表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
軍師日記 ~借り物知識で異世界統一~  作者: 楼那
大陸北部の動乱
60/80

60.越内国進入

太陽暦1306年4月初旬 李雲玉


「倅は上手くやったかの?」

「上手くいったと聞いております。それにしてもあの若者、面白いことを考えられるものですな。これは恵楽での勝利もまぐれとは言えなくなりますな」

「長年主様の軍師として各地で転戦し、侵攻戦において全戦全勝した貴殿がそこまで賞するか」

「認めざるを得ないでしょう。さらに虎上殿に聞いたところによりますと、近陵国内において柳泉殿の評価は最悪に近いとか」

「ほう、それは何故じゃ」

「柳泉殿が主様の忍びを使って噂を流させたそうにございます。『柳泉という男は高白麗に気に入られているだけの無能である』と。そんな者が北部国境線に位置する鶴城に大将として入ったとなると・・・」

 北仙の言いたいことがようやく分かったわ。あの軍議後、倅を鶴城より撤退させたこと、そしてその他の多くの武官らも隣接する領地の城に移させたこと、民を慌ただしく避難させたこと。

 これら全て近陵国の裏切り者をおびき出すための策であったのかと。

「真に恐ろしいですな。これで万が一近陵国で裏切りが発生したとしても、我らはその者らをほとんど気にする必要なく前を向いて戦えますな」

「そうじゃな。我らを叩くよりも鶴城を獲った方が近陵国が今後南下することを考えれば有益よ」

 我らは味方であるから、頼もしい若者だと笑っていられる。しかし敵になればこうも厄介なことはない。きっと江長久も柳泉の手のひらの上で踊らされていることであろう。

 なんせ北部の領地には侵攻軍に従軍しているためほとんど兵が残っていない。後詰めとして来ておった海興国中部の兵らは、大将を未熟とみて鶴城より撤退。鶴城に残るは旺家のわずかな兵のみ。それも大将が未熟であるため士気は低いとみている。

「柳泉殿だけにいいところを持って行かれるわけにはいかんのぉ」

「そうでございますね。これは私も頑張らねばならぬようですな」

 柳泉殿のことがなくても北仙であればやってくれるであろう。それよりも、新たに確立した兵糧の輸送方法。

 それが上手くいかねば、背中を任せられても儂らが負けてしまう。

 それだけが真に不安であるな。兵糧の輸送には大将軍様と幕林殿。まぁ任せれば間違いはないであろうが・・・。

「お話中、申し訳ない」

「何、戦前のささやかな雑談よ。如何した、虎上殿」

「これより越内国の国境を越えます。この先に大河川がありそこで待ち構えていると思われます」

「なるほどのぉ、あの地図は正確であったな。では各隊に使いを走らせよ。我らは一気にここで敵を食い破るぞ」

「はっ」

 虎上殿は一足先に自陣へと戻っていった。

「さて、では川上に兵糧の中継拠点を設立せねばなりませんな。一応龍尾山脈の方にも物見を出しておきましょう」

「頼むぞ、兵糧の河川輸送などバレれば一貫の終わり。確認でき次第狼煙をあげよ。白轟様へ合図を出すのだ」

「かしこまりました」

 北仙も使いの者や物見役に指示を飛ばすために儂の元から離れていった。にしても、まさか儂が生きているウチに越内国に侵攻する機会があるとはおもわなんだ。

 長年高家に仕え、西の国境を守り続けることに不満があったわけではない。それでも儂も一人の武人である。

 どうしても儂自身納得できないところもあった。戦場で兵を率いて戦いたい。国を大きくしたい。

 儂も・・・、儂も・・・。

 まさかこんな老いぼれの願いがここに来て叶うとはな。

 まこと人生とは何が起こるかわからんものよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ