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第10話 反省と現実

2022年2月 Vandits garage <冴木 和馬>

 今日は大評定祭の反省会を含めた全体ミーティングだ。これにはファクト・ファミリーの水木さんやご協力いただいた各企業の担当者の方達も参加してくれている。業者間でも反省点を共有して『この部分を来年までにしっかり対応できるようにして、《《来年の大評定祭も宜しく》》』と言う事だ。


 「と言う事で、今回は大きなアクシデントなく終えられて皆様には本当に感謝をしております。先程も振り返りで出たご意見では無いですが、やはり誘導担当ではないスタッフだとしても経路などの把握を徹底しておく事。お客様に聞かれて、担当ではないので分からないと対応は言うのはマズいと思いますので。次回のイベントではそこの部分も徹底出来るようにこちらで準備をしておきます。」


 一人手を挙げてくれている。進行役の雪村君が意見を聞く。警備を担当してくれていた会社の担当さんだ。


 「駐車場に関しましてもバスの方は運転手の方も駐車方法やロータリーの譲り方など運転手さん同士で連携が取れていますので、どちらかと言えば立体駐車場内で案内する警備員を次回は増員した方が良いと思いました。やはり皆さん低層階に停めたいのは同じですから。屋上スペースに誘導すると明らかに嫌な顔をされる事も多かったですね。」

 「なるほど。何か対策を考えないとそのうち不満爆発しそうですね。」


 その時、リモートで参加してくれている『Pm』の技術担当者の方から発言を求める効果音が鳴った。


 『観戦チケットと一緒にネットストアで購入出来る駐車チケットを導入してはいかがでしょう?』

 「設定していただくのは大変では無いですか?(常藤)」

 『いえ、設定自体は特に問題はありません。テスト運用にお時間は少し頂きたいですが、日程で言えば....そうですねぇ....第3節か4節くらいまでには試験導入できるかと思います。』


 思いの外、導入が早そうな事に皆が少し驚く。さすがにどの社員も自分の範疇外の話なので、どれだけ複雑で大変かの予想すら付かない。


 「では、一階部分の250台分は予約した方のみの駐車として、予約の無い方は駐車場外側の順路で二階・三階に上がっていただいて、二階から順に埋めていくと言うやり方が良さそうですね。(冴木)」

 『はい。なので広報の仕方としてもお客様同士で乗り合って来ていただくのを呼びかけるなどしていただいて、一台に2名で乗り合わせて来城されたとしても500名ほどでしょうか。』

 「問題は駐車料金を取るかどうかだな。(冴木)」

 「取ったとしてもチケット代より高いのはあり得ませんよ。(杉山)」

 「と言う事は最大で1000円。まぁ300~500円って所でしょうね。(秋山)」

 「まぁ、そこはまた話し合うとしよう。では、試作していただいて大丈夫でしょうか?」

 『分かりました。企画案と画像案だけ今週中にお送りします。まぁ、それほど複雑なモノにしない方が良いと思います。セキュリティ面はストアの従来のものに全乗っかりで良いと思いますし。言ってしまえば、ストアの販売品目に駐車場チケットが増えるくらいの気持ちで良いと思います。購入した確認画面か代金が引き落とされた画面を敷地に入る時に係員か警備員の方に見せれば、あとは一階駐車場に案内するだけでしょうから。警備員さん同士ならシーバーで車のナンバーで通す通さないを判断出来ますよね?』

 「はい。問題ありません。ナンバーで判断して、予約を確認するのはスマホ画面か印刷した紙だけにしないと捌くのに列が出来てしまう可能性もありますので。(警備担当)」

 「分かりました。じゃあ、そこもシステムの試案が上がり次第話し合いましょう。」

 「それでは皆さん、お疲れさまでした。(雪村)」


 ・・・・・・・・・・

 「和馬さん、真子さんの様子どうですか?(秋山)」


 会議の後に不意に声をかけられ、振り向くと女性陣管理職メンバーが勢揃いしていた。


 「心配かけてすまんな。まぁ、安定期入るまではさすがに大人しくしてもらってる。本人は仕事したくて仕方ないみたいだけど、年齢が年齢だからな。東京からお義母さんも来てくれてるから問題はないよ。」


 俺の言葉に皆は明らかにほっとした表情をする。有難い事だ。本人は三人目と言う事もあって慣れたもので、何とか仕事をしてやろうと設計部屋に籠ろうとするんだが、そこは見事にお義母さんが監視してくれている。とりあえずは安定期を迎えるまでは大人しくしてもらいたいんだが。

 そんな話を聞いて、女性陣は「やっぱり真子さんだねぇ。」と笑っている。真子も四十代での出産となって多少の不安はあるはずだ。しかし話を聞いていると会社の皆がトークアプリで話を聞いてくれていたり、愛(笹見)さんからも連絡を貰っているようで真子も気持ちは非常に落ち着いている。だからこそ働きたくて仕方ないんだろう。


 「真子さんの妊娠報告があって、女性社員の中に結婚とか恋愛とかって言う意識が少し高くなってるんですよ?(雪村)」

 「そうなのか?」

 「まあ、ほとんどの子はまず相手って話ではあるんですけど、うちの会社が社内恋愛や結婚をOKしてくれてるのもあるので、意識はしてしまうんじゃないでしょうか。(祥子)」

 「なるほど。じゃあ、予定がハッキリしてるのは君達の所だけか。」


 俺の発言に雪村君を含め女性陣の会話がピタリと止む。雪村君は驚いた顔で俺を見ているが、他の女性陣は同じ表情で雪村君を見ている。


 「....どう言う事? 裕子ちゃん? (秋山)」

 「ゆっくり聞かせて貰いたいわ。(祥子)」

 「お聞きになったんですか? (雪村)」

 「あぁ、司から聞いた。内緒とも言わなかったからさ。」


 こないだ司達も含めてヴァンディッツメンバー何人かと食事に行った時に司が「何とか年内に結婚したいと思ってる」と言っていた。こちらのメンバーは「そりゃそうだろうな」くらいの反応だったんだよなぁ。付き合ってもう三年だ。それに司はもう40歳を超えてる。結婚を考えるのは遅くないだろうし、ヴァンディッツメンバーからするとそんなに驚く事でも無い気がするんだが。


 「ぜひ和馬さんと真子さんにも来ていただきたいので。」

 「当たり前だろう。誘われなかったら一生恨むぞ? 同じ日がJFLの優勝がかかった試合当日だったとしても行くぞ?」

 「そんな日に組みません!」

 「はぁ....裕子ちゃんは良いなぁ。順調で。」


 秋山が羨ましそうにため息をつく。俺がそれを見て呆れていると雪村君が俺に向かって両手を差し出して何か受け取るようなしぐさをする。


 「和馬さん。この分かってないお二人に人生の先輩として言ってあげてください。パワハラだのモラハラ・セクハラなんてのは私が言わせませんから。」


 どうやら何か見抜かれているらしい。二人がオドオドしながらもこちらを見ているのは内容が気になっていると言う事だろう。


 「そうだな。俺から言わせればしっかりとした相手もいて、一人はベルギー、一人は同じ部署、自分の気持ちを伝えて相手の気持ちを確認する方法はこの時代いくらでもある。祥子さんの方は相手方の本人からも何も聞かされてないからどうこう言えないけど年末年始にお互いの実家に行くほど交際は順調だと他からは聞いてるし、秋山に至ってはあんなドラマみたいな出発を俺らに見せつけといて、羨ましいも無いもんだ。」


 雪村君は満足そうに二人の方へ振り返る。秋山も祥子さんも顔を真っ赤にして俯いている。普段は女性陣同士で恋愛話も出来るんだろうが、上司でしかも早くから結婚している俺に『しっかり現実を見なさい』と言われれば言い返せないだろう。

 少し卑怯な言い方だが、飯島も高瀬もいない所で「羨ましい羨ましい」と言われていると知ったら、いくら冗談だと分かっていてもあいつらも面白くは無いだろう。少しは肩を持ってやらないとな。


 二人に向かって「分かりましたか?だから、もう少しお二人は....」と雪村君がお説教モードに入った所で、俺は上手く退散する事を選んだ。

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