでのサッカー人気を牽引していくのは間違いなくタイリーグだろう。


 「常藤さん、冴木さん。マルチクラブオーナーシップと言う言葉はご存じですか?」


 もちろん知っている。今、世界のサッカー界で大きな影響を出しているMCO(マルチクラブオーナーシップ)。大企業や資産家、投資会社などが国やカテゴリーを超えて複数のクラブのオーナーとなり、クラブ運営・成長はもちろん選手獲得やスポンサー獲得、クラブのブランディングなど様々な面での成長と付加価値獲得を目指している。有名な所で言えばイギリスの超有名クラブのオーナー権を持つグループ会社がJ1のクラブとのMCO化した事は記憶に新しい。


 「常藤さん、冴木さん。タイリーグクラブのオーナーになっていただけませんか?」


 あまりに唐突過ぎる提案に俺達は顔を見合わせた。


・・・・・・・・・・

2022年4月 Vandits garage <冴木 和馬>

 「....と、言う話なんだが。」


 急遽集まって貰ったのは、百瀬・板垣・御岳さん・原田・咲坂さん。先日、喜田村さんから提案された話は一度社に持ち帰り検討するとしてお返事は改めてと言う事になった。それを皆に報告する為に集まったもらった。

 皆一様に厳しい表情と言うよりは困っていると言う感じの表情だ。


 「条件としてはかなりこちらを気遣っていただいている内容ですよね。(板垣)」


 そうなのだ。喜田村さんがこちらに出してくれた条件は驚くほど少なかった。まず喜田村さんの会社RCOとの『共同オーナー』である事。それは今後プロリーグへ上がれるような事があれば、RCOが単独オーナーになるのか、その逆かはその時点で話し合われる事になっている。

 そしてそれは(株)Vanditsとしてオーナーになるのではなく、俺か常藤さんが『個人オーナー』として参加すると言う点。これは小さい事に思えるが、リスク管理を考えると意外に大きい。それこそデポルト・ファミリアを立ち上げた時の俺と同じで、会社の資金として買収するのではなく個人資産なので、失敗した場合に会社に迷惑をかけるリスクは非常に少なくなる。


 「金額を聞くと僕らには大きい金額ですけど、変な言い方ですけどそんな金額でサッカークラブって買収出来ちゃうんですね。」

 「まぁ、アマチュアリーグだってのもあるんだろうな。それに今まで喜田村さんのお付き合いのある企業さんが単独で運営資金を捻出してたってのも大きいんだろうな。これに他の企業やスポンサーが関わってたら、買収資金は跳ね上がってたと思うよ。」


 チームの買収金額は1500万。そのうちの半分は喜田村さんが個人で出していただける。喜田村さんと俺(常藤さんにオーナーになって貰うつもりはない)で50%づつの出資となる。

 そして、どうして皆に相談しているかと言うのが一番の俺の悩み。喜田村さんからお願いされた『選手への指導メニューの作成とスタッフの派遣』だった。


 「現地での通訳や生活のフォローは喜田村さんの会社からもスタッフが来るから、そちらで受け持って貰える。分かりやすく言えば運営統括部が喜田村さんの持ち場で強化部がうちの持ち場って感じだろうな。」

 「アマチュアリーグとは言え、やはりライセンスを持った者が行く方が良いでしょうね。しかし、なかなか人選が難しいですね。新たに雇い入れると言う方法もあるかも知れませんが。(原田)」


 強化部に所属している各カテゴリーの指導者ライセンスを持っている者は全員が何かしらのポジションで指導してくれており、現状では外すのはかなり難しい。その為に人を雇い入れるとなってもうちの指導スタイルを完全にものにしていない状態で派遣するのは何か違う気もする。


 さて、どうしたものか。

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